自分の想像力をより大きくするために、実体験を積み上げていきたい
――昇は実体験を役作りに生かすうちに、狂気へと駆り立てられていきます。
橋本 よく「人間観察をしなさい」と言われますけど、自分じゃない役を演じるわけですから、街を歩いている人たちを見るだけでも、それがお芝居の引き出しになるんです。だからといって、悪い役をやるなら悪いことをしなきゃいけない、ということではなくて、あくまでも自分の想像力をより大きくするために、なるべく実体験に近いことを経験して、積み上げていきたいという思いは僕もあります。以前、声優さんから、「ロボットを操縦する役を演じる時に、先輩にサーキットに連れていってもらって、実際にどのくらいのスピードなのかを体験した」というエピソードを聞いたんです。それをやるかやらないかで、自分の中のイメージが大きく違うんです。それによってニュアンスも変わってきますしね。

――森崎さんと二人で、事前に話し合うことはありましたか。
橋本 基本的には現場で掘り下げていきました。事前に深く打ち合わせをするというよりも、カメラの前でそれぞれが本気で持ってきたものをぶつけて、その場で出たものを大切にする。ただ、事務所が同じということもあって後輩という感覚がより強く出てきた部分はあったかもしれません。先輩役としてやりやすかったですね。
――共演してみて、改めて森崎さんの印象はいかがでしたか。
橋本 本当にいい子だなと思いました。昇そのままというか、真っ直ぐさゆえに、何色にでも染まってしまうような危うさを感じる瞬間もあって。それって役者としては素敵なことだなと。危うさがある人間じゃないと、あの役はできないだろうなと思います。
――谷監督の演出についてもお聞きしたいんですが、別の現場に参加した俳優さんから、とてもスピーディーだとお聞きしたことがあります。
橋本 仰る通りスピーディーですね。「これでいいの?」って不安になるんですけど、谷監督がOKを出しているということはOKなんだと、信頼しながら前に進めていくような感覚でした。でも、しっかりと撮るべきところはおさえているんですよね。

――完成した作品をご覧になっていかがでしたか。
橋本 まず、自分の携わった映像作品をたくさんの方に観ていただけるんだという純粋なうれしさがありました。それと同時にアートのような映画だなと感じて、その美しさを劇場で観てほしいですね。あと受け取り方が、お客さんによって大きく変わってくるだろうなと思いました。考察してみるのもいいし、一切そういうことを考えずにふらっと観るのもいいし、いろんな見方ができる作品ですね。
