思い出作りのためにフェスに出る訳ではない

――今年は精力的に音楽フェスに出演されていますが、お客さんとして行くこともあったんですか?

Novel Core  友達に連れられて行くことはあったんですが、現場での体験として強く残っているものはそんなになくて。どちらかというと映像で観たフェスのほうが記憶に残っています。音楽フェスに行っていた頃は、リサーチのために足を運んでいた訳ではなかったので、普通にお祭り感覚だったんですよね。それがアーティストとして成長していく中で、伝説的な瞬間を映像で観て、フェス独特の空気感や団結力の素晴らしさを学びました。

――特に印象に残っているフェスは何でしょうか。

Novel Core 10-FEETさんが企画した「京都大作戦」のように、ロックバンド主催のフェスは特にやばいですよね。横の繋がりの強さでやっているから、ファンダムもそういう空気感で、みんなで一緒に良いものを作ろうという空気が伝播して、とんでもないことが起きるんですよね。そういうフェスを愛する方々に“伝説的な瞬間”を聞いたら、多くの人が挙げるであろう2017年の「京都大作戦」は、僕も衝撃を受けました。

――どんな伝説があったのでしょうか。

Novel Core 最終日の後半、マキシマム ザ ホルモンの公演中に落雷の危険があって、警報が出たんです。それでアーティストもお客さんも避難したんですが、数時間後に再開することになって。仕切り直しでマキシマム ザ ホルモンから再開したんですが、イベント終了まで1時間を切っていたんです。その時間内で、マキシマム ザ ホルモン、ROTTENGRAFFTY、10-FEETと3組がやらないといけない。そしたら、その場にいた人たち全員が一致団結して。ライブが終わるごとにスタッフさんが何十人も出てきて、一丸となってステージ転換をして、それお客さんたちが応援するみたいな。あれは映像で観ても感じるものがありました。これだけ多くのアーティストが集まって、それぞれのファンが入り混じっている空間というだけでも特殊なのに、みんなで手を取り合って、一緒に良いものを作ろうよ、来年に繋ごうよという空気感が生まれるのってすごいことだなと感動しました。アーティスト側から意思を伝えて、細かいところまで気を遣ってイベントを作っていないと、そういう空気は生まれないと思うんですよね。自分も他のアーティストたちと手と手を取り合ってイベントを作ろうという空気感でフェスに参加していけるアーティストになりたいなと思うきっかけにもなりました。

――Core さん自身がロックフェスに照準を合わせたタイミングはいつですか。

Novel Core 「iCoN TOUR 2023」のときなので去年の4月から6月です。翌年に日本武道館公演を控えていたし、THE WILL RABBITSの体制も整ってきたし。フェスに出ていくことで学ぶことも多いし、成長するための課題も見えてくるだろうということで、その時期にフェスを本気で狙っていくという宣言をさせてもらいました。

――どういう意識でフェスに臨んでいるんですか。

Novel Core 自分たちのバンドは、あんまりケンカはしないんですが、ちゃんと言うべきことは言うという空気を大事にしていて。1現場1現場を、なあなあで終わらせたくないし、思い出作りのためにフェスに出る訳ではない。チーム全体の意識として、特にステージに立つ僕とRABBITSに関しては、それを芯として強く持っておかないと、関わってくださるスタッフさんや観に来てくれるお客さんにも、それでいいという空気感ができちゃうと思うんです。まだまだ僕たちは普通に大型フェスに出られるような、大きな実績や、圧倒的な何かを持っている訳ではないと思っているので、チャンスをいただけているからには、想像以上のパフォーマンスを叩き出して、次の年に繋げないといけない。外から見たらRABBITSはサポートバンドに見えると思うんですが、意識の面ではバンドとしてやっているので、細かくリハーサルを重ねて、バンドだけでスタジオに入って。スタッフが介していない場でも、たくさんコミュニケーションを取るようにしています。