十代の頃から舞台や映像作品で観ていた渡辺いっけいさんとの共演は光栄なこと
――『追想ジャーニー リエナクト』のオファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。
松田凌(以下、松田) 谷(健二)監督とは少し前に別の作品でご一緒させていただいていて。そのときに「またやろう」と言ってくださったんですが、すぐに叶えてくださって、しかも主演に選んでいただいて、驚きとうれしさの両方がありました。
――谷監督から起用された理由はお聞きしたんですか?
松田 自分で言うのも恐縮というか恥ずかしい気持ちはあるんですが……(笑)。「自分が出会ってきた中でも素晴らしい俳優さんの一人です。だから今作でもお声がけさせていただきました」とマネージャーさんを通してお伝えいただきました、
――渡辺いっけいさんとの共演で、松田さんが30年前の横田雄二、渡辺さんが現在の横田雄二と同じ役柄を演じています。
松田 僕は中学生の頃から演劇に触れていて、いっけいさんが出演する舞台も拝見していたんです。もちろんドラマや映画も観ていましたし、当時、客席から観ていたいっけいさんと同一人物の過去と未来という役で共演させていただくのは、とても光栄なことでした。お会いするまでは、とても緊張していたんですが、撮影に入って、ご本人とお話させていただくと、すごく優しくて、物腰も柔らかくて。年齢に関係なく、誰に対しても分け隔てなく、敬意をもって接してくれるんです。
――お芝居の面ではいかがでしたか。
松田 数えきれない経験を積んでいるいっけいさんですが、お芝居や作品に対しての情熱が若い俳優に負けないぐらいすごくて、僕なんかが言うのはおこがましいんですが、自分と近しいものを感じられる瞬間が多かったです。普段のいっけいさんは穏やかで慎ましい印象なんですが、撮影が始まると、自分の中でいろいろなお芝居を作って。大きい渦のように周りを巻き込むかと思えば、凪のように周りを包んでくれることもあって、お芝居の大きさが凄まじかったですし、純粋にお芝居を楽しみながら作っているのが伝わってくるんですよね。それに引っ張られて、僕自身も知らない自分が出てきているのかなと思うこともあって。いっけいさんが聞いたら、「恥ずかしいよ」と言われちゃいそうですけど、十代のときに客席から観て感じた「素敵な俳優さんだ」という気持ちは間違っていなかったと、当時の自分にも教えてあげたいです。
――同じ役柄を演じる上で、二人で話し合ったことはありますか。
松田 横田の心情を話し合うことはなくて、お互いの解釈はお芝居で出し合ったんですが、いっけいさんのご提案で、「顔や雰囲気は違えど、共通した癖があると説得力が出るから」ということで、握りこぶしを作って、頭をこずくことで無理やりにでもアイディアを出す仕草を加えようと。僕も同じようなことを考えていたので同意して、谷監督に提案したら採用されました。