亡き祖母への想いを込めた『輪廻』初披露のステージではファンへの安心感も込み上げて

――『パンダガール』に先立ち、8月には『輪廻』を配信リリース。曲の背景には、お祖母様との永遠の別れがあったそうですね。

にしな そうですね。ずっと元気だったのですが、病気でご飯が食べられなくなってしまいました。でも、チーズケーキなら食べられると言っていたので、各地でのステージがあるたび、チーズケーキを探しては届けていました。

――曲を書こうと思ったのはなぜでしょうか?

にしな 亡くなった日、仕事のため遠方へ行っていたので、最期には立ち会えませんでした。親からおばあちゃんが亡くなったと聞いた日、帰り道の夜空に赤い月が昇っていて「頑張ってねと言ってくれているのかな」と思って、曲にしようと決めました。人の存在とは何かを考えながら作って、完成までに時間はかかりました。

――曲の完成までに時間がかかったのは、なぜですか?

にしな この『輪廻』に限らず、しかるべきときが来るのを待つタイプなんです。感情に任せて一気に作るのではなくて、マイペースに向き合っていたら、結果として年月がかかりました。

――水中に飛び込んでいたり、幻想的な映像が続くMVも印象に残りました。

にしな 監督を務めてくださった映像作家で写真家の島田大介さんに「光の粒が目に入って姿が見えていたり、空気が振動して音が耳に届いたり、存在するとはどういうことなのか」」をテーマに表現してくださいと、お願いしました。島田さんからも、逆再生の構成にしようと提案いただいて、面白い作品に仕上がりました。

――『輪廻』の初披露は2025年6月に開催されたツアー「MUSICK 2」のアンコールでした。

にしな アンコールでは明るい曲が多いので、シリアスな『輪廻』で大丈夫かなと不安もありました。でも、ファンのみなさんが受け止めてくださって安心できたし、「どんな表現でも受け止めてくれる人がいる」と自信を持てるステージでした。

――ステージでは、様々な思い出もあったのではないでしょうか。

にしな あったかもしれません。祖母はライブを見に来ることはなかったですし、私も自分のことをあまり話すことはありませんでした。でも、洋服が好きで、「この布は何かに使えるんじゃない?」と私の仕事を気にかけてくれるときもありました。最後の方はアルバムを聴いてくれるようになって、ベッドの上で聴いている姿を見ていたし、ライブに呼べたらよかったなと思ったりもします。

――ライブのについてお伺いします。全国10都市を巡った「MUSIC 2」は振り返ってみていかがでしたか?

にしな 凝縮されたツアーで、長年一緒にステージを作ってきたバンドメンバーともより深くコミュニケーションをとり、議論もしながら「にしな」としてのパフォーマンスの大切さを考えました。イヤモニが苦手だったのですが、それも乗り越えてライブそのものを楽しめました。

――その一方で、春から夏にかけては「RUSH BALL 2025」など、数々のフェスにも参加しました。

にしな フェスは音楽が好きな人が集まる場所ですし、私も音楽ファンとして楽しい空間を作れればと思って挑みました。特に「RUSH BALL 2025」ではトリを務められて、直前に花火も上がった余韻を受けてのステージで、自分らしいライブを作れました。

――単独ライブとフェスでは、ステージに立つ意識は違いますか?

にしな 違います。ワンマンでは自分を好きで来てくださる人がいらっしゃるので、安心してステージに立てます。フェスでは、初めて私を見る方もいらっしゃいますし「にしなとは、こんな人です」と、自分らしさをより強く表現できればと思っています。

――来年、2026年3〜6月にはZepp Fukuokaを皮切りとしたツアーも決定しました。

にしな 現段階での構想はあります。新曲『パンダガール』もありますし、ここまでにリリースした曲も溜まってきたので、1つの形として披露できたらと思います。