ビジネスをリンクさせながら成長させる
――稲留さんはビジネスをリンクさせながら成長させられていますが、その着眼点はどこで養われたのでしょうか?
稲留 21歳時、1ヶ月だけお寺にプチ修行した経験は活きているのかなと思いました。高校卒業後に上海の大学に進学しました。卒業後、日本へ帰るか上海に残るか迷っていて、お寺に入り生き方を考えました。その時に住職から「慶司は何がしたいんだ」と言われて、「奇跡を起こしたい」と言ったんです。すると、住職が「奇跡は低確率の掛け算をし続けると起こる」と答えてくれて、価値観が変わりました。迷ったときは「低確率の掛け算」という言葉を思い出して、人がやらない方へ向かおうと決めています。
――鶴見さんは「小規模な事業を複数展開」しているとAmaductioNの事業を評価されていましたが、それはやはり、会社を率いる稲留さんならではの力もあるのでしょうか?
鶴見 そうだと思います。ニッチな市場を見つけるのが、本当に上手ですよね。例えば、「UNIDOL」などのコピーダンスイベントをやろうという発想に、なかなか行き着かない。アイドルではなくアイドルファンの子たちを「育ててどうなる?」と疑問を抱くでしょうし様々なリスクが勝ってしまい、ためらうと思います。
ただ、ガールズポップのカルチャーが広がり、「推し活」の市場も成長を遂げているなかで「ステージに憧れるファンの子たちに対して、コピーダンスで彼女たちの推し活をさらに充実させられる」と可能性を見出し、発見したのは大きな成果ですよね。世界最大級のアイドル
フェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」でも「UNIDOL」のステージを展開しています。大学生がメインターゲットのためコミュニティの中での熱狂をビジネスの発展に活かすこともでき、安定した事業を生み出せています。こういった発想も稲留さんならではと思います。
――「すべての事業がリンクしている」中で、イベント事業と飲食事業の展開についてもう少しお伺いさせてください。
鶴見 そうですね。イベントに集まった子たちのなかには、ステージに立ちたい、人前でダンスを披露したい、など自分を表現できる場を探している子も多く、そういう子たちが輝ける場所を自社でつくろうと考えるのが稲留さんです。AmaductioNは、人それぞれの人生、ストーリーを描ける場所をつくっているのだと思います。イベントコンテンツの大会で頑張って涙する子たちもいるし、AmaductioNがプロデュースする店舗で自己実現する子たちもいます。
例えば、僕も経営に関わっている沖縄の店舗では、自分の好きなアイドルのメンバーを実際に店舗へ招いたとき、感動のあまり大粒の涙を流したスタッフもいました。稲留さんは前面に出したがらないんですけど、人の成長があり、感情が揺れ動く瞬間が起こる事業を作り続けられるのは素敵だし、だからこそ一緒に事業へ取り組んでいるのもあります。
稲留 鶴見さんが客観的にすべて解説してくださったので、うれしいです。お兄ちゃんのような存在として、信頼していますから(笑)。