ものづくりの根幹に触れたくて演者を辞めてフォトグラファーに
――カメラを本格的に始めたきっかけを教えてください。
古屋 8年前くらいにモデルの仕事をしていた頃、ファッション誌でいろんなフォトグラファーさんと出会う中で、「僕をこんなにかっこよくしてくれるのか」「こんな魔法をかけてくれるのか」という驚きの連続で、フォトグラファーへの憧れが生まれたんです。みなさん大きな機材を抱えて現場に来て、けだるそうにカメラを出して、黙々とライティングを組んで、魔法のような1枚を生み出す。そのかっこよさに惹かれて、フォトグラファーさんのアシスタントとして現場についていったり、スタジオでライティングを一から学ばせてもらったりしていたんですが、みなさん優しくて、いろいろ教えてくださったんです。その後、仲の良いモデル友達を撮りながら少しずつ上達して。インスタグラムに撮影した写真を上げるようになり、それを見た方からカメラのお仕事をお声がけいただくようになりました。

――フォトグラファーとしての最初の仕事はどういう内容でしたか。
古屋 いきなりハイブランドの仕事をいただいたのですが、自分の技術がどのレベルかも分からない状態で、今思えば怖さしかないです。でも当時は「来たらやる」「できなくてもやる」というマインドでやっていました。そのうちモデルをやっていた時に知り合った方々から、オファーをいただくようになって、ファッション以外にも俳優さんの写真集やカレンダーを撮ったり、アートディレクターさんから指名をいただいたりと仕事の幅も広がっていきました。
――映像クリエイターとしても活動されていますよね。
古屋 実は演者を辞めて、3年間くらいフォトグラファーを専業でやっていました。その時期に、もともと映像の世界に興味があったので、ムービーもYouTubeなどを参考にしながら独学で覚えて。スチールとムービーの両方をやっていました。
――なぜ演者を辞めたのでしょうか。
古屋 モデルは素敵な仕事だし、僕自身も好きなんですが、スケジュールをもらって、撮影に行って帰る、という流れの中で、ものづくりへの接地面が少ないと感じたんです。自分で生み出したいという欲求が強くて、ものづくりの根幹に触れたかったんですよね。演者の仕事は外から生まれるもので、自分でコントロールできないことも当時はしっくりこなくて。フォトグラファーとして主体的にものづくりをする方が当時の僕には合っていたのだと思います。ですが撮られる側と撮る側のどちらも経験したからこそ、両方の気持ちが自分の中に蓄積されていって、それが今もすごく役に立っています。
――フォトグラファー、映像クリエイターとして順調な日々を送る中で、どうして俳優をやろうと思ったのでしょうか。
古屋 ブランドさんの案件で、アミューズ所属の女優さんを撮影するためにミラノに行ったんですが、その時に女優さんのマネージャーに「また演者をやってみたいんですよね」と相談したんです。映像に携わっていたので、お芝居に興味がありましたし、多くの人に自分の表現を伝えるという意味では、フォトグラファー以上に演者の方が大きいと感じたんです。すでに28、29歳だったので、生え抜きの方が多いアミューズに入れるとは思っていなかったんですが、ありがたいことに受け入れてもらえました。
――それまでお芝居の経験はあったんですか。
古屋 アミューズに入って初めて経験しました。事務所のレッスンに通い始めたら、高校生と同じクラスで(笑)。その中に細田佳央太くんもいたんですが、学校の制服を着た子たちに「呂敏さん、おはようございます」と言われて授業を受けるんです。その子たちの方が役者としてはずっと先輩ですし、演技も上手い。それがいい刺激になって、「年下の子たちが、これだけ頑張っているんだから、俺も頑張ろう」というモチベーションになりました。アイドルグループ「さくら学院」の子たちもいて、意見交換の時に「呂敏さん、どうしてあのお芝居の時に間を開けたんですか」と言われることもあって(笑)。距離を置くのではなく、同じ目線で見てくれるのもありがたかったですね。

――現在は俳優とフォトグラファーの両軸で活動されていますが、バランスはどう取っているんですか。
古屋 割合としては5・5で、コンスタントにフォトグラファーの仕事も入れていますが、今は演者の軸を増やしたいと考えています。突発的にドラマのオーディションなどが入ることもあるので、サブのフォトグラファーを二人確保してリスクマネジメントをしていますし、午前中に写真撮影をして、午後にドラマの現場へ行く日もありますね。大変といえば大変ですが、楽しいんですよ。どちらもやることで良い作用しかないと感じています。
――4月には、古屋さんにとって初舞台となる『春琴抄』の公演も控えています。
古屋 谷崎潤一郎の小説が原作ですが、今年1月公開の主演映画『愛のごとく』も山川方夫の短編小説で、純文学作品が続いています。『春琴抄』は過去に何度も上演されてきた名作ですが、見に来てくださる方にとっては、僕が初舞台かどうかなんて関係ありません。きちんと責任を持って、稽古を通してクオリティを上げて、お芝居に向き合わなければいけないと思っています。毎晩、胃が痛くなる日が続きますが(笑)。それを乗り越えた時に、表現者として次のステージに行けると思いますし、新しい自分に出会えそうでワクワクしています。新国立劇場という大きな舞台で演じさせていただけることも光栄ですね。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
古屋 まだ自分は何者でもないと思っているんです。俳優としてのスタートが遅かった分、誰よりも頑張らないといけないという意識は常にあります。まずは目の前にある仕事と真摯に向き合うことが大切だと感じています。
Information
『教えてください、藤縞さん!』
TOKYO MX1にて毎週金曜日25:35~25:50
出演:古屋呂敏 つじかりん
原作:「教えてください、藤縞さん!」(ブライト出版) なえ・淡路
監督:藍河兼一、伍藤斗吾
脚本:小鶴乃哩子
主題歌:「デート」 オレンジスパイニクラブ(Warner Music Japan)
製作著作:「教えてください、藤縞さん!」製作委員会
男性経験ゼロのTL小説家・水原りお(つじかりん)は、「エッチ描写にリアリティがない」と編集者にダメ出しされ窮地に。悩むりおが出会ったのは、無愛想なイケメン銀行員・藤縞(古屋呂敏)。りおは「私に一人エッチを見せてください!」と大胆な“実地取材”を頼み込むと、まさかのOKが!? 戸惑いながらも始まった極秘の「ラブレッスン」は、やがて本気の愛を確かめ合う甘美な時間に変わっていく。カラダから始まる波乱の恋の行方は?
舞台「春琴抄」
公演日:2026年4月29日(水)~5月6日(水)
会場:新国立劇場 小劇場
原作:谷崎潤一郎
上演台本・演出:海路
出演:茅島みずき 小栗基裕(s**t kingz) 水田航生 古屋呂敏 中山敬悟 永井秀樹
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:CHIKA UENO,STYLIST:AKIYOSHI MORITA
