メジャーデビュー当初の頃に戻っている感覚がある
――本連載の15回目で「“BACK TO AGF” TOUR 2025」に向けて、クマガイユウヤさん、JUGEMさんと新曲を制作中と仰っていましたが、新曲の「プライド」に結実しました。
Novel Core アリーナ単独公演が終わって、「“BACK TO AGF” TOUR 2025」が始まる前に、純粋に原点回帰するだけではなくて、これからの自分たちを想像してもらうためにも新曲を一つ持って、その曲を育てながらツアーを回りたいという思いがあって作ったのが「プライド」です。アリーナ公演にも出てもらったJUGEMとクマさんの3人でスタジオに入って制作を進めて、3、4回セッションをして完成しました。
――その前からJUGEMさんとの曲作りは行っていたんですよね。
Novel Core 「UNDEFEATED」や「僕の大切な映画」がそうですし、まだ世には出ていないものも含めて二人でいっぱい曲を作っていて、形になっていない曲も入れると10数曲は一緒に触っています。ただTHE WILL RABBITSのメンバー・クマさんと3人でガッツリというのは今回が初めてで。クマさんもJUGEMとの会話が増えて距離感がぐっと近づいています。
――曲作りをするにあたって、どんなことを二人に伝えたのでしょうか。
Novel Core 僕の中に歌いたいテーマが明確にあって、クマさんとJUGEMに最初に送ったメモが「何者かになろうと思う瞬間こそが、君を確実に何者かにしていく。それは会社でのノルマや学校での通知表の評価よりも大切なことで。そもそも俺たちは『ありがとう』や『ごめんなさい』など、たった5、6文字で済むことを3分半かけて歌にしてみたり、何かを手に入れるために何かを突き放してみたり、そうやって生きている。それが俺らなんだというのを改めてちゃんと歌う曲が作りたい」というものだったんです。
音楽家としてもそうですし、人としても、自分が今何を歌うべきか、どういうことを、どういう人に向けて歌いたいのかを改めて考える時期でもあって。それってサウンド感以上に大事なことだと思ったんですよね。リスナーに向けて、音楽性どうこうよりも、歌う内容や自分が何のために音楽をやっているかを伝えるほうが絶対に大事だなと。そこを適当にしてはダメだと思って、僕が今一番伝えたいメッセージが「プライド」に詰まっています。
――具体的に、どのように楽曲制作を進めていったのですか。
Novel Core 3人でスタジオに入って、「こういうフレーズが歌いたい。BPM的にはこんぐらいで、こういうコード感だといいと思っているんだけど、どうだろう?」みたいなことを僕から言わせてもらって、二人がコードやリフを作って。リフも100テイクとかを繰り返しフリースタイルで弾いてもらって、それをRECして、細々した擦り合わせを現場でしながら作っていきました。
――二人でギターフレーズを出し合うみたいな?
Novel Core そうです。クマさんもJUGEMもギタリストとして信頼しているので、二人が出してくれたメロディーも含めて、実際に採用されているものが多いです。
――3人での共同作業は、JUGEM さんと二人で作るのとはまた違いましたか?
Novel Core JUGEMと二人でやるときは原型を作っていくことが多かったんですが、クマさんが入ることで、より解像度が上がるというか。「プライド」以降はTHE WILL RABBITSの他のメンバーも、JUGEMとの制作にジョインしてくれているんですが、メンバーの意見が入ってくると、「もう1個、何か足りない気がする」みたいなモヤモヤが解消されることが多くて。改めてハウスバンドのメンバーがいることのありがたみを感じています。
――フィーチャーするメンバーによって、曲調なども変化するのでしょうか。
Novel Core そうですね。そこはTHE WILL RABBITSの強みでもあるのですが、もともと同じハコ(ライブハウス)で出会ってみたいな、いわゆるバンド的な出会い方じゃないので、通ってきてるジャンルや好きな音が、それぞれ違っていて。特にクマさんとキーボードのうっちー(Yuki Uchimura)とでは聴いているジャンルにめちゃくちゃ幅があるし、うっちーがTHE WILL RABBITSに入ったときに、俺たちが既定路線としてこれかなと思っていたものが、いい意味で壊れて。「ギターでリードをやるんじゃなくて、シンセブラスにめっちゃディストーションをかけたほうが面白いかも」みたいな新しい発見も多くて、そういうやり取りをみんなでしながら曲を作っています。
――「プライド」はロックチューンですが、制作現場では、いろいろなジャンルがミックスされているということですか?
Novel Core はい。まさに今はミクスチャーサウンドを大事にしていこうというテンションになっていて、メジャーデビュー当初の頃に戻っている感覚があるんです。先日、3年前に出演した『流派-R』(テレビ東京)を見返したら、「僕的にヒップホップのあり方みたいなのがあって、自分のルーツになっているロックや、いろんな音楽をミックスして音楽に出していきたいという気持ちが強い」と言っていたんですが、そのときの発言に戻っているんですよね。前提として自分の出自であるヒップホップがあって、そこに大好きなロックのカルチャーや、あらゆるジャンルをミックスしたサウンド感が自分なんじゃないかみたいなところに立ち返っているんです。2021年にリリースしたアルバム『A GREAT FOOL』のサウンド感も、もちろんアップデートはしているんですけど、今僕がやろうとしてるサウンド感に近いところがあります。その際、超大事にしたいのはラップが武器であるということ。どのバンド、どのラッパー、どのシンガーと比べてみても、自分のラップスタイルを、こういう音楽感に落とし込むという部分が僕は得意で、それによってNovel Coreというものが確立されている気がするんですよね。