舞台『神話、夜の果ての』のキャストは寡黙でシャイで真面目な方ばかり

――詩森さんが稽古の様子をSNSに綴られていますが、稽古は静かな雰囲気だそうですね。

川島 本読みの段階から静かで、特に私も含めた若い役者は、ずっと席でじっとしていました(笑)。みなさん喋りたい気持ちもあると思うんですが、シャイな方ばかりなんです。寡黙で真面目な方たちの集まりで、別に台本のことなんて考えていないのに台本を開いて、ページをめくったりしているんじゃないかなと(笑)。私自身がそうですからね。

――雑談もしないんですか?

川島 しないですね。私は舞台の経験が乏しいので、稽古の臨み方などをお聞きすることはあるんですが、プライベート的なコミュニケーションはほとんどないです。でも、舞台のテーマを考えると、そういう空気感がいいのかなと思いますし、居心地もいいんです。ただ詩森さんはお話し好きで、いろんな人と会話をするので、みなさん詩森さんとは仲が良いです。

――同じタイプの俳優さんが集まっているんでしょうね。

川島 詩森さんが、「キャスティングをしている立場からすると、初めてご一緒する方たちが集まっているから、新しいものを生み出すには良い環境である反面、お芝居は相性の部分も大きいから、噛み合わなかった場合は、本当に申し訳ございません。ただ今回の舞台に関しては、すごく相性がいいから、この作品で伝えたいことが絶対に届くと思います」と仰っていました。

――毎日の稽古も早く終わるそうですね。

川島 夕方には終わりますね。テーマ的に1日に何回もできるお芝居じゃないので、その瞬間瞬間に全力を注いで集中しています。初めて3日連続で通し稽古をしたときは、3日目に全員が疲れ切っていました。それでも「やらなきゃ!」という思いでやっているんですが、どこか疲れが出ちゃっているので、本番ではどうしていこうかと模索中です。体も心もヘトヘトになっちゃいますし、一人が疲れてしまうと、他のキャストにも伝染して、気は抜いていないのに、抜いているように見えてしまう危うさもあります。一人ひとりがどう切り替えるのか、試行錯誤をしていますね。

――シズルはどういうキャラクターですか。

川島 明るい女の子で、誰よりも生きたいと渇望しています。苦しさも抱えているんですが、それを表に出さずに、悲しいからこそ、より明るくみたいなタイプで。それを他人が見たら、逆に辛くなるというか。これまでシズルが生きてきた道を考えると、「あなたがそれを言うと苦しいよ」という痛々しいセリフが多いんです。私自身、シズルを演じていると、その日によってテンションが変わって、「このセリフで今苦しくなっているなあ」とか感じ方も違うんですよね。稽古で思わず泣いちゃうこともあるんですが、絶対に泣かない子なので、私も本番では泣きたくないなと。「そういうときは泣いてもいい」と言われてはいるんですが、詩森さんはアップテンポで、間を取るよりは会話で見せていくのがお好きなんですよね。

――あまり湿っぽくなるのは避けたいと。

川島 稽古に入る前に、詩森さんから言われたのは、「悲劇のヒロインをやってほしい訳じゃない」と。それを聞いて、悲しいこと、辛いこと、怒りなどを理解してもらいたいんじゃなくて、どうしようもないことってあるし、それでも生きていくという提示を、この作品で伝えたいんじゃないかなと私自身は思っています。

――これまで川島さんの舞台経験は2017年に出演した『里見八犬伝』のみですが、久々の舞台で戸惑いはなかったですか。

川島 詩森さんが、キャストそれぞれのお芝居を重要視してくださっているので、細かいことを言われたことがないんです。もちろん体の開き具合や被りが違うときは指摘されるんですが、それは映像作品でも一緒なので戸惑うことはないです。むしろ、こんなに普段と変わらないものなのかとびっくりしたぐらいです。

――『里見八犬伝』のときに印象に残っていることは何ですか。

川島 自分自身のことなんですが、『里見八犬伝』のときは出役なのに、客観視して物語を見ていて。出番が最初と真ん中辺と最後で、楽屋にいることが多かったので、楽屋に設置してあるモニターをお客さんとして観て、泣いて、笑ってみたいなことをやっていました(笑)。だから今回は初舞台のような新しい気持ちで稽古に臨んでいて、しかも女性キャストは私だけですから、本番のことを考えると緊張でドキドキします。始まってみないと分からないですけど、今は失敗を恐れずにやるべきだと思っています。

――今回のオファーがある前から、舞台をやりたい気持ちはあったんですか。

川島 やりたい気持ちもあったんですが、これといった機会もなく、私も映画に出たい気持ちのほうが強かったので、あまり舞台のオーディションも受けていなかったんです。昨年5月に今の事務所に入って、「舞台をやってみたらいいんじゃないか」と言ってくださる方がいて、やらせていただくことになりました。自分の可能性を拡げてくれそうな感じがしてうれしかったです。