愛の価値観みたいなものを書いている曲が多いことに気づいた
――初のフルアルバム『Life-size』は全曲、手島さんが作詞作曲を手掛けていますが、そもそも曲作りを始めたのはいつ頃だったんですか。
手島章斗(以下、手島) 制作活動に取り組むようになったのは2020年からです。コロナ禍というのもあって、アーティストの自分には何ができるのかを考え、曲作りを始めたことがきっかけです。その当時から作り溜めていた曲もあるんですが、本格的に今回のアルバムに向けて制作活動を始めたのは1年前ぐらいです。
――どのように曲作りをするのでしょうか。
手島 基本的にギターとキーボードで作ります。ボーカリストだから、自分がどのキーやロディーラインが歌っていて気持ち良いか分かっているので、その延長線上で作っています。どんな曲も上手く歌いたいという欲張りな気持ちがあるので、ご提供いただいた曲も自分のものにしてみせるっていう意気込みで臨んでいますが、今回は自分で作れる環境だったので、自分らしさを意識しました。
――詞先と曲先だと、どちらが多いですか。
手島 詞と曲が同時に浮かんだり、メモにしたためていたアイデアが形になったりもあるので、一概には言えないんですが、どちらかというと曲先が多いです。
――多彩なジャンルを横断した、バラエティ豊かなアルバムだなと感じました。
手島 ありがとうございます。こういう曲調とか、こういうコンセプトみたいなのは、あえて決めずに、自分から湧き出る自然なものを大切にしたんですが、結果的にバランスが良かったのかなと思います。
――1曲ずつ聴きどころをお聞かせください。「Lazy Day」はオープニングに相応しい開放感にあふれた曲です。
手島 誰しもダラッとするときや、疲れて何も手につかないときがあって、それで自己嫌悪に陥ることもあると思うんですけど、「そういう日もあっていいんじゃない」って、普段から頑張っている人を肯定してあげられたらなと思って作った曲です。
――2曲目は「⾦⽊犀」。
手島 一言で言うと、「初心を忘れたくない」という曲です。大人になって、いろんな物事を知っていくと同時に忘れていくものもたくさんある気がして、それを忘れたくないという思いで書きました。
――3曲目の「恋⻘空」は高揚感のあるロックナンバーです。
手島 僕の今までのイメージからするとロックは意外かなと感じるかもしれないんですが、青春のきらびやかさやほろ苦さをロックで表現したかったんです。
――「今逢いに⾏くよ」は一転してピアノのイントロから始まるバラードです。
手島 自分でバラードを書いたのは初めてだったんですが、実は「恋⻘空」とストーリーが繋がっていて。「恋⻘空」で出会った二人が、別れた後にどうなるのかという、その後の展開を書きました。
――5曲目の「Dolphin」は優美なストリングスが印象的な曲です。
手島 人って、いろんな葛藤にまみれて生きていますし、自分が悪いと分かっているのに、人のせいにすることもあると思います。そういう部分も含めて自分らしさというか、自分を信じて生きていこうという希望を込めた人生賛歌です。
――「脳内パズル」は洗練されたサウンドに内省的な言葉が並びます。
手島 哲学チックな曲にしたいなと思って書いたんですが、僕は誰かと会話したときに、意見が分かれたりとか、言い合いをしたりしたときって、けっこう考え込んじゃって一人で夜に反省会をすることが多いんです。そうやって誰もが脳内にあるパズルをピースにはめて、その時々の選択をしているよねということを書きました。
――「ASH」は曲調も世界観もダークです。
手島 世の中や人間って美しいものばかりじゃなく、濁ったものもたくさんあるじゃないですか。そういう部分をストレートに書いた曲です。たとえば、相手は裏切ったつもりがないのに、自分が裏切られた感覚になることって結構ありますよね。そういうもやもやした気持ちを書いたんですが、この曲があることによってアルバム全体が締まるなと。
――確かにアルバムの中では異色ですよね。
手島 僕自身はポジティブ人間なので、歌詞を書くと、基本的に明るくて前向きな内容になるんです。ただ「ASH」の制作期間は、あえて一人で考える環境を作りました。
――「Buddy」はジャジーな曲です。
手島 Buddies(※ファンの呼称)に向けて書いた曲ではあるんですが、Buddyには相棒とか相方っていう意味もあるので、友達に向けての想いとして聴いてもらってもうれしいです。
――「freedom!!」はアップテンポでパーティー感のある曲に仕上がっています。
手島 語呂合わせをしたり、韻を踏んだりと、遊び心がある歌詞ですけど、不意打ちで核心をついてくるみたいな主人公をキャッチ―なメロディーで歌っていて、ライブで盛り上がる曲になるかなと思います。
――ラストはリード曲の「Just Smile」です。
手島 今回のアルバムを通して、自分にとっての愛の価値観みたいなものを書いている曲が多いなと感じたんです。そう考えたとき、この曲が核になるなと思って最後に持ってきました。それまで当たり前に近くにいた存在が、本当は当たり前じゃないんだよ、そう気づくと改めて大切さや愛しさを感じるよねというのを歌詞にしました。ライブでBuddiesと一緒に歌いたいですね。