恒松祐里さんとの再会は『おかえりモネ』の同窓会みたいで楽しかった
――主演映画『消滅世界』は人工授精の技術が発達し、夫婦が性行為をすることはタブーとされている近未来を描いた作品です。
蒔田彩珠(以下、蒔田) 最初に村田沙耶香さんの書かれた原作を読みました。現実とかけ離れた設定ではありますが、ノンフィクションかと思えるくらいリアルな作品だと感じました。主人公・雨音の女子高生時代から30代までを演じるので、どういうふうに変化をつけていこうかなと考えながら、何度も脚本を読み込みました。

――一種の会話劇で、セリフ量も膨大です。
蒔田 確かにそうでした。言われるまで気づかなかったのですが、覚えるのが大変だったという記憶がないです。それだけセリフがすんなり入ってきたんだと思います。撮影中も雨音を自然と演じることができたので、それだけしっくりときたキャラクターでした。
――雨音は、社会から人が恋や性の対象として見るべきなのは、家の外の恋人や二次元キャラクターだと言われて育ち、夫を心から愛し自然妊娠で自分を産んだ母に嫌悪感を抱いていますが、どのように捉えましたか。
蒔田 現実の常識で言えば、特殊な環境で育っていますが、自分の常識が周りと同じだと思いたい気持ちは、誰しもそうだと思います。だから周りと違うことを恐れる雨音の心情は想像しやすかったです。私自身、周りと同じ考えでありたいとか、周りに合わせたいと思ってしまうことは多々ありますからね。
――川村誠監督の演出はいかがでしたか。
蒔田 直接的な言葉で演出をされる方ではなくて、役者が脚本を読んだ時に感じたことを大切にしてくださるのでやりやすかったですし、撮り方で監督なりの変化をつけているんだなと感じました。
――川村監督は本作が長編映画デビュー作になりますが、もともと映像ディレクターとして数多くのMV(ミュージックビデオ)やCMなどを手掛けているだけあって、凝った映像が印象的でした。
蒔田 脚本を読んだ段階では、どういう映像になるのか全く想像できませんでしたが、長回しが多くて、細かくカットを割らない撮り方だったので、やる側としてはお芝居に集中することができました。シリアスな内容なので和気あいあいと撮るような雰囲気ではなかったのですが、1シーン1シーンを丁寧に撮っていて、カメラワークも独特でした。完成した作品を観て、魅力的なシーンの連続だなと感じました。

――雨音の高校からの親友・樹里を演じた恒松祐里さんは2021年の朝ドラ『おかえりモネ』ぶりの共演だったそうですね。
蒔田 久しぶりに共演できてうれしかったです。一緒にご飯にも行ったんですが、朝ドラ同窓会みたいで楽しかったです。お互いに『おかえりモネ』の時とは全く違う役で、普段の恒松さんは元気な印象がありますが、今回は落ち着いたトーンのお芝居で新鮮でした。特に雨音と樹里がカフェで話すシーンはお気に入りで、子役の女の子が自由にぴょんぴょんと跳ねているのを二人でなだめている様子が微笑ましかったです。もともとお仕事で子役ちゃんと関わることが多いのですが、とてもかわいらしかったですし、癒されました。
