映画初出演で主演に抜擢されて、なかなか実感が湧かなかった
――『タクミくんシリーズ 長い長い物語の始まりの朝。』の主演が決まったときのお気持ちからお聞かせください。
森下紫温(以下、森下) オーディションで決まったんですが、マネージャーさんから電話で報告を聞いたときは、うれしい反面、なかなか実感が湧かなかったです。ただ、歴史ある作品で、多くのファンの方がいらっしゃるので、徐々に不安や緊張、プレッシャーなどを感じて、クランクインの前日は全然眠れなかったです。
――初めて脚本を読んだとき、ご自身が演じたタクミに、どんな印象を抱きましたか。
森下 第一印象は冷たい子でしたが、タクミくんが抱えている人間接触嫌悪症に焦点を当てて読み込んでいくうちに、決して暗い性格ではないし、人嫌いでもない。原作小説も読ませていただいたんですが、この映画で描かれているのはタイトルにもある通り「始まり」なので、まだタクミくんの内面はそこまで見えてこない。だけど冷たい印象にはしたくないなと思いました。
――事前の役作りでどんなことを意識しましたか。
森下 僕にとって初めての映画ですし、事前に作り過ぎるのも良くないかなと思ったので、実際に現場に入って、セットや学校の風景などを見て、演者の方々やスタッフさんとコミュニケーションを取って感じたもので、役を作っていくという挑戦をしました。
――クランクイン当日はいかがでしたか。
森下 めっちゃ緊張しました。ただW主演の(加藤)大悟くんを始め、みなさんが優しく引っ張ってくれたことで、徐々に慣れていきましたし、その環境がキャラクターとも合っていたんですよね。タクミくんも人間接触嫌悪症に悩まされながらも、親友の利久(野口友輔)を筆頭に、周りの人に助けられて、心を開いていきます。意図してそうなったわけではないんですが、僕自身が周りの方々に引っ張ってもらった状況と相まって、役に入り込みやすかったです。
――もともと人見知りはしないほうですか。
森下 そこまで人見知りはしない……いや、するタイプかもしれないです(笑)。ただタイトなスケジュールで朝から晩まで撮影という毎日で、ずっとみんなで一緒の時間を過ごしていたので、すごくチーム感が出て。最後のほうは本当に学校の仲間同士みたいな雰囲気でした。僕自身、寮生活を経験したことはなかったんですけど、野球部だったので周りには寮生がたくさんいて、寮生同士ってこういう感じなのかなと思いました。10・11月の撮影だったので、すごく寒かったんですが、「寒いけど、みんなで頑張ろう」と声を掛け合いながらやっていました。屋外の撮影では、出番じゃない人たちも外に出て撮影を見守って、すごく一体感がありました。
――実際の学校で撮影したそうですね。
森下 僕に関しては高校を卒業してから時間が経っていなかったので、懐かしいというよりは、戻って来たなみたいな感覚でしたが、普通に生徒の方もいらっしゃったのでリアルでした。
――特に撮影で苦労したことは?
森下 映像作品って時系列ごとに撮るわけではないので、撮影2日目に終盤のキスシーンを撮ったりしたんです。そういう経験も初めてだったので、順序がバラバラな中で感情を入れて、役に命を吹き込むのは難しかったです。
――加藤さんの印象はいかがでしたか。
森下 シーンの合間など休憩中のコミュニケーションも率先して取ってくれましたし、楽屋の雰囲気なども大悟くんが中心になって作ってくださって。ギイ(崎義一)そのものというか、みんなの中心みたいな。そういうリーダーシップがあるからギイを演じられるんだなと現場でめっちゃ感じました。撮影中も大悟くんの意見を聞かせてもらって、本当に学ぶことばかりでした。あと大悟くんは背が高いので、ギイの制服を身にまとって現場に入ると、オーラがすごくて、かっこよかったですね。大悟くんがドーンといてくれたので、W主演で本当によかったです。
――横井健司監督の演出はいかがでしたか。
森下 僕が初めての映像の現場だということもあって、タクミくんの心情を細かく説明してくれて、いろいろな面で配慮もしてくださったので、めちゃくちゃありがたかったです。