小澤さんは頼れる兄貴で、大きな背中の方です
――お二人は昨年5月公演の「たやのりょう一座第13回公演『蒲田行進曲』」で共演されています。お互いの印象をお聞かせください。
小澤雄太(以下、小澤) 透明感のある方で、見ているだけで吸い込まれるような、素晴らしい女優さんだなと思いました。
日比美思(以下、日比) 嘘くさいな(笑)。
小澤 本当ですよ!稽古に入ると、最初からセリフを入れてきて、女優さんとしてのプライドを感じましたし、本番では自信に満ち溢れたお芝居をされていたので、頼れる座長だなと思いました。
日比 まさに小澤さんも頼れる兄貴で、稽古中も明るく盛り上げてくださって、お芝居になるとピシッと締めるところは締める。大きな背中の方だなという印象でした。いつも私たちを引っ張ってくださいましたし、何よりつかこうへい作品にお詳しいので、いろいろなお話をお聞きしながら、想像を膨らませていきました。公演期間も助けられましたね。
小澤 そういえば千秋楽の日に、僕が着ていた上着を見て、日比さんが「これいいですね。着てみようかな」と言うから貸したら、「このまま着て帰ります」と本当に持って帰られたんです(笑)。
日比 お気に入りで毎日着ていました(笑)。

――二人の関係性の良さが伝わってきますね。小澤さんは早くから、つか作品に出演されているんですよね。
小澤 つかさんの1周忌にあたる2011年に、『新・幕末純情伝』に出演させていただきました。劇団EXILEの公演でお世話になっている演出家の岡村俊一さんが、つかさんのお芝居にたくさん携わっているというご縁もあって、周りにはつかさんマインドを持った、つかさんを愛する方が多くて、たくさん勉強させていただきました。
――もともと『熱海殺人事件』は大好きな作品とお聞きしました。
小澤 『新・幕末純情伝』で共演した山崎銀之丞さんが、その直後に『熱海殺人事件』に出演されていて、観に行かせていただいたんです。それを観て、あまりの面白さに衝撃を受けました。まさか後に自分が『熱海殺人事件』で主演を務めるとは思わなかったのですが、今回演じる木村伝兵衛がどういう役なのかを知りたくて、銀之丞さんにいろいろ聞いてしまいました。
――日比さんは前回、『蒲田行進曲』のオファーがあった時は、どんなお気持ちでしたか。
日比 演出のこぐれ修さんは、俳優としても演出家としても、たくさんのつか作品に関わってきた方です。銀ちゃん役の田谷野亮さん、ヤス役の小谷けいさんも、2019年の初演に続く続投。私は、つか作品はもちろん、紀伊國屋ホールの舞台に立つのも初めて。そもそもスタートダッシュが皆さんと違うのでプレッシャーはありましたし、這いつくばる気持ちでやらないと駄目だなという思いがありました。ただ前回は、ひたすら皆さんの背中を追いかけて走り切るので精一杯でした。キャストの皆さんに支えていただいて、ゴールしたのも気づかないぐらい走り切って。でも本番中に出てくる妙なアドレナリンに、皆さんが「つか作品はクセになる」と仰っていたのが分かった気がして。いつかまた出演したいと思っていたので、今回のお話をいただけてうれしかったですね。
――小澤さんは思い入れの強い『熱海殺人事件』のオファーがあった時のお気持ちはいかがでしたか。
小澤 大好きな作品だからこそ、正直、自分にできるのかどうかは分からなかったですし、不安も大きかったです。ただ、キャリアを重ねて中堅の立場になってきて、40歳になる節目でやるにはふさわしい作品だなと。自分への挑戦でもあるし、今後も演劇に挑戦していくという意味でも試されているような気がして。絶対に成功させようと気合いも入りましたし、やりきった後の自分を見てみたいという気持ちで稽古に取り組んでいます。
