ちょっと抜けている部分はギラと似ている
――酒井さんにとってターニングポイントになったドラマ『王様戦隊キングオージャー』(テレビ朝日系)のオーディションはどんな気持ちで臨みましたか。
酒井大成(以下、酒井) 「絶対に合格するぞ!」という強い気持ちで臨んだんですが、当時は俳優としてのキャリアも浅かったですし、みなさんお芝居が上手かったので、半ば諦めていました。だからギラ・ハスティー役に決まったときは驚きました。
――ドラマ初主演ということで、すぐに実感は湧きましたか?
酒井 決まったときは現実離れしていて信じられなかったですし、インした後も「本当に自分が地上波のドラマに出ているの?」と信じられないような感覚だったんです。でもドラマが始まって、地元の友人や同業者の方から「見てるよ」と言われたり、SNSの反響などを見たりして、やっと実感が湧きました。
――リハーサルなどが始まったのは、どれぐらいからでしたか。
酒井 最初の本読みが2022年の12月上旬で、オーディションに合格して1ヶ月も経っていない時期でした。その後、アセット(※3DCGの各種素材データのこと)を入れてのリハをやってから、2023年1月にインしました。アクションはインしてからで、アクション監督の渡辺淳さんとスーツアクターの方と一緒に撮影前日から練習を始めました。
――それまでアクション経験はあったんですか。
酒井 ワークショップでやったことはあったんですけど、いざ撮影となると、どういう画角で決めないといけないとか、考えることもいろいろあるので不安でいっぱいでした。
――前回の連載で学生時代は12年間、サッカーをやっていたと仰っていましたが、運動は得意?
酒井 体を動かすのは得意かもしれないんですけど、アクションは体の使い方が別物で、めちゃめちゃ苦労しました。自分の思い描いているイメージに体が追いついていないんです。手を覚えるので精一杯だったので、毎回不安も大きくて、撮影が終わると淳さんに聞きに行って、「どうでしたかね?」と確認していました。そのたびに「そんなに心配するなよ。不安がることないよ」と言ってもらえるんですが、それでも不安でしたね。未知の世界だったので、必死に食らいついていくのに必死でした。
――ギラを演じる上で、どんなことを意識していましたか。
酒井 ギラは他の王様に比べて、感情を真っ直ぐに伝えるキャラクターです。楽しいときは楽しそうな顔を誰よりもするし、悲しいときは悲しい、怒るときは怒るみたいな感じで喜怒哀楽がはっきりしています。僕自身は喜怒哀楽を隠してしまうほうなので、なるべく心を開放して、自分の気持ちを正直に表現するという役作りを意識していました。
――酒井さん自身とギラで共通する部分はありますか。
酒井 ちょっと抜けている部分はギラと似ているなと思います(笑)。
——渡辺淳さんから学んだことで、今も深く印象に残っていることは何でしょうか?
酒井 淳さんから「アクションもお芝居の一つなんだ」ということを教えていただいて、大きな学びでした。どんなにフォームが綺麗でも、一番大事なのは気持ち、そのときの状況や感情がアクションに出るということを教えていただきました。