中学生の頃から人の行動をじっくり見る生き方をするようになった

――絵を描くのは小さい頃から好きだったんですか?

若月 幼稚園のときから好きで描いていました。亡くなった祖父が絵の先生みたいなことをやっていて、祖父に教わったことは一度もないんですけど、私が描いた絵を持っていくと、とても喜んでくれたんです。それがうれしくて、絵を描くことが習慣化していきました。

――人に自分の意見や気持ちを伝えるのは得意なほうでしたか?

若月 小学生までは、自分から手を挙げて意見を言う子どもだったんですけど、中学生くらいから逆に全くしなくなったんです。

――何か理由があったんですか。

若月 いろんな人の感性を受け取るようになって、自分の意見だけではないんだと思うようになったというか。昔は自分が思ったら、「これです!」と伝えていくタイプだったんですけど、自分の思ったことを真っ直ぐ伝えることによって、うれしい思いをする人もいれば、攻撃されたと思ってしまう人もいるんだろうなということに中学時代に気がついたんです。そこからは人の行動をじっくり見る生き方をするようになりました。

――絵はずっと描き続けていたのでしょうか。

若月 特に理由はなかったんですけど、一時期は絵から離れていました。この世界に入った当初も、絵を描くのが得意だということは表に出していなかったんですけど、私が18歳のときに、父親から「また絵を描いてみたら」と言われて、再び絵を描いて二科展に出品しました。

――お父さんはどういう意図で若月さんに絵を勧めたんでしょうね。

若月 直接聞いた訳ではないので分からないんですが、私には趣味も特技も何もなかったんですよね。今もマンガが好きぐらいしかないと言えばないんですけど(笑)。グループ時代は周りに武器がある人が多かったので、何もない私を見ていて、何か夢中になれるものを見つけてほしいと思って声をかけてくれたのかなと。

――それをきっかけにコンスタントに絵を描くようになって、高い評価も得ています。

若月 絵を描くようになって思い出したんですが、昔は自分の感情を言葉にすることができなかったので、絵にしちゃおうと思って描いていることが多かったんです。そうやって溜まっていたものを発散していたんです。あとは先ほどの学校の科目の話にも通じるんですが、絵って答えがないので、自由に表現できる喜びもありました。よく美術で先生に褒められることが多くて、たとえば四角を二つ使って、四角の中に自分の好きな絵を描くという授業があったんです。そのときに私は四角の中を飛び出して、四角の外に丸などを描いたんですが、そのときに「普通は四角の中に綺麗な絵を描こうとするけど、そこを飛び出すのは珍しい」と評価してくれて。そのときのことを思い出して、良いも悪いもなく、自由に絵を描くことが楽しくなりました。大人になると、無心になって、ただただ目の前のことだけに没頭する機会ってなかなかないので、絵を描くのは貴重な時間です。

――せっかくなので、最後に今おススメのマンガを挙げてもらえますか。

若月 『僕の心のヤバイやつ』と『山田くんとLv999の恋をする』です。『僕の心のヤバイやつ』はヒロインが陽キャで、背が高くてモデルをやっていて、クラスの人気者。それに対して主人公は陰キャで中二病の男の子。二人は相思相愛なんですけど、男の子は自分のことを理解し過ぎちゃって、気持ち悪いって思われているんだろうなとか、彼女の格を落としちゃうから僕は近づかないほうがいいと思っているんですけど、女の子はグイグイくるんです。女の子のことを一番に思っていて、ただただ「幸せになってくれ!」と願っているからこそ、気を遣った行動をしていて、本当に優しくて素敵な男の子で惹かれます。

――『山田くんとLv999の恋をする』は男運のない主人公の女性が、女性が苦手なイケメン男性に惹かれていくストーリーなので、どちらかというと『僕の心のヤバイやつ』と逆の設定ですね。

若月 私は少女マンガにありがちな、ドジっ子で、周りが助けなきゃいけないというヒロインが苦手なんです。そういうマンガって、その子を守るためにヒーローが苦しむことになるので、「それ以上、ヒーローに近づかないで!」と思っちゃうんです(笑)。でも『山田くんとLv999の恋をする』のヒロインは、めっちゃいい子で、相手の気持ちを第一に考えて行動する姿を見るたびに、心の中で拍手を送っています(笑)。

Information

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若月佑美

1994年6月27日生まれ。静岡県出身。2011年、乃木坂46の1期生オーディションに合格。2018年11月に同グループを卒業。現在は俳優として映画・ドラマを中心に活躍。ドラマでは、『今日から俺は!!』(日本テレビ)、『私の家政夫ナギサさん』(TBS)、『共演NG』(テレビ東京)、『invert 城塚翡翠 倒叙集』(日本テレビ)、Netflix映画『桜のような僕の恋人』などに出演。映画でも『ヲタクに恋は難しい』、『今日から俺は!!劇場版』『劇場版ラジエーションハウス』、『ブラックナイトパレード』など、出演作多数。2020年、オンラインサロン『未開発区域』を開設。9月に2nd写真集『アンド チョコレート』発売。2022年、舞台『薔薇王の葬列』ではリチャード役で主演を務めた。また、二科展にて通算9回入選し、特選入賞するなど、アートにも才能を発揮している。2023年はドラマ『ワタシってサバサバしてるから』(NHK総合)、ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日)、TBSテレビ火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』に出演。8月からはABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『何曜日に生まれたの』に出演予定。

PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:SHIORI NAGATA(Nous) ,STYLIST:YUI KURANOSHITA(commune ltd.,)
衣装協力
ワンピース ¥53,900/double standard clothing
シューズ ¥8,690/あしながおじさん
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