北村匠海くんは最初から僕を受け入れる姿勢を見せてくれた
――映画『愚か者の身分』のマモル役はオーディションで決まったそうですが、初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。
林裕太(以下、林) 脚本と一緒に原作も読ませてもらったんですが、男くさい絆、人間が生きる上で大切な愛、誰かに何かをしてあげたいというメッセージが込められていて。それを若い人だけじゃなくて、いろんな世代の方に伝えたいなと思って、出演する意義がある作品だなと感じたんです。それにマモルという役が、役者としての僕に求められるイメージと合っているような気がして、ぜひやってみたいと思ってオーディションに挑みました。
――イメージと合っていると感じた部分はどういうところでしょうか。
林 マモルは子どもと大人の間で揺らいでいて、性格や境遇が似ているわけではないんですけど、顔の雰囲気や佇まいみたいなのがリンクしているのかなと。マモルは無邪気ではあるんですが、良いほうにも悪いほうにも行きうる危うさみたいなものがあって、そういうところが、今まで僕がやってきた役にも客観的に感じ取ってきたもので、ぴったりとハマる役なのかなと思いました。
――悪事に手を染めているとはいえ、北村匠海さん演じる先輩格のタクヤから与えられた仕事に喜びを感じるマモルは誰しも共感するところがあると思います。
林 自分が仕事を任される、大人の階段を上るという喜びは、僕自身も俳優になって仕事をもらえるようになって感じたことなので、すごく分かる感情でした。
――もともと北村さんは憧れの存在だったとお聞きしました。
林 共演が決まったときは、めちゃくちゃワクワクしました。僕は中学生の頃から、匠海くんと梶谷を演じた綾野剛さんの出演する作品を観ていたので、一緒にお芝居できること自体がうれしかったですし、一体どんな人たちなんだろうという興味もありました。
――タクヤとマモルのコンビネーションが素晴らしかったですが、すぐに北村さんとは打ち解けられたんですか。
林 匠海くんは最初から僕を受け入れる姿勢を見せてくれて。あとは僕が、いつ緊張をほどいて乗っかるかみたいなところで(笑)。勇気を振り絞って、「一緒にご飯行きましょう」と誘ったり、控室で相談事を聞いてもらったりして。それに真摯に応えてくれて、ご飯にも行ってくれて、すごく仲良くしてもらいました。
――役の関係性に近いものがあったんですね。
林 タクヤとマモルに似た関係性を築かなきゃいけないという意識はお互いにあったと思います。まず匠海くんがその関係性を作ってくれて、僕も上手く乗っかることができました。役に付いて話し合うことはあまりなくて、僕と匠海くんの関係をベースにお芝居を作っていきました。
――マモルというキャラクターをどう捉えましたか。
林 すごく強い人だなと。親に捨てられて、五人兄弟の末っ子で虐待を受け続けているという悲惨な家庭環境の中で、諦めないで自分の運命を変えたい、抗おうとする力を持っている。その生きようとする力や目の強さを意識しました。その上でタクヤとの関係性を大切にして、画面に映るものはリアルにしたいと思ったので、撮影以外の時間と本番が地続きになるようにしていきました。
――髪の色も印象的でした。
林 今までも金髪の役は多かったんですが、今回はオレンジが入っていて、より派手になっています。直前の役が坊主だったんですが、髪の色を入れると「これがマモルなんだ」と外見から役に入ることができました。