一人二役を演じることで、図らずとも対比となる部分が出てくるし、共通点も出てくる

――主演を務める舞台KOKAMI@network vol.21『サヨナラソングー帰ってきた鶴ー』で、小関さんが演じるのは現代では宮瀬陽一、物語世界では与吉の一人二役です。初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

小関裕太(以下、小関) 冒頭から与吉が出て来るので、「これは与吉の物語なのかな」と思っていたら、今は「鶴女房」の続きを見ているのか、それとも現代なのかと錯覚するような感覚が面白かったです。脚本を書いた作・演出の鴻上尚史さんが「鶴女房」にリスペクトを持ってオリジナルストーリーに仕上げたのが伝わってきました。

――与吉というキャラクターはどのように受け止めましたか。

小関 エネルギッシュで、とにかくおつうのことを思って、悩んで、そのために失言して。それをごまかそうとして、さらに混乱を招いてしまう。ちょっと詰めは甘いけど、愛嬌のある可愛らしいキャラクター。出来心で機織りの部屋を覗いてしまい、おつうが鶴だということを知ってしまい、それがきっかけで、おつうは去っていってしまう。ちょっとした好奇心が、おつうとの関係を断ってしまう原因だったというのが、与吉のうっかりものな性格を表しているなと。全編通して、ずっとその調子なので、お客様の目線で言うと「しょうがないなぁ」と思うような人物です。

――一方の宮瀬はどういう人物と捉えましたか。

小関 宮瀬は小説家ですが、プライドが高くて。「こういうものを書きたいんだ」「誰かが読みたいものではなく、俺はこれを世に残したいんだ」というエゴが強くて、コアな小説好きの人に支持されるタイプの、ものすごく思いが込められた小説を書く人物です。それに対して妻の篠川小都は、エンタメ性のある、多くの人が読みたくなるような作品を書く小説家。鴻上さん曰く、「たとえばサスペンスは、自分が書きたいものというより、読む人がどんな展開になるのかワクワクするかにフォーカスを当てて書いている」らしくて。そういう違いが小説家の方々の中にあることを、僕は今回初めて知りました。宮瀬はデビュー作で大きな賞にノミネートされて周囲から期待されたけど、その後が続かなくて、妻に比べると本が売れない。でもプライドは高くて、自分の意思を曲げない、コンプレックスの塊みたいな男性です。

――一人二役ということで、役作りで意識していることはありますか。

小関 与吉に関しては、どれだけおっちょこちょいに見せられるか。おつうを愛しているんだけど、言っていることが全て空回りしてしまう。だからこそ愛おしいというところを固めていけたらなと思っています。宮瀬は「こいつはしょうがないな」と思われるキャラクターにすることで、この作品がどんどん生き生きとしていくと思うので、鴻上さんと一緒に考えながら取り組んでいます。

――与吉と宮瀬では喋り方もずいぶん違いますよね。

小関 「鶴女房」自体は特定の地域設定がなくて、実際にはない場所とアバウトにしていますが、東北のある地域という説があるんです。『サヨナラソングー帰ってきた鶴ー』は、それを継承して落とし込んでいます。だから与吉の喋り方は東北弁に近くて、第一人称は「おら」なんです。東日本は「おら」、西日本は「わし」という違いがあるらしくて、そういうところにこだわりを持ってセリフを書いたと鴻上さんが仰っていました。宮瀬は標準語なので、おのずと与吉とは喋り方もキャラクターも変わります。宮瀬は自分のネガティブな部分をプライドで隠そうとするので、動揺したときに声が大きくなってしまうなどの特徴がある。一人二役を僕が演じることで、図らずとも対比となる部分が出てくるし、共通点も出てくると思います。