Stray Cityシリーズは役者ファーストな現場
――2023年5月に公演したStray Cityシリーズ第一弾となる舞台「Club キャッテリア」の振り返りからお願いします。
立花裕大(以下、立花) 猫がホストという斬新なテーマで、完全オリジナル作品、しかも脚本はかが屋さん。僕が出演してきた中でも、かなりキャッチーな舞台になりました。キャスト陣は気心の知れたメンツだったので楽しかったですし、その仲の良さが舞台にも活かされました。コロナ禍が収束して、客席に降りてガンガン接する演出もあって、お客様との距離感も近かったです。
――キャストは8人ですが、共演経験のない方はいらっしゃいましたか?
立花 (泰江)和明だけは初めましてだったんですが、他はみんな共演経験があったので、人となりを知っている状態で稽古が始まり、最初からアゲアゲでした(笑)。どういう球を投げたら、どう返してくるかも分かるので、役者にとっても、お客様にとってもお楽しみ要素でもあるアドリブもやりやすかったです。
――初めて舞台の内容を聞いたときは、どんな感想を持ちましたか。
立花 話を聞いた時点では、すぐに理解できませんでした。「猫でホスト……えぇ?」みたいな(笑)。腕のある個性豊かなキャストが集結しているので、きっと面白いものになるだろうなという確信はありましたし、普段は出役のまっきーさん(荒牧慶彦)が企画・プロデュースも手掛けるということで、役者の感覚を理解して作ってくださるんだろうなと感じました。実際、現場は役者ファーストだなと感じることが多々ありました。
――今年4月には、Stray Cityシリーズのドラマ「『Clubキャッテリア』~ラグとラガ~」(日本テレビ)が放映されました。こちらではClub キャッテリアのオーナー・ラグドールと、立花さん演じるClub ドーシャのオーナー・ラガマフィンの若い頃が描かれました。
立花 実際のホストクラブを借りて撮影したので、夜の雰囲気が強くて、そこはリアルで面白かったです。初めて行った世界だったので、キラキラしていて新鮮でした。
――ラガマフィンを演じる上で、どんなことを意識していますか。
立花 ラガマフィンは、ラグドールとともに伝説のホストとして語り継がれるカリスマ的な存在なので、堂々とした立ち居振る舞いを意識しています。原作のある作品が多い中で、完全オリジナルなので割と何をやっても自由なんですが、逆にそこが難しくて。どういうゴールに持っていくかが悩みどころでした。まっきーさん演じるラグドールとは良き友人でライバル、相対するところもあるのでラグドールの落ち着いた雰囲気とは逆の、濃いめのキャラクターづくりにしました。そのアプローチを演出の末原拓馬さんが褒めてくださって、「もうちょっと大げさにしてもいいんじゃないか」と仰ってくださったので、さらに濃くしていきました。
――かが屋さんの手掛けた脚本はいかがでしたか。
立花 笑いの角度が普段の舞台と違っていて、ここがオチだというのが分かりやすいなと思いました。もしかして僕らに向けての、かが屋さんからのメッセージかなと思う部分もあって、その笑いを僕らはしっかり受け止め演じなければいけない。でも、そのまま演じるだけでは役者として悔しいので、日替わり要素もありますし、別のところにも色をつけなきゃいけないなと燃えるところもありました。
――「Club キャッテリア」が始まる前に、かが屋さんとお会いする機会はあったのでしょうか。
立花 前回はかが屋さんが脚本を書く前に、「キャストさん個々の人となりを知りたい」ということで、オンラインで軽くお話をする機会がありました。ただ物語的なことは一切話さず、普通に雑談みたいな。それで何となくの人となりを知ってもらって、当て書き的な部分もあったと思います。それを本にしていただいたんですが、かが屋さんは公演も何度か観に来てくださいました。
――実際、ご自身とラガマフィンで共通する部分はあったんですか。
立花 僕は芝居を濃くするのが好きなタイプなので、それを存分に発揮した、いいキャラクターをいただけたと思います。
――第2弾となる「Club ドーシャ」ですが、初稽古の雰囲気はいかがでしたか。
立花 よく知っているメンツですし、みんながどういう仕事をしているのかも大体把握しているので、久々な感じが全くなくて。めちゃくちゃ信頼関係もできているので、初日から稽古の進みも早かったです。拓馬さんも僕らを信用してくださっているのが伝わってきました。
――今回の脚本を読んだ印象はいかがでしたか。
立花 前回と打って変わってClub ドーシャに焦点が当たっています。Club ドーシャは完全無欠で最強のクラブ。前回の舞台ではClub キャッテリアの面々が困っているところに、Club ドーシャの面々が一人ずつアドバイスをしていくみたいな流れがありました。今回は一歩先に進んで、Club ドーシャのスコティッシュ(廣野凌大)とシャム(田中涼星)が心に抱える欲望みたいなものが爆発して、事件が起こるというストーリーが面白かったです。それに対してラガマフィンはドンと構えているだけではなく、二人の心の支えでありながら、二人に何かあったときには心が揺らぐこともあって、弱い部分もさらけ出しているなと感じました。