新しい自分を見るためには打破するものもある気がした

――小関さんは先日放映された連続ドラマ『ひとりでしにたい』(NHK)でも子どものいる父親役を演じましたが、今回の舞台でも宮瀬は子を持つ父親です。

小関 僕自身は結婚していないので、不思議な感じがします。今回の舞台に飛び込んで、子どもがいたことのない自分に見える父親目線の息子というものに身構えており、正直分からないという気持ちが稽古の序盤にありました。でも役を掘り起こしていくと、宮瀬は作家として集中しすぎて、子育てを怠っていた人物。もともと妻が宮瀬のファンだったこともあって、おそらく家族間で甘やかされていたんでしょうね。妻が彼にリスペクトを持っていることで、彼が小説を書く環境が整っていた。だからこそ、彼は父である前に作家なんです。子育ても作家としての材料になっているということを、息子も感じているくらいですからね。でも、この作品の中で彼は初めて、本当の意味で自分の子どもと向き合うということを学んでいくんです。だから自分が父であるということを実感していく物語でもあります。宮瀬が父という感覚を知らなかった人物だからこそ、意外と僕に近いのかなと。もちろん彼が子どもと過ごした時間がベースとしてあるので、一緒ではないけど、感覚として近いなと感じたので、意外と入りやすかったです。

――宮瀬に共感する部分はありますか。

小関 鴻上さんが「作家目線」について仰っていたんですが、たとえば息子の運動会で、誰かが怪我をしたときに、どこか作家目線で見てしまうと。これは職業柄しょうがないことでありながら、すごく苦悩を感じるということでした。それは役者も同じで、プライベートで悲しい感情が生まれた出来事があったときに、「悲しいときって、こういう感覚なんだ」と、どこか俯瞰視してしまう自分がいるんです。僕は早くから、この仕事を始めているので、そういう感覚が小学生の頃からずっとあって。それが普通だと思っていたんですが、鴻上さんの言葉で「普通じゃないのかも」と気づきました。そういう点では、宮瀬に共感する部分もありましたね。

――小関さんは今年6月に30歳の誕生日を迎えました。30代という年齢の節目について考えることはありましたか。

小関 まさに、それを考えながら、この作品に参加しました。20代の頃は、10代で得た知見の中で、いろいろなことを見定めながら、がむしゃらにやってきました。いろんな場面で四苦八苦があって、新しいものも見えたし、自分の欠点も見えました。そうやって、いろいろ経験した上で30代をどう過ごしていくかについて、実は20歳の誕生日を迎えたときから考えていました。今は40代に向かって、30代を過ごしている中で、また一つ違う景色を見てみたいなと。年齢を重ねていくに従って、自分が演じるキャラクターの内容も変わっていくだろうと。そして今回、鴻上さんとご一緒できるということで、日本の演劇界を作ってきたレジェンドとご一緒したら何が見えるのだろう。その上で新しい自分を見るためには打破するものもある気がして、この作品を選んだんです。

Information

KOKAMI@network vol.21
『サヨナラソングー帰ってきた鶴ー』

作・演出:鴻上尚史
出演:小関裕太 臼田あさ美/太田基裕 安西慎太郎 三田一颯・中込佑玖(Wキャスト)/渡辺芳博 溝畑 藍 掛 裕登 都築亮介

<東京公演>
日程:2025年8月31日(日)〜9月21日(日)
会場:紀伊國屋ホール
チケットに関するお問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00〜15:00)

<大阪公演>
日程:2025年9月27日(土)〜9月28日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
チケットに関するお問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日12:00〜17:00)

チケット料金(東京・大阪共通):9,800円(全席指定/税込/前売・当日共通)
☆U-25チケット:4,800円(当日引換券/税込)

去っていくものは美しい。けれど、残されたものは哀しい。売れない作家である宮瀬陽一が残した遺書のような物語は、日本人なら誰もが知っている「鶴女房」のその後を描いた小説だった。鶴であることが夫にばれ、遠くの空に旅立った鶴が、もし戻ってきたとしたら。村の中で、二人は、どんな人生を始めるのか。だが、その物語は、小説誌の掲載を断られて、未完で終わっていた。宮瀬の担当編集者だった相馬和彦は、宮瀬の妻であり、夫と違って売れっ子作家の篠川小都に、この続きを書いて下さいと迫る。小都は、悩んだ末、夫のことを知りたくて、夫の作品に没入していく。物語は、小都と、小学三年生の息子、陽翔と、宮瀬の元担当編集者の相馬、陽翔の家庭教師の結城慎吾との関係から生まれる現実の世界と、「鶴女房」のその後の世界の二つを、交互に往復しながら展開される。テーマは「生きのびること」。どんなことがあっても「生きのびること」。

公式サイト
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小関裕太

1995年、東京都出身。子役として芸能活動をスタート。その後、ミュージカルや舞台、様々のドラマや映画に出演。最近の出演作品は、【舞台】『キングダム』(23 年)、『ジャンヌ・ダルク』(23 年)、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(24 年)、【ドラマ】『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS)、『御曹司に恋はムズすぎる』(関西テレビ)、『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ) 、『いつか、ヒーロー』(朝日放送テレビ) 、『ひとりでしにたい』(NHK)、【映画】『モアナと伝説の海2』(24年日本語吹替版・声の出演)など、多方面にわたって活動している。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:CHIKA HORIKAWASTYLIST:SATOSHI YOSHIMOTO