BAD HOPの日本武道館公演はヒリヒリして刺激的だった

――十代のときに日本のアーティストで感銘を受けたワンマンライブはありますか。

Novel Core  近しいところになってくるんですが、BAD HOPが2018年に開催した日本武道館でのワンマンライブです。チケットが即完だったので、当時所属していたGRAND MASTERの方にお願いをして観に行かせてもらいました。東スタンドの立ち見だったんですが、遠い距離からでも熱気が伝わってきましたし、当時の日本のヒップホップシーンではマジでありえないような空気感だったので、とうとうここまで来たんだという感動もあって。若い世代がシーンの最前線を引っ張っている感覚はヒリヒリして刺激的でしたし、「いつか自分もここで!」という気持ちでステージを観ていたのを覚えています。

――それまでBAD HOPのライブを観たことは?

Novel Core  ありました、ジブさん(Zeebra)が主催されていた「SUMMER BOMB」というフェスに自分も出演させてもらっていたので、トリを飾ったBAD HOPも観ていました。ただ武道館規模の単独公演で、メンバーが作り込んだものを観させてもらうのは初めてでした。観ているだけで、しっかりと役割分担をされているのが伝わってくるんですよね。武道館が決まったのは直前で、時間のない中、急ピッチで作った公演と聞いていたんですが、それであのクオリティを保てるのはすごいことだなと。演出などのクリエイティブ面もそうですが、マーチャンダイズや券売のことも含めて、チーム内で担当を決めて分業制でやっているからこそ一つひとつのセクションに抜かりがないんですよね。

――当時の日本のヒップホップシーンは、どういうところが今と違っていたんですか。

Novel Core そもそもSUMMER BOMBみたいなヒップホップフェスが珍しかったですし、規模も今みたいに大きくなくて。僕が出ていた頃のSUMMER BOMBは会場が新木場のSTUDIO COASTで2500人規模。今よりもパイの狭いところで、沸々と盛り上がっているようなアンダーグラウンド特有の雰囲気でした。来ているお客さんもロックフェスでは目にしないような特殊な層が集まっていて、すごくやんちゃ。今のヒップホップフェスは幅広いジャンルの音楽を聴いているお客さんがたくさんいる印象なので、着実に層が広くなっているなって感じます。

――フェスだけどラップバトルの雰囲気に近かったんですね。

Novel Core  まさにバトルのお客さんの層と共通していたので、新しいお客さんが入っていくのは怖かったと思います。当時は自分もヒップホップシーンの中でしか活動していなくて、いかにかますかだけを考えていたので、そこに違和感はなかったんです。ただ長くやってきたジブさんやRHYMESTER、KREVAさんなど、上の世代のアーティスの方々は、パフォーマンスの地肩が強いので、それを観ながら、自分たちの世代は地肩が弱いなと感じていました。2019年に当時お世話になっていたニトロ(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)の活動再開ライブも観に行かせてもらったんですが、脈々と受け継がれてきたDNAを、改めて全員がフルパワーで出したときに一体感が凄まじくて、お客さんとの空気感も含めて圧倒されました。

――テクニック的な部分は若い世代も負けていないと思うんですが、どういうところが違うんでしょうか。

Novel Core  場を踏んだ数ですよね。お客さんのいない現場もいる現場も踏んできているのがメンタル面にも出ていて、余裕を感じさせるドンと構えた佇まいはキャリアがあるからこそだなと。

――確かにニトロはステージ上をウロウロしているだけでも様になっていますよね。

Novel Core  活動再開ライブのときも、LEDの山なりになっているところにDELIさんが腰を掛けていて、足をプラプラっとしながら他のメンバーがバースを歌っている姿を観ている絵面がニューヨークのクルーみたいでめちゃくちゃかっこよかったです。