自由にやるよりは、縛りつけて演出してほしい

――野尻克己監督の演出はいかがでしたか。

山崎 僕は芝居をするとき、健康な体をお貸しすることしか考えていなくて、自由にやるよりは、縛りつけて演出してほしいんです。野尻監督は間などをすごく大切にされる方で、そういう面では細かい指示がありました。

――W主演の酒井さんの印象はいかがですか。

山崎 根が真面目で、真摯に役と向き合う方で、まさに原作に出てくる石田くんそのままのイメージです。驚いたのは彼のお父さんと僕は同い年なんです。その事実を聞いたときは愕然としました(笑)。映画『影踏み』(19)で共演した(北村)匠海くんも大成くんと同世代ですが、そこまで年が離れていると、何を喋っていいか分からないですね。あんまり小難しいことは喋れないので、くだらないことばかり話を振っていますが。

――ドラマの注目ポイントをお聞かせください。

山崎 食べるという行為は誰にとっても平等で、それが個人的にドラマの大きなキーワードだと思っているんですが、そういう局面が物語の端々に垣間見えるんです。また三ツ矢が石田くんの真っ直ぐさと向き合いつつ、料理を作ってあげたり、一緒にご飯を食べたりする中で彼の成長を助けていくという関係性にも注目してほしいです。食べ物が重要なだけに、皆さんの栄養になればいいかなと(笑)。

――ここからは山崎さんにとって俳優デビューとなった主演映画『月とキャベツ』(97)についてお聞きしたいんですが、どういう経緯で出演することになったんですか。

山崎 当時Shibuya eggmanで、マンスリーでライブをやっていたんですが、そこに監督の篠原(哲雄)さんが来ていたんです。『月とキャベツ』を撮るにあたり、主演はミュージシャンがいいだろうということで、対バンで出演していた別の人を観に来ていたらしいんです。ところが僕のライブを観た篠原さんが後日、「彼を本読みに読んでくれないか」と事務所に連絡をくれて。

――そんな経緯があったんですか!

山崎 その時点で「One more time, One more chance」という歌があって、もしかしたらそのライブで歌っていたかもしれないんですが、まだ盤にはなっていなくて。歌詞の内容が映画にシンクロしていたのもあって、僕のマネージャーが挿入歌でもいいから曲を使ってくれる条件で、僕の出演オファーを受けたんです。それで、なぜかクランクイン前に群馬県のロケハンにも同行したんですが、芝居だけじゃなく、スチール撮影に付き合ったり、サントラにも携わったり。本編の撮影もした伊参スタジオで行われたラッシュ上映もみんなで観ましたし、『月とキャベツ』にはみっちり付き合っているんですよね。