鴻上尚史さんは文学的でありながら、お客様目線がものすごく強い方
――コメディ要素の強い舞台ですが、掛け合いなどはいかがですか?
小関 難しいですね。それが今回、見たことのない景色が見られそうだと思う大きなポイントで。先日、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)でウッチャンナンチャンの南原さんとご一緒させていただいたときに、この舞台のお話をしたら、「鴻上さんなんだ!」と興味を持ってくださって。南原さんが芸人になった80年代は、お笑いの方々も、鴻上さんが主催する「第三舞台」を始め、新しい演劇に注目されていたそうなんです。鴻上さん自身は「コントではない」と仰っているんですが、お笑いのテンポ感や、お笑いの教科書みたいなものを、鴻上さんの中で持っていらっしゃるのを感じます。だから、そこは思いっきり乗っかってみて、いろんな発見をしている最中です。
――これまで小関さんはお笑い芸人の方と共演する機会もありましたが、鴻上さんの演出からどんなことを感じますか。
小関 文学的なんですが、お客様目線がものすごく強い方だなと思います。先ほどお話した小説家のタイプでいうとエンタメ寄りというか、見に来てくださった方々がどう感じ取るのかを考えていらっしゃるのかなと想像しているので、お客様が見ていて気持ち良いテンポ感を学んでいます。
――稽古の前に、役者の皆さんでボール遊びをするとお聞きしました。
小関 鴻上さんは稽古場で割とやるらしいのですが、ボール遊びをすると心も体も温まりますし、はじめましての方が多い中で、仲もどんどん深まっていきます。ボール遊びを通して、誰よりも声を出す人、サポートする人、ちょっと一歩引く人みたいに、みんなで補い合う中で、それぞれのキャラクター性が早々に見えたので、面白いなぁと思いました。
――小関さんはボール遊びで、どんな役割を担っているのでしょうか。
小関 「1、2」と大きな声で数を数えるなど、どちらかというと声を出す係かもしれません。たとえば(安西)慎太郎くんは、積極的にサポートをするタイプ。もっくん(太田基裕)は運動神経があって安定感があります。臼田さんはカラッとして明るい方で、しっかりしつつムードメーカーでもあります。女性が少ないカンパニーの中で、みんなの癒し的存在ですね。そうやってボール遊びを通じて浮かび上がったキャラクター性が、稽古場の雰囲気にも出ています。
――今お話しにでたお三方とお芝居をしてみての印象はいかがですか?
小関 臼田さんは心で動く方なんです。ご自身で「舞台の経験が少ない」と仰っていましたが、そんなことは関係なくて、客席側からも心が見えてくるようなお芝居をされています。臼田さんを通じて、おつうと小都の心の動きが伝わって来るので、役者さんとしてありのままの方という印象です。
もっくんは1年前に舞台『ロミオ&ジュリエット』でご一緒させていただいたんですが、そのときは僕がロミオ、彼が恋敵のティボルトを演じたので、刺し合うシーン、喧嘩するシーンが多くて、そのときに信頼関係を培った感覚があります。今回もすごくしっかりされていて、強さや誠実さを感じます。
慎太郎君は今回初めてご一緒したんですが、とにかく用意周到で、何もかもが素早くて丁寧。このカンパニーの誰よりも早く作品の準備をしていたんじゃないかと思えるぐらい、もっくんとはまた違った誠実さを感じました。熱量はあるんだけど控えめで柔軟。信頼のできる方で、初共演とは思えないほどの安心感があります。
――臼田さんと役について何かお話しはされましたか?
小関 「ここはやりやすいね」とか、「これはちょっと難しいね」という話は稽古中にするんですが、脚本がとても面白く、伝えたいことがはっきりと分かるんですよね。その上で、できるだけキャラクターとして生きることが作品のゴールに繋がるんじゃないかなと思っていて、お互いにそれを感じ取っているんじゃないかなという肌感覚です。
――思い描いていた鴻上さんの世界と、実際に稽古を経験されて新しい発見などはありましたか?
小関 去年、鴻上さんの代表作の一つ『朝日のような夕日をつれて2024』を拝見したのですが、テンポの速さとものすごい熱量を感じました。今回、鴻上さんの世界を内側から覗くことで、ただテンポが速いだけじゃない、熱量が大きいだけじゃないなと、その裏側を見た思いでした。ただ、それについては、あえて言葉にはしません。このカンパニーが作り出す『サヨナラソングー帰ってきた鶴ー』を見ていただいて、それは何かを皆さんに届けたいですね。