プロデューサー、営業、プロゲーマーの3足のわらじ

――これまでのeスポーツに関連する経歴を簡単に教えてください。

木成 最初にポノスというゲーム制作会社に入社して、2年半ほど広報活動、ゲーム立ち上げ時やリリース後のイベントへの監修・アドバイス、会社が運営しているプロゲーミングチームのマネージャー業務などを行なっていました。その後、eスポーツイベントの制作会社に入社し、ADとしてイベントの制作・運営業務全般を経験後に退社。それからは2年半ほど、フリーランスのプロデューサー・ディレクターとしてeスポーツ全般にまつわるお仕事をさせていただき、その中の取引先であった株式会社JCGに入社することになりました。

――現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

木成 JCGに入社して3年半ほどになるのですが、現時点ではeスポーツイベントに関連するプロデューサーと営業の業務、それにプロゲーマー活動の3つをやらせていただいています。具体的な内容ですが、まず営業では、新規取引先の開拓、案件受注までの資料作成やコンペへの参加となります。プロデューサーとしての業務は、案件を受注した後のお金の管理、クオリティーの管理などになります。最後の一つは、会社公認の対戦格闘ゲームのプロゲーマーとしての活動です。会社の宣伝もかねて、海外の大会を中心に参加をし、結果を出すための勝負をさせてもらっています。

――eスポーツのイベントを制作するにあたり、どのような仕事があるのでしょう。

木成 まずeスポーツとはなんなのかということですが、私の中ではゲームを通じて他者と競い合い、それを楽しむことだと思っています。そこで大会形式のイベント制作がメインとなってくるのですが、まずは依頼主の意向に沿うようなタイトルの選定、キャスティング、ルール設計などの仕事があります。その後は、大会の制作・進行と、オンライン放送の番組を制作する仕事があります。弊社では大きく分けて5つの制作部署があり、放送番組を制作するチーム、大会を設計・運営するチーム、番組・配信機材の構成を考え実際にオペレーションを行う技術チームとゲームにおけるカメラマンの役割を担う技術チーム、大会のロゴやホームページなどのデザインを作成するチーム、ホームページや、アプリとの連動シムテムなどを作成するエンジニアチームで大会・番組の制作にあたっています。これらのチームを統括するのがプロデューサーの仕事になります。

――eスポーツをビジネス的な視点から見たときに、どのような魅力や将来性を感じていますか。

木成 eスポーツは、ゲームを楽しんだりそれを見たりすることが好きということから生まれたものなので、参加する方の熱量が高いです。それに加えて、コロナ禍以降、ゲームプレイヤーはもちろん、ゲームを見て楽しむ人口が飛躍的に増えたこともあり、eスポーツという文化が一般の人にも認知され、ようやく市民権を得始めたと考えています。そのため、オフラインのイベント、それを放送するオンラインの番組、共に数字の面が非常に強くなってきています。オフラインの大会であれば、先日、弊社が制作したイベントである『ストリートファイター6』のプレミア大会では、2日で5000人弱の方に来場いただきました。オンラインの番組でいうと、人気のあるタイトルなどでは、同時接続者数が10万人を超えるものもあります。ここにはビジネスとして大きな可能性があると感じています。

――eスポーツに参加しているのは、どのような世代が多いのでしょうか。

木成 Z世代はもちろんのこと、私がプレイしている格闘ゲームでは、30〜50代の方が多くなっています。幅広い世代にリーチできるのはeスポーツの強みですね。近年では高齢者の福祉として、ゲームを使ってコミュニケーションを取ってもらう試みや、一般の企業が社内の交流にeスポーツを利用するというケースも増えています。特に企業の交流会では世代間の交流はもちろんですが、例えば工場同士で距離があり、実際に集まるのは難しいといった場合でも、オンラインであればその壁を越えられます。外国人労働者の方であっても、ゲームであれば言語の壁を越えてコミュニケーションが取れます。これまでの交流会でも、年齢・性別・役職など関係なく、楽しそうにコミュニケーションを取っている姿を見てきて、こういった点もeスポーツの大きな魅力だと感じましたし、ビジネス的な可能性だと思っています。

――現状、eスポーツ業界がより発展していくために課題としているのはどういった点でしょうか。

木成 やはり第一に、eスポーツ人口を増やすための発信をやり続けていくということです。近年は認知度も高まってきているというお話をしましたが、そこからさらに、一度は遊んだことがある、もしくは試合を見たことがあるという人を増やしていき、例えばプロ野球やプロサッカーのように、誰もが知っているというものにしていくことが、課題というか目標ですね。