13年8カ月にわたる活動のフィナーレを飾るラストライブ

「人間50年 アイドル5年 尾張名古屋にしゃちほこあり」というキャッチフレーズを掲げ、チームしゃちほことして2012年4月7日に路上デビューを果たしたのがこの名古屋城だった。いわば彼女たちにとってのはじまりの場所で、13年8カ月にわたった活動のフィナーレを飾る。その大切な瞬間を見逃したくないと、真冬の夜の野外イベントにも関わらず3,200人を越えるタフ民(TEAM SHACHIファンの呼称)が集結した。

凍てついた夜空に名古屋城の天守閣が眩ゆく浮かび上がる中、「人間50年 アイドル13年と8カ月 尾張名古屋にTEAM SHACHIあり」とナレーションが流れ、チームしゃちほこ時代の懐かしい出囃子が鳴り始めると場内のボルテージが一気に高まる。ステージに秋本帆華、咲良菜緒、大黒柚姫、坂本遥奈が登場し、ラストワンマンライブがスタートした。

幕開けの曲は、今年9月にリリースされた最新にして最後のEP『DERA Journey!!!!』収録の「駆け抜けてスターマイン」。チームしゃちほこ~TEAM SHACHIに数多くの名曲を提供してきた浅野尚志の作詞・曲によるこの曲は、デビュー当時から彼女たちの苦悩に寄り添い、成長を見届けてきた浅野ならではのエールが込められた1曲だ。シャチにまつわるキーワードが散りばめられた歌詞に、数々の思い出が走馬灯のように流れていく。そこから一気に13年前に戻り、チームしゃちほこの初音源にカップリングされた「ごぶれい!しゃちほこでらックス」を披露。続いて、彼女たちが「アオキーズ・ピザ」のイメージキャラクターに起用された際につくられた「ピザです!」では、ピザコールで大いに盛り上がり、そのまま「沸き曲」へとなだれ込んで冬の名古屋城を沸騰させていく(ちなみに、楽曲中恒例のクイズコーナーでは「デビュー当時6人組だったチームしゃちほこ。メンバーでないのは? A.ゆず B.ちゆ C.ミネヒコ」という問題が出された。正解は無論「C」店長!)。

「最終SHOW いよいよ始まりましたー!」(秋本)と高らかに宣言すると、「泣いても笑っても今日がラストの日ということで、みなさん楽しい思い出を作りましょう!」(坂本)、「寒さなんか吹っ飛ばそうぜ!」(秋本)、「今日はみんなで全て出し尽くしましょう!」(咲良)、「今まで生きてきた中で一番最高な1日にしましょう!」(大黒)と、今日のこの日にかける意気込みとともに、ライブではこれが最後となる自己紹介を披露した。そして「名古屋を詰め込んだ、名古屋メドレー!」と題して「首都移転計画」「いただきっニッポン!~おみそれしましたなごやめし~」「尾張の華」「完全満足NGY」「まつりびと~カキツバタ~」と、シャチのレパートリーを彩った新旧の名古屋ソングを立て続けに歌い、名誉名古屋観光特使としてのプライドを見せつけた。

「みんなでたくさんのアサガオをステージに咲かせましょう!」(坂本)と「アサガオ」で爽やかな可愛らしさを鮮やかに振り撒いたかと思えば、「名古屋城、ここからまたギア上げてくよ!」(咲良)と煽って「愛のニルバーナ」でカオティックな熱気で包み込み、「JUMP MAN」では名古屋城を揺らすほどのジャンプ大会へと巻き込み、さらに「Rainbow」では思いっきりキュートな魅力を振りまいて……と、多彩なアプローチでオーディエンスの心をがっつり掴んで離さないパフォーマンスからは、ライブ巧者の底力が感じられた。

アッパーな楽曲でほぼノンストップに盛り上げてきたメンバーたちだが、前曲「Rainbow」で流れていたホームパーティの映像から続きで「みんなペンライトを消してみて」とオーディエンスに呼びかけると、ステージ横のスクリーンには4本のロウソクが立ったケーキが映し出され、「せーの」で息を吹きかける映像が流れた。

会場じゅうが暗闇に包まれ、再び照明が灯されると、メンバーはそれぞれステージ下のお立ち台に移動していて、そのままチームしゃちほこ時代に発表されたウインターソングの名曲「Sweet Memories」をしっとりと歌い上げる。“もし二人で描いた証が溶けて消えたって構わない だって心は繋がっているから” “この絆は時を超えて永遠になる”というフレーズの一つ一つに胸を締め付けられる想いがしたのは、きっと筆者だけではないだろう。そして「キラキラした大切な思い出つくっていくよー!」(大黒)と「パレードは夜空を翔ける」を情感たっぷりに歌い、冬空に高く美しく響かせた。

「最終SHOW、楽しんでますかー? このまま後半戦いっちゃうよ!」と秋本が語りかけると、ステージを駆け回りながら「さあ準備はいいかー!」と煽れば、客席から「イエッサー!」とレスポンスが返って代表曲の一つ「乙女受験戦争」へと突入。地鳴りのようなコールが名古屋城に轟き、盛り上がりはさらなる高みへ。落ちサビの変顔にも全力で挑んだシャチは、続いて間髪入れずに「そこそこプレミアム」を投下。スクリーンに大きく映し出されるメンバーたちの上気した笑顔からは、このライブを一瞬たりとも悔いのないように、楽しんで歌い踊っている様が直球で伝わってくる。問答無用にカッコいいロック・チューン「FANTASTIC MIRAI」で“人生全てを捧げる覚悟”と“ドがつく根性”をまざまざと見せつけてタフ民たちを熱狂の坩堝へ引き連れたかと思いきや、「まだまだ物足りなさそうですね、みなさん!」(咲良)と勝気な煽りでさらに焚き付けるとヘヴィロックな「ULTRA 超 MIRACLE SUPER VERY POWER BALL」のヘドバンで名古屋城が圧巻の光景となる。会場じゅうが頭を振りすぎてふらふらになっても、容赦なく「タフ民、まだまだ行けるよね!」(秋本)と叫び、TEAM SHACHIにとってのはじまりの一曲となった「DREAMER」を高らかに歌い上げて、シャチメンとタフ民の絆をさらに強く結んだ。そして「名古屋城、まだまだ沸くぞー!』(大黒)と叫び、いよいよ「抱きしめてアンセム」の出番がやってきた。ステージ上のメンバーもフロアのオーディエンスも、どちらも顔を地面に向けて一心不乱に踊りまくる、ある種異様な光景もこれが最後。そんな寂しい想いを吹っ切るかのように、会場全体が全身全霊で踊り狂う。真冬の名古屋城にうっすらと湯気が立ち上ったところで、とうとう本編ラストの曲へ。チームしゃちほこ時代の2017年に作られ、その後TEAM SHACHIに改名してからも大切な1曲として歌い続けてきた「START」だ。スクリーンには歌詞が大きく映し出され、印象的なフレーズが決して平坦ではなかったグループの道のりと重なる。その一つ一つの言葉を、秋本、咲良、大黒、坂本の四人が噛み締めるように歌っていく。“あの日の別れ あの日の悔しさ 乗り越えてここにいる”と、はじまりの場所でありフィナーレの場所ともなった名古屋城の、その地面に拳を叩きつけてシャウトする姿に、TEAM SHACHIの完成形を見た。そしてここから“僕とキミの明日が始まる”と、未来へ進むファンファーレのようなメッセージを届けて、「TEAM SHACHI 最終SHOW ~晴れ晴れ~」の本編は終了した。

熱気に包まれたまま長く続くシャチコールに応えるように、しばらくするとTEAM SHACHIのライブで馴染みのオープニングSE「OVERTURE〜ORCA〜」が流れた。そしてメンバーがステージに戻ると、秋本がライトアップされた名古屋城の方を指差し、「見てー! あれは金ピカに光る私たちのシンボル! しゃちほこよー!」と叫び、チームしゃちほこの記念すべきデビュー曲「恋人はスナイパー」を歌い始める。スクリーンにはこの曲を歌った数々のライブのシーンが流れた。その時々のライブの思い出が蘇ってくるのと同時に、デビュー当時のまだ中学生だった幼い表情から近年の大人びた表情まで、メンバーそれぞれの美しく成長した魅力/変わらないのびのびした魅力を感じさせる映像であった。そんな感慨にふけっていたところに、秋本が「みんなずっと見てるからー!」と(いつもとはちょっと変えた)決め台詞を叫ぶと会場じゅうのタフ民の心が撃ち抜かれた。