生の事象にこだわったDIY的な撮影方法が楽しかった

――共演してみて、お互いの印象はいかがでしたか。

佐藤 遊屋さんとは今回が初めましてでしたが、スクリーンで何度も拝見していて。映像のイメージと大きく変わらないというか、ありのままでいらっしゃるなと。クールな方なのかなと思っていたら、気さくで、ボソッと言うことも面白くて、すごく居心地が良かったです。あとお弁当を食べるのがめっちゃ速くて、美味しそうに食べるんです。それがかわいかったです(笑)。

――今まで美味しそうに食べるって言われたことはあります?

遊屋 めっちゃ言われますね(笑)。

佐藤 今回の作品は食事のシーンがないから残念でした。

遊屋 佐藤さんは良い意味で女優さんっぽくないというか。自分をどう見せたいみたいな自我がない印象で、役にすーっと入るので、共演者としてはやりやすかったです。あと自然の中でのロケが多かったので、女性は男性よりも大変なことも多かったと思うんですけど、順応性がめちゃめちゃ高かったです。

――実際の佐藤さんは喋り方も雰囲気も穏やかな印象なので、薊は別人のようです。メイクの違いもあるかと思いますが、表情も全然違いますよね。

佐藤 そうですね。

遊屋 監督がめっちゃ眉毛の角度にこだわっていたよね。

佐藤 初日に(私のシーンの撮影の前に)実景の撮影があって、支度場所に佐藤監督がいらっしゃらなかったんです。メイクさんと「このぐらい眉毛を上げればいいかな?」みたいなことを話していたら、佐藤監督からテレビ電話で「もっと上げて!」という指示が入って。どんどん上がっていって、これは人の顔じゃないよねと言いつつ、最終的に半分ぐらい眉毛を剃りました(笑)。

遊屋 だいぶ眉毛で印象が変わったよね。

佐藤 あの眉のおかげで、自然と気持ちも薊になりました。

――完成した作品を見た印象をお聞かせください。

遊屋 僕は自分が出た映画を見るのが、あまり好きじゃないんですよね。でも今回の映画は仕上がりが全く想像つかなかったので、初めて前のめりになって見ることができたんです。それぐらい作品を純粋に楽しめました。

佐藤 佐藤監督は撮影中にほとんど映像チェックをされない方で、現場では、どういう映像になっているのか分かりませんでした。先ほどプリズムのお話をしましたが、極力CGを使わずにアナログな方法で様々な工夫を凝らしていたのですが、こんな映像になっているんだという発見がありましたし、すごく見ごたえがありました。SATOL aka BeatLiveさんと田所大輔さんによるノイズミュージックも映像にハマっていて素晴らしかったです。

――アナログな撮影方法だからこその独特の質感が全編から伝わってきました。

遊屋 佐藤監督は生の事象にこだわって、それをどう映すかに腐心してらっしゃって、そのDIY的な撮影方法も楽しかったです。