池端杏慈ちゃんと事前にお芝居のプランを立てて演じた
――萌の住む家はどういう場所だったんですか。
當真 静岡県の伊東市にある重要文化財で、普段は誰かが住んでいる訳ではないんです。萌のお部屋やリビングなどは、映画の雰囲気に合わせて、家具や小道具などにもこだわって準備されていました。そこにいるだけで「萌はこういう家で育ってきたんだな」「お父さん、お母さんの愛がいっぱい詰まっているんだな」と感じながら演じることができました。ただ重要文化財なのでクーラーなどが付けられず、真夏の撮影だったので大変でした。スポットクーラーを入れてもらって、カットがかかったら急いで涼むということを繰り返していました。
――酒井監督の演出はいかがでしたか。
當真 萌の動きに関する演出がたくさんあって、細かい指示もあったのですが、事前に「こういうお願いをするかもしれないので準備してほしい」と言っていただけたので、ある程度は準備して臨むことができました。感情面については、いろいろ酒井監督が聞いてくださって、意見のすり合わせをしながら撮影できましたし、自分が考えていることも言いやすくて、すごくやりやすかったです。
――特に印象に残っているシーンは?
當真 ポスターのメインビジュアルにもなっている湖からストロベリームーンを見るシーンと、病院の敷地に⽇向くんが友達と運んでくれたひまわりを病室から見るシーンが記憶に残っています。特に湖のシーンは、日向くんと月を見られるといううれしい気持ちと、そろそろお別れをしなきゃいけないという気持ちの葛藤があって、どう演じるか悩んだのもあって印象に残っています。湖の撮影自体は日中だったのすが、完成した映像では夜の幻想的な湖になっていて感動しました。
――この作品を通して、自分自身で俳優として成長したなと感じることはありますか。
當真 撮影中に台本なしでエチュード的なお芝居をしたシーンが幾つかあって、初めての経験だったのですが、アドリブ力が鍛えられました。酒井監督から「今からこういう会話をしてください」とひと言いただいて、それに沿ってお芝居するシーンが多かったので、いろいろな学びがありました。
――親友の麗(うらら)と、萌の部屋で遊ぶシーンは心から楽しんでいるのが伝わってきました。
當真 麗ちゃんを演じた池端杏慈ちゃんと事前にお芝居のプランを立てて、なんとなく構成を作って撮影に臨みました。酒井監督が「カット」と言うまで演技を続けなければならないので必死でしたが、二人で楽しんでいました。台本ありきのお芝居とは違って、間だったり、セリフの言い方だったり、どう映るかなど、いろいろ考えながらやっていたので、今後に生かせる部分がたくさんあると思います。
――完成した作品を観たときは、どう感じましたか?
當真 皆さんのお芝居が本当に温かくて、余命半年というマイナスに捉えてしまう要素がある中で、どれだけ明るく前向きに生きようとしているかが伝わってくる作品だなと思いました。
――萌がいないときの両親だけのシーンは、どう感じましたか。
當真 台本で話の流れは分かっていましたが、お二人のあんな苦しそうな表情を撮影中は見ることがなかったので、心が締め付けられました。
――13年後を演じたキャスト陣の演技を見て、高校生時代のキャストと通じるものは感じましたか。
當真 日向くんも麗ちゃんも、私がお芝居を通じて目の前で受けていたものと全く同じだなと感じました。麗ちゃん役の中条あやみさんも、日向くん役の杉野遥亮さんも、高校時代をそのまま受け継いでいて、いいところを持ったまま大人になったような、誰かを思うということに対して優しい気持ちを持った、理想的な成長をした二人がいました。二人が萌を思う優しさと愛情が滲み出ていて、萌としてもうれしかったです。