正しさの物差しは人それぞれで、特にエンターテイメントは正解・不正解がない世界
――日比遊一監督の作品に出演するのは5年ぶりだそうですね。
岡崎紗絵(以下、岡崎) そうなんです。前回の『名も無い日』(21)も名古屋が舞台でしたし、今回の『はじまりの日』も名古屋ということもあって、日比監督から直々にお声がけをいただきました。
――どちらの作品も日比監督自身が脚本を手掛けています。
岡崎 最初に「歌の力をテーマにした映画をやりたい」とお聞きしたので、前作とは全然毛色が違うなと思いました。人間をフォーカスしていくという面では共通していますが、『名も無い日』は内に内にとフォーカスしていくところがあるのに対して、『はじまりの日』は画で見てもドローン撮影を取り入れるなど、大きく世界を見せていくんですよね。
――ミュージカルの要素も取り込んでいるのが印象的でした。
岡崎 台本にはそこまで詳しくミュージカルについて書かれていなかったんですが、すでに英語の歌詞は載っていて。このシーンをどうやって名古屋で撮るんだろうと想像もつかなかったですし、チャレンジングな作品だなと思いました。
――『はじまりの日』は全編フィルムでの撮影ですが、演じる側として意識することはありましたか。
岡崎 「フィルムだな」とは思いましたが(笑)、日比監督もスタッフさんも意識させないように気遣ってくださったのか、自然に演じることができました。完成した作品を見たとき、やっぱりフィルムならではの味があって素敵だなと感じましたし、ぜひ大きいスクリーンで見てほしいですね。
――岡崎さん演じる望月は若手音楽プロデューサーで、竹中直人さん演じる音楽プロデューサー・矢吹のアシスタントです。
岡崎 遥海さん演じる“女”の才能を見つけて支えていく。矢吹とは違う意見を持っていて、“女”の力を信じている芯の強い女性だなという印象を受けて、その思いをしっかりと持ちながら望月を演じたいと思いました。正しさの物差しは人それぞれで、特にエンターテイメントは正解・不正解がない世界ですが、望月の信念の強さには共感しました。
――岡崎さんは、望月のように自分の意見を強く言えるほうですか?
岡崎 あんまり言えるタイプではないです(笑)。もちろん時と場合によりますが、心の中で「それは違うな」と思っていても、些細なことだと表に出さないですね。
――初めて遥海さんの生歌を聴いたのは、どのタイミングでしたか?
岡崎 現場に入って初めて聴かせていただいたんですが、とてつもない歌声で涙ぐむぐらいに感動しました。劇中に出てくるオーディションシーンでも、初めて聴いたときの衝撃が忘れられずに演じることができたので、そのタイミングで聴けて良かったです。