メロディーを作るのと同じような感覚でおしゃれをするようになった
――ファッションに目覚めたのは幾つぐらいのときですか。
Novel Core 最初に興味を持ったのは15歳のときにラップを始めて、渋谷の路上パフォーマンスを始めたタイミングです。それまで洋服には無頓着で、母親が買ってきた洋服を着ていました。朝起きて、一番上に畳んであった洋服を着て外に出るみたいな(笑)。同級生はおしゃれな子も多くて、かっこいいと思っていたんですが、自分自身がおしゃれすることには興味がなかったんですよね。
――どういう心境の変化があったんですか。
Novel Core ラップを始めた当初は高円寺でサイファーをしていたんですが、身内だけだったので洋服に気を遣う必要もなかったんです。その後、「お前はラップが上手いから渋谷に来いよ」と言われて、渋谷の路上でパフォーマンスとしてフリースタイルのジャムセッションをやるようになったとき、道行く人を立ち止まらせたい、自分を覚えてもらいたいという欲求が芽生えて。そのためにはラップだけやっていても駄目だと。かっこいいアーティストはビジュアルもしっかりしていて、良い服を着ているし、髪型なんかもちゃんとしている。当時はT-Pablowくんを始め、自分よりもちょっと年上の人たちが、おしゃれな高校生ラッパーとして活躍していて、いろんなファッション誌に載っていたんです。それを見ると、当時はドープクチュール(DOPE COUTURE)などのストリートブランドが流行っていて、かっこよく着こなしている。さらにニューエラ(NEW ERA)やティンバーランド(Timberland)、ディッキーズ(Dickies)などの着こなし方が独特で、今の時代のアイテムと綺麗にマッシュアップして、面白いなと思ったんです。
――周りに、ファッションに詳しい方はいたんですか。
Novel Core 高円寺で一緒にラップをしていた先輩にEGOさんという方がいて、後にジブさん(Zeebra)のGRAND MASTERで一緒になるんですが、EGOさんがグアラ(GUALA)っていうグッチ(Gucci)をサンプリングしたブランドをやっていたんです。EGOさんは高円寺でサイファーをしていた場所の近くにあったラギッド(RUGGED)という古着屋とも繋がっていたのもあって、古着カルチャーと洋服のデザインのサンプリング文化、ブートから生まれる文化などを教えてもらいました。「この洋服は、このブランドの何十年代のデザインをオマージュしたブート品なんだよ」みたいな、ブート品なのにオリジナルのブランドよりも価格が高いことなどを教えてもらって。古着のカルチャーをきっかけに洋服が好きになって、どんどん深みにハマっていきました。
――その当時は古着をメインで着ていたんですか。
Novel Core いえ、欲しい古着は高かったですし、当時はお金が全然なかったので、たとえばバギーパンツだったら年代ごとのシルエットを参考に、それに似た安い新品の洋服を探して、いかにそのシルエットに近づけて着るかというところから始めました。母親と一緒に、池袋のサンシャインシティまで行って、「丈の短いTシャツに下はダボッとしたフレアになっているパンツを合わせて、この時代の年代感を出したいんだよね」とか言って安い洋服を買って。それを汚したり、切ったりということを積極的にやっていました。
――当時、ファッション面で参考にしていたアーティストはいましたか。
Novel Core 当時からロックのカルチャーに興味があったんですが、マリリン・マンソン(Marilyn Manson)以降の世代が、男でもスカートを穿くなどジェンダーレスなファッションをしていたんですよね。好きなアーティストが着ているものは全部かっこいいと思っていましたし、確か2017年ぐらいだと思うんですが、セリーヌ(CELINE)やフェンディ(FENDI)といったメゾンも、ジェンダーレスなファッションを一般化し始めていた時期で、それを見て、「面白い。かっこいい」と思ったんです。それでファッションとして爪を真っ黒に塗るといったことも当時から試し始めました。
――当時、ロック以外で、ファッション面で影響を受けたアーティストはいますか。
Novel Core ラッパーだとマシン・ガン・ケリー(Machine Gun Kelly)です。まさにマリリン・マンソン以降のファッションから影響を受けているアーティストで。彼は身長もあるから、すごく細身のシルエットなんですが、オーバーシルエットが再び流行り始めていた時代だったので、それを上手く取り入れていて。当時はヴェトモン(VETEMENTS)を立ち上げ、2015年からバレンシアガ(Balenciaga)のデザイナーを務めているデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)以降のデザインが一般化してきたタイミングで、90年代のようなオーバーシルエットじゃなくて、ガチでブカブカなシルエットのパンツに、パツパツのライダースを合わせるみたいなロックイズム溢れるコーデをしていたんです。そういったところから刺激を受けていました。
――ハイブランドの歴史も調べたんですか。
Novel Core 調べました。勉強が本当に苦手だったので、基本的に興味を持ったこと以外はマジで勉強しないタイプだったんですが、ファッションに関しては、すごく自分との親和性を感じていて。音楽と同じで、言葉にならない自分の感情みたいなものを表現するときに、メロディーを作るのと同じような感覚でおしゃれをするようになりました。