学生時代にハマった映画の変遷
――映画を好きになったのはいつ頃ですか?
酒井大成(以下、酒井) 小学生の頃です。父親がアクション映画好きで、よくDVDを借りてきて一緒に観ていたんです。その影響で『ミッション:インポッシブル』などのハリウッド映画や、ジャッキー・チェンの映画などを好んで観ていました。『プロジェクトA』(83)の時計台からの落下シーンで、ジャッキー・チェンがスタントを使わずに自らやっているのを知って、父親に「本当にやっているの?」と聞いたのを覚えています(笑)。
――好きなジャンルに変化はあったのでしょうか?
酒井 徐々にヒューマン系の映画を観るようになって、中学生になるとウディ・アレンやクエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュなどが好きでした。中でも『ナイト・オン・ザ・プラネット』(92)や『コーヒー&シガレッツ』(03)など、ジャームッシュのオムニバス作品が面白くて、観ていると居心地の良さを感じました。
高校生になると、フランス映画が大好きになりました。特にヌーヴェルヴァーグ映画が好きで、フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメールを観ていました。作品で言うと、ロメールの『夏物語』、ゴダールの『男性・女性』が印象に残っています。ヌーヴェルヴァーグよりも前の世代ですが、ジュリアン・デュヴィヴィエも観ていました。
——フランス映画のどういうところに魅力を感じたのでしょうか。
酒井 まず画の美しさです。社会性もありつつ、芸術性も兼ね備えていて、特にアングルがかっこいい。ロメール作品が特にそうなんですが、劇的なことが起こらなくても、飽きさせないんです。監督の作家性が第一にあって、こういう作品を撮りたいという欲求を提示してくれているように感じられる印象です。