音楽と直接関係のない邪念的な要素が入ってくると止まってしまう

──「子ども心を忘れたくない」というお話がありましたが、それは初期衝動に通じる部分でもあるかと思います。

Novel Core まさに初期衝動に関しても、昔に戻ってきている感覚があって。ギターなど、楽器を触り始めると楽しいしワクワクします。振り返ってみると、初めてオートチューンをかけて歌ってみたとき、初めてメロディーを宇宙語で録ってみたとき、それに日本語の歌詞をはめて曲ができたときなど、1個1個に対して感動があって。「こういうメロディーを大衆は好む」「今はこういうコード進行にキャッチーさを感じる人が多い」「最近のヒット曲のBPMは大体このぐらいのアベレージ」みたいなロジカルなことは、絶対に考えていなかったはずなんです。どちらかというと、部屋に転がっていたおもちゃを触って、遊び方もよく分からないけど、ガラガラ鳴らしているうちに「こうやって遊ぶものなんだ」と知っていくみたいな。そこに面白さを感じていたはずで、そこに立ち返っている感じがするんですよね。

──それはTHE WILL RABBITSにJUGEMさんを交えたことによる制作スタイルの変化も影響していますか?

Novel Core プロデューサーさんにリファレンスを伝えて、原型を作ってもらってから僕がメロディーを入れるみたいな流れではなくて、メンバーみんなでスタジオにこもってやるみたいな方式を取り始めたからこその変化は間違いなくあります。今は僕が関与していないフェーズが一つもない。細かいやり取りをしながら曲を作るというよりは、みんなで試行錯誤を繰り返していく中で、「これかっこ良くね?」という感じで曲になっちゃうみたいな。そういう作り方が今の自分にハマっていると思います。

――行き詰まることはありませんか?

Novel Core みんなで作っているときはないですね。たとえ行き詰まったとしても、「新曲作ろうぜ」と次の曲に行っちゃうんです。しばらくしてから一回止めていた曲を聴いて、「こういうことをやったらいいんじゃない?」と新しいアイディアも生まれます。大体、自分たちが音楽作りで止まったり悩んだりするのって、プレイヤー以外の意見がちらついたときなんです。具体的に言うと、「最近流行っているのってこういうのだから、こっち系のほうが受け入れられやすいんじゃない」みたいな、音楽と直接関係のない邪念的な要素が入ってきちゃうと止まってしまいます。

――そういう商業的な視点についてはどう向き合っていますか?

Novel Core もちろんチームでやっている以上、そういう視点も各所から出てくるので、向き合わなきゃいけません。でも、それで止まっちゃうのはナンセンスだと思っています。自分たちが思う最高にかっこよくて盛り上がるもの、テンションが上がるライブが想像つくものを作って、それをスタッフさんにも聴いてもらって、納得してもらえる材料を用意するほうが合っていると思っています。だからメンバーと一緒にスタジオに入って、曲を作りまくって、みんなに聴いてもらって意見やアイディアを取り入れるというやり方です。

――メンバーそれぞれが、いろんなジャンルを貪欲に取り入れるからこそ、まとめる大変さはないですか。

Novel Core 僕も含めて、好奇心旺盛なメンバーばかりなので、常に新しいものにも興味があります。ただ僕だったらラップとか、こういう音楽が好きだとか、しっかりした軸があれば、新しいものや面白いものに出会って、取り入れてみても変な方向にはいかない気がします。みんなで模索しながら、いろいろやっていますね。

――各メンバーがTHE WILL RABBITSにも旺盛な活動をしていますが、そこからのフィードバックもあるのでしょうか?

Novel Core あると思います。ドラムのHibiki先生は映画音楽の仕事もやるので、そういうサウンド作りからのインスピレーションがあります。クマさんはいろんなアーティストさんのサポートに入ったときに感じたことをフィードバックしてくれます。うっちーはクラシック育ちなので、久石譲さんを始めシンフォニックなものからのインスピレーションを与えてくれます。DJのKOTAくんはヒップホップ畑で得たものを還元してくれるし、それぞれが持っているものを生かし合っています。

Novel Core

東京都出身、24歳。ラッパー、シンガーソングライター。
SKY-HI主宰のマネジメント / レーベル “BMSG” に第一弾アーティストとして所属。
高いラップスキルと繊細な歌唱技術を保有する一方で、決してジャンルに縛られることのない特有のスタイル、等身大で発せられる強いメッセージがファンを集め、過去に発表した全てのアルバム作品が各チャートで日本1位を獲得するなど、その名を確かなものにしてきた。
Zeppを中心とした大型のライブハウスを周遊する全国ツアーや、日本武道館での単独公演を完全ソールドアウトで成功させ、2025年には自身初となるアリーナ単独公演を決行。
ライブの総合演出をはじめ、衣装のスタイリングからアートワークのデザイン / ディレクションに至るまで、全てをNovel Core自身が担当している。
また、ミュージシャン / ディレクターとしての存在感を示す一方で、FERRAGAMOやETROなどのトップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集めている。
音楽、ファッション、アートワークなど、多種多様なカルチャーへの愛とそれを裏付ける実力で、Z世代を牽引する新世代アーティスト。

PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI