高校生のときから愛聴していたアーティストに楽曲制作を発注

――「アステリズム」を手掛けたAvec Avecさんは、どうして発注したのでしょうか。

文坂 AvecさんはSugar’s Campaign(シュガーズキャンペーン)という二人組ユニットをやってらっしゃって、可愛い曲だなと思って高校生のときによく聴いていたんです。その後、AvecさんはVTuberさんやアイドルさんに曲を提供されるようになって。たまたま耳にした曲がいいなと思って調べたらAvecさんで、ずっと曲を頼みたいなと思っている方リストに入っていたんです。それで楽曲制作をお願いしたら快諾してくれて、学生時代から好きな方に自分の曲を作ってもらうのってすごいことですよね。それで言うと、「ため息さえも」を書いていただいた原田夏樹さんもevening cinemaというバンドをやってらっしゃって、以前から大ファンだったんです。そんな方に曲を書いてもらえるなんて夢のようで。しかも届いたデモの仮歌を原田さんが歌っていらっしゃるので、めっちゃ贅沢で。プレイリストに入れて聴いています。

――仮歌をリリースしてもいいぐらい(笑)。

文坂 そうなんです!最高の仮歌です。

――「アステリズム」はAvecさんのディレクションだったんですか。

文坂 そうです。東京でレコーディングしたのは、「愛わずらい」が初めてだったんですが、そのときはスタジオに喫茶さんがご自身の機材を持ち込んでいたんです。その次に東京でレコーディングしたのが「アステリズム」で、初めてちゃんとしたスタジオで録って、しかも目の前にAvecさんがいるので緊張しました。

――Avecさんのディレクションで印象的だったことはありますか。

文坂 珍しいことなんですが、仮歌をいただいたときに、「あんまり練習しないでください」みたいなことを言われたんです。おそらくレコーディング前に、先入観や癖がつかないようにしたかったのかなと思います。

――誰かに薦められて楽曲制作をお願いした方はいますか。

文坂 直接紹介された訳ではないんですが、「やさしいひと」を作曲していただいた江並哲志さんは友達のアイドルさんが教えてくれたんです。「お店でなのちゃんに合いそうな曲が流れていた」と送ってきてくれたのが、『ラブライブ!』の曲で。確か「センチメンタルレモネード」だったと思うんですが、聴いてみたらめちゃめちゃ80’Sで。それでお願いしました。

――「LATE SHOW」を手掛けた葉上誠次郎さんは、どうして発注したのでしょうか。

文坂 葉上さんは、そんなにアイドルさんに曲を提供していないんですが、たまたまYouTubeで流れてきた男性ボーカルの楽曲の制作をされていてすごく素敵だったのですぐに依頼のメールを送りました。

――こうしてお話を聞いていると、本当に幅広く聴いていますよね。

文坂 めちゃめちゃ聴いているほうだと思います。

――アルバムのラストを飾る「だけど、わたし、アイドル」は、きなみうみさんが手がけています。

文坂 きなみさんは東京女子流さんの曲などで知っていて、いつか頼みたいと思っていた方の一人でした。最初はアルバムがどうこうではなく、新曲を作ろうと思って連絡を取ったんですが、そしたら「文坂さんのことは知っています」という返信があって。Xを見たら、私のことをフォローしてくださっていたんです。それで「文坂さんに書くなら、こういう曲を作りたいというイメージが、すでにあるんです。まずは曲を送るので聴いてくれませんか。違うと思ったら、改めて曲を作るので」と言ってくださったんです。

――それはうれしい言葉ですね。

文坂 それで届いた曲を聴いたら、最高じゃないですか!タイトルもめっちゃいいし。それで表題曲にさせていただいたんですが、きなみさんの曲がきっかけでできたと言っても過言ではないアルバムです。

――この曲のディレクションはきなみさんですか。

文坂 そうです。印象的だったのがレコーディングの途中で、きなみさんが「太陽の光を浴びに行きましょう」と仰って、屋上で日向ぼっこをしたんです。楽しい一日でしたね。

――現時点でオリジナル曲はどれぐらいあるんですか。

文坂 文坂なの名義だけでも25曲以上です。

――全てご自身で発注していることを考えると、4年でその曲数は多いですよね。

文坂 よく考えると、そうですよね(笑)。自分では新曲を作るのが当たり前という感覚なんです。もちろん自分のためでもあるんですが、ファンの方の生きがいや先の楽しみを、どんどん作っていきたい気持ちがあるから、新曲を発表するペースも早いんですよね。2ヶ月に1回はレコーディングしていますし、まだ世に出てない曲もめっちゃあるので楽しみにしていただけるとうれしいです!

Information

1stアルバム『だけど、わたし、アイドル』
好評配信中!

01. Curtains of Night
[作曲・編曲:LASTorder]
02. 妄想ワンルームワンダーランド
[作曲・編曲・作詞:涼木シンジ]
03. 愛わずらい
[作曲・編曲・作詞:佐々木喫茶]
04. 新都市遊泳シルエット
[作曲・編曲:植松芳裕 / 作詞 LASTorder]
05. さよならクリエーター
[作曲・編曲・作詞:LASTorder]
06. アステリズム
[作曲・編曲・作詞:Avec Avec]
07. C級noロマンティック
[作曲・編曲・作詞:佐々木喫茶]
08. やさしいひと
[作曲・編曲:江並哲志 / 作詞:LASTorder]
09. ため息さえも
[作曲・編曲・作詞:原田夏樹]
10. 輝きin my love
[作曲・編曲:宮野弦士 / 作詞:文坂なの、LASTorder]
11. 好印象な恋しよう
[作曲・編曲・作詞:佐々木喫茶]
12. LATE SHOW
[作曲・編曲・作詞:葉上誠次郎]
13. だけど、わたし、アイドル
[作曲・編曲・作詞:きなみうみ]

「真夏のリュミエール」配信中
2024年秋、全新曲収録の4曲入りミニアルバムのリリース決定

文坂なの

8月18日生まれ。大阪府出身。セルフプロデュース・アイドル。2016年、“エスパーなのたん”名義で活動を始め、2020年より現在の名義に。2022年、初の全国流通盤EP『ハイファイ・スタイル』をリリース。2024年1月31日、1stアルバム『だけど、わたし、アイドル』リリース。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI