上田慎一郎監督は各キャラクターの裏設定をたくさん作っていた
――初めて『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』の脚本を読まれたときの感想をお聞かせください。
川栄李奈(以下、川栄) シンプルに面白いと思いました。この映画は「元カレは天才詐欺師〜38師機動隊〜」という韓国ドラマが原作となっていますが、それをまた違った映画として撮るとどんな雰囲気や映像になるのか、とても楽しみでした。
内野聖陽(以下、内野) 僕は脚本の段階から上田慎一郎監督とは何度も打ち合わせをしているのですが、第一稿目のときは「分からない」状態でした。ベースとなっている韓国ドラマ全16話分を2時間の映画の脚本にしようとしているわけですから、てんこもりな内容だったんです。そもそも、公務員が詐欺師に加担して脱税王に10億円を納税させるなんて、普通に考えたら荒唐無稽すぎる話。でも、上田監督からいただいた資料の中に、税務署の実態が描かれた内部告発のような本があったんです。その本を読み進めていくうちにダークな側面がいろいろ見えてきて、これは面白そうだぞ、と虚構の世界にリアリティが増したのを覚えています。
――真面目で気弱な熊沢二郎と正義感あふれる後輩の望月さくら。それぞれのキャラクターを演じる上でどんなことを意識されましたか?
川栄 気弱な先輩と強気な後輩という対比が面白いので正義感を強く持って演じようと思いました。台本の読み合わせのときには、上田監督から「もう少しカラッとお願いします」と何度か言われたので、その「カラッと」具合を難しいながらも意識しました。本番で監督の目指す「カラッと」がきちんとできていたのか気になるところです。
内野 川栄さんの演じる望月さくらは、いろんな深い事情があって国税局で働きたいという強い想いがある。上田監督はそういう事情をふまえた上で、表出するものはドライにさせたかったのかもしれないですね。
――本編で描かれないキャラクター設定があるのですね。
内野 上田監督は、どういう過去があって、どうしてこういう人間になったのか、それぞれのキャラクターの裏設定をたくさん作っていたんです。僕の演じる熊沢二郎も、テーマは「怒りを忘れた公務員」ですが、かつては気に入らない人間の胸倉を掴むくらい血気盛んな時代もあったんです。それがいつの間にか怒りを忘れて生きるようになった。でも実は……という上田監督が考えられたさまざまな過去や設定が凝縮されて、映画での熊沢二郎になっています。