過去に関わってくださった方たちが見えない糸で引っ張り上げてくれている
――30歳を迎えられたばかりですが、意識の変化はありますか。
伊波 今年は不思議なもので、『DUMB SHOW/ダム・ショウ』もそうなんですが、20代前半にご一緒した制作さんたちや、過去に一緒にお仕事をした演出家さんからお話をいただくことが急に増えて。当時は自分がどんな印象を残しているかなんて意識していなかったし、印象なんか残ってないだろうなと思いながら、その場その場でやるべきことをやっていただけなんですけど、こうして声をかけていただくということは、何かがきっと残せていたんだなと。20代の自分に感謝だなって思います。タイミングが合わなかったりとか、スケジュールの問題で難しくなってしまうこともあるんですけど、それはちゃんと自分の耳にも心にも届いているので、また機会があったら必ずとは思っていて。そういうつながりって、ありがたいなと今年は特に感じます。ただ実は去年、少し舞台のお仕事を離れようと思っていた時期があったんです。

――何があったのでしょうか。
伊波 いろんなことが腑に落ちない瞬間が多くて、なんだかむなしい思いをたくさんして……。そんな時に、いつもお世話になっている演出家さんが昨年12月の公演の日替わりゲストに呼んでいただいて。何にも話してもいないのになんだか引き止めてもらった感じがして、とっても救われて。後に引いちゃうぐらい楽しくて。「結局、舞台が、お芝居が好きなんじゃん!」って自分で自分に悔しくて(笑)。そういうお話が舞い込んでくるって、信用とか信頼の上で作品にどう愛を注げるかどうかだと思うんです。それがありがたくて、引き戻されているんです。今年はアーティスト活動に専念しようと決めていたんですけど、そうもいかないというか、過去の自分と、過去に関わってくださった方たちが見えない糸で引っ張り上げてくれている感覚があって。引き上げてもらったんだから向き合ってみよう、苦労はするだろうし、やるせないこともたくさん向き合わなきゃいけなくなるだろうけど、そうやって一生やっていかなきゃいけないことだなと。

――あえて困難な道を選ぶのも必要だということですね。
伊波 やりたいことだけを選んで、好きなものだけを手に取るという道は、やれるなら誰だってその道を選びますよね、きっと。でもそれだと伊波杏樹じゃなくなってしまうから。いろんな逆風と戦ってきたじゃないか、赤も青も経験してきたじゃないかって思うと、それが今の自分を作っているわけで。30代になって選べる道が増えたかもしれないのにそこへ冒険せず進むだけじゃ、それって20代の自分が寂しがるかもよと思ったら、結局選んでしまうのはまだ見ぬ分からないことだらけの道かもなって。だからこそやりがいがあるし、向き合いがいがある。向き合った先の結果には、何かがつながると信じてやまない自分でいようと鼓舞しています。
Information
『DUMB SHOW/ダム・ショー』
公演日:2026年4月11日(土)~4月19日(日)
会場:紀伊國屋ホール
料金:9,500円(税込み)
<キャスト>
バリー:柳家花緑
グレッグ:小西成弥
リズ:伊波杏樹
<スタッフ>
作:ジョー・ペンホール
翻訳:小田島創志
演出:田村孝裕
美術:久保田悠人
照明:鷲崎淳一郎
音響:大久保友紀
衣裳:藤崎コウイチ
ヘアメイク:平塚淳子
演出助手:たはらひろや
舞台監督:金安凌平
製作:インプレッション
人気テレビタレントのバリーがプライベートバンカーを名乗るグレッグとリズが用意した豪華ホテルのスイートルームに入ってくる。彼らはバリーを煽って、高額な金銭的報酬をちらつかせ、投資について説明を始める。良好な雰囲気の中、バリーは気を良くし、二人にすべてを任せると申し出る。しかしそこには大きな罠が仕掛けられていた。
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI
