心の動きが自然で嘘なく演じられた
――映画『東京逃避行』は歌舞伎町が舞台ということで、リサーチなどはされましたか。
池田朱那(以下、池田) 大久保公園の少し奥にある、歌舞伎町で悩みを抱える人の相談窓口を運営している団体に、さとうほなみさん演じるレイカさんのモデルになった方がいらっしゃって。若い子たちに向けて実際にティッシュ配りをするところを、スタッフさんと一緒に後ろからついて回り、私が演じた日和と同じように歌舞伎町にいる子たちを実際に見て勉強させていただきました。トー横キッズと言われる子たちはあまりいなくて、ちょっと大人っぽい女性が一人でいる印象でした。
寺本莉緒(以下、寺本) 私が演じた飛鳥が歌舞伎町に初めて訪れる女の子で、私自身、普段は行くことがないですし、あえて撮影前に一度も行かないようにしていました。初めて足を踏み入れる新鮮さを残しておきたかったんです。

――初めて脚本を読んだ時の印象をお聞かせください。
池田 歌舞伎町って、普段は昼間に映画を観に行くときぐらいしか足を踏み入れないので、どちらかというと怖いイメージがある場所で、初めて感じる世界観というか。人間の感情の動きは分かるけど、そこで起きることへの共感がゼロだったんです。友達を信じられない、大人を信じられない、この街を信じてはいけない——そういう感情を理解するには、しっかりと研究して下調べをしなければ、日和を演じることが上っ面になってしまうと感じました。まずトー横を知ること、そして日和のような家庭環境で育った女の子の心の動きを知ることが必要だと思って、準備を始めました。この映画を観た人も感じると思うんですが、トー横キッズに対する印象も変わって、「怖い」「迷惑」ではなくなるはずです。
寺本 リアルさしかなかったですね。飛鳥はトー横キッズ側ではなかったので、脚本を読みながら作品と一緒にトー横を知っていったんですが、こういう子たちがいるということも、団体の存在も知らなかったので、すべてが衝撃的でした。これまでニュースで報じられるトー横キッズのイメージはちょっと悪いものが多かったけど、リアルにいる子たちは、そこまで悪い子たちじゃないし、悪いことをしているのかもしれないけれど、理由があって、支えてくれる場所もあって。そういう子たちに寄り添える作品にしたいと思いました。

――ご自身が演じたキャラクターについては、どう感じましたか。
寺本 自分に似ている部分が多くて、入りやすかったです。飛鳥は高校生なので完全に自立できているわけじゃないですけど、誰かの悩みにいち早く気づいて行動できるところが、私も悩むよりも行動に移すタイプなので共感できましたし、「私が高校生の時だったら、こうしていただろうな」という行動が脚本に描かれていました。
池田 日和と生きてきた世界線は違いますが、きっと私も飛鳥に対して、自分の気持ちを押し殺してごまかしながら伝えてしまいそうだなという部分が、セリフとして書かれていて。秋葉監督に「これはどういうことですか?」と聞くことが一切なかったほど、心の動きが常に自然でした。撮影前の本読みで秋葉監督とお話させていただいたんですが、おそらく私と莉緒ちゃんを実際に見て、この二人だったらこうするだろうなと脚本を書き換えてくださった部分もあったと思うので、嘘なく演じられた気がします。
