ギイの気持ちを自分なりに紐解いて感情を作りたかった

――『タクミくんシリーズ 長い長い物語の始まりの朝。』は、加藤さんにとって映画初出演にして主演を務めた作品ですが、出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか。

加藤大悟(以下、加藤) 率直な感想で言うと「幸せ」でした。親や知り合い、今までお世話になった関係者の方々に、「やってやったぞ!」みたいな。それと同時に自分を奮い立たせるような気持ちも湧きました。

――それまで舞台を中心に活動してきましたが、映像作品に臨む気持ちは、舞台とは違いましたか?

加藤 全く違いました。もちろん舞台は舞台で生モノの怖さがありますけど、映像は同じシーンを違う角度やカット割りで撮ったりするので、何度も同じ演技を求められることがあります。また基本的に順撮りではないので、クランクインから三日目にクライマックスのシーンを撮るなんてこともあります。そういう気持ちの作り方も舞台とは違うので、プレッシャーがすごかったです。

――タクミくんシリーズは2007年に初めて映画化されて以来、5度に渡って映画化されて、2作目から5作目を今回と同じく横井健司監督が手がけられています。事前に過去のシリーズは見ましたか?

加藤 はい。ただ、なるべく影響を受けないようにフラットな気持ちで見ました。というのも加藤大悟、森下紫音による新しいタクミくんシリーズを皆様にお届けしたかったので、一から作品を作り上げたかったですし、僕が演じたギイの気持ちを自分なりに紐解いて感情を作りたかったんです。

――役作りの上で、どんなことを意識しましたか。

加藤 僕自身、小さい頃から学級役員を務めたりして、周りからリーダーシップがあるって言われていたんですが、かなり性格はいい加減なのでギイとは違います(笑)。しかもギイは勉強もできて、お金持ちで、華があって、誰もが憧れるスーパースター。そういう憧れを役に落とし込むように意識しながら、この役に挑ませていただきました。

――ギイを演じているときの加藤さんは一挙手一投足に余裕があって、威圧感すら感じさせました。

加藤 僕は猫背なので、背筋をぴしっとして、下半身に重心を落として、歩き方一つでも雰囲気を出せたらいいなと。

――強さも感じさせつつ、色気も漂っていました。

加藤 僕自身から、だだ洩れる色気と言いますか……いやいや冗談です(笑)。まだギイは18歳で高校生なので無邪気さもあるんですけど、周りからはスーパースターに見られていて。なぜそういう魅力的な人物なんだろうと考えたときに、色気じゃないのかなと思ったんです。なので高校生だけど、周りから見たらちょっと違った雰囲気、ミステリアスなオーラを漂わせているギイを自分なりに作ったつもりですが、それを色気と感じていただけたのならうれしいです。

――監督から「こう演じてほしい」みたいな具体的な指示がありましたか。

加藤 なかったですね。僕が提示したものに対して、監督と一緒に足し算引き算をさせていただいて作り上げていきました。