監督と役者以外は同じクルーで撮影した3作品

――江戸川乱歩没後60年記念作品『RAMPO WORLD』は、乱歩の作品を原案に設定を現代に変えて、オリジナル解釈を加えた『3つのグノシエンヌ』『蟲』『白昼夢』の長編映画3作が公開されるという企画で、皆さんはそれぞれの作品で主演を務めています。お三方は、これまで顔を合わせたことはあったんですか?

平埜生成(以下、平埜) 今日が初めてです。新鮮ですね。

松田凌(以下、松田) 各々の作品の主演を演じている3人が初めて会って、それぞれの作品の話をするのは稀有な経験です。

見津賢(以下、見津) この取材をきっかけに仲良くなりたいですね(笑)。

――江戸川乱歩の小説や映像作品に触れる機会はありましたか?

松田 小さい頃は馴染みがなかったのですが、初めて触れた乱歩作品は美輪明宏さんが主演の『黒蜥蜴』です。映画も舞台も観ていて、すごく印象に残っています。

平埜 僕も小さい頃は読んでいなかったのですが、大人になって落語を聞くようになって、落語家さんが乱歩原作の落語をやることがあるんです。最初に聞いたのは「赤い部屋」で、とても面白かったので、それをきっかけに乱歩作品を読み始めました。

見津 乱歩を知ったきっかけは、主人公の名前の由来になった『名探偵コナン』です。そこから『少年探偵団』『怪人二十面相』といった明智小五郎シリーズにつながっていきました。

――今回の映画は、どのように出演が決まったのでしょうか。

松田 実は僕が受けたのは『蟲』のオーディションだったんです。

平埜 そうだったんですか!

松田 木口健太さんが演じられた主人公の友人・池内のオーディションで、そのときはご縁がなかったんですが、後日『3つのグノシエンヌ』のオファーをいただきました。もともと江戸川乱歩没後60年記念作品という企画は何となくお聞きしていたんですが、3作品も制作すると聞いて驚きました。

平埜 僕は「平波亘組のオーディションがあります」というお話を聞いて、脚本を読んで、いろんな役柄がある中で、今回演じた柾木を選びました。その時点で濡れ場があって、インティマシーコーディネーターもいらっしゃるというお話を聞いて、新たな挑戦だなと感じてワクワクしました。オーディションで印象的だったのは、今回の3作品の各監督がみなさんいらっしゃったんですよね。

見津 僕は先に脚本をいただいてからの監督面談という形でした。

松田 直接のオファーだったんだ。いいなぁ(笑)。

見津 最初に脚本を読んだときに思うところが幾つかあって、読者目線で「こういうシーンがあったらいいんじゃないですか」「主人公のこういうところをもっと描いたほうがいいと思います」と山城達郎監督に意見を言わせていただいたんです。主人公の渡会は塾講師で物理を教えているという設定だったんですが、僕も大学生のときに物理を勉強していて、予備校で物理を教えていたんですよ。それを伝えたら、山城監督に「ぴったりですね!」と言っていただいて、正式に出演がきまりました。

松田 それぞれ出演までの経緯が違っていて面白いね。

――見津さんの意見は実際に採用されたんですか?

見津 そうですね。山城監督も脚本の川崎龍太さんと試行錯誤している段階だったので、「一緒に考えていきましょう」と言っていただきました。

――監督同士や俳優さん同士で、ライバル意識のようなものはありましたか?

見津 なかったですね。特に山城監督は他の2作品にも演出部で参加されていますしね。

平埜 監督以外はスタッフチームが一緒だと聞いています。

見津 同じクルーで違う作品を作ったという感じですね。

松田 だからライバル意識はなくて、それぞれの作品に江戸川乱歩に対する監督の思いがあって、俳優陣もそれに共鳴するみたいな。だから拮抗し合うということはなくて、純粋にそれぞれの作品がどんな仕上がりなのか気になるし、楽しみという気持ちが強いです。

――ご自身が出演した以外の作品を観た方はいらっしゃいますか。

松田・平埜 これからです。

見津 僕は3作とも観させていただきました。現場に入ってから3作品とも一緒のクルーだと知って驚いたんですが、同じクルーでここまで毛色が違うのはすごいなと思いました。しかも同じ期間に撮影していると思うんですが、それぞれの特色が出ていて素晴らしかったです。