好きなものに囲まれた空間で、ぬくぬくと映画を見られたら満足

――蓮佛さんが思い描くスイート・マイホームはどんなものでしょうか。

蓮佛 それほどこだわりはないんですけど、間取りは四角で、余計な柱など障害物のない部屋がいいです。本当に私は家が大好きで、仕事がないときは基本引きこもりで、ずっと家にいるんです。好きなものに囲まれた落ち着く空間で、ぬくぬくと映画を見たりできれば満足で、それ以上は望みません。だから、すでに今の家で理想が叶っているのかもしれません。

――では理想の暮らしはありますか。

蓮佛 願わくば、朝早くに気持ちよく起きて、ちゃんと朝ご飯を食べて、お散歩などの朝活をして、みたいな生活をしたいんです。でも夜型で朝起きられないのが昔からの悩みで。しかもロングスリーパーなので、半ば諦めているんですけど……。

――早く寝ても起きられないんですか?

蓮佛 そもそも夜遅くまで起きています(笑)。コロナ禍でホームステイになったときに、ちゃんとしようと思って、早く寝る努力はしたんです。ところが早く起きても、お仕事が休みだと、昼まで寝ようと二度寝しちゃって、結局は同じことでした。

――家にいるときは、どう過ごしていることが多いんですか。

蓮佛 本当にダラーッとしながら映画やSNSを見ています。ここ数年ずっとやっているのは、インスタで会ったこともない子どものアカウントをフォローすることなんです。

――それだけ聞くと、ちょっとホラー的なものを感じますが(笑)。

蓮佛 『スイート・マイホーム』のお話をした後だから、余計にそう感じますよね(笑)。知らない子どもの成長を見届けて、こんなこともできるようになったんだとうれしくなったりして。それも怖いですかね(笑)。

――まあ微笑ましいですよね。

蓮佛 最近で言うと、海外で農業をやっているお宅のインスタを見つけて、牛の乳搾りをしたり、チーズを作ったりと、生活の一部を切り取った動画も見ていて。その暮らしぶりを見ていると癒されますね。自分の生活とかけ離れた暮らしをしている人たちを見ると、世界って広いなと感じるんです。

――完成した『スイート・マイホーム』を見て、どんな印象を持ちましたか。

蓮佛 私自身、撮影中は全く気づかなかったんですけど、完成した作品を見て、こんなに表情が印象に残る映画ってなかなかないなと思いました。特に私は賢二を演じた窪田さんの表情に心を奪われました。カメラの寄りのタイミングとかも絶妙で、目線、表情の一つひとつに意味があるんですよね。マイホームを手に入れてうれしい表情とか、何かがおかしいと恐怖におののく表情とか、いろんな表情が見られる。もちろん窪田さんに限らず、登場人物全員の表情が印象的で。結局、人間の本質は顔に出るんだなと改めて感じました。

Information

『スイート・マイホーム』
全国好評公開中!

窪田正孝
蓮佛美沙子 奈緒
中島 歩 里々佳 吉田健悟 磯村アメリ
松角洋平 岩谷健司 根岸季衣
窪塚洋介
監督:齊藤 工
原作:神津凛子「スイート・マイホーム」(講談社文庫)
脚本:倉持 裕
主題歌:yama「返光(Movie Edition)」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
音楽:南方裕里

極寒の地・長野県に住むスポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘たちのために念願の一軒家を購入する。“まほうの家”と謳われたその住宅の地下には、巨大な暖房設備があり、家全体を温めてくれるという。理想のマイホームを手にいて、充実を嚙みしめながら新居生活をスタートさせた清沢一家。だが、その温かい幸せは、ある不可解な出来事をきっかけに身の毛立つ恐怖へと転じていく。差出人不明の脅迫メール、地下に魅せられる娘、赤ん坊の瞳に映り込んだ「何か」に戦慄する妻、監視の目に怯えて暮らす実家の兄、周囲で起きる関係者たちの変死事件。そして蘇る、賢二の隠された記憶。その「家」には何があるのか、それとも何者かの思惑なのか。最後に一家が辿り着いた驚愕の真相とは?

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蓮佛美沙子

1991年2月27日生まれ。鳥取県出身。映画『犬神家の一族』(2006/監督:市川崑)でデビュー。『バッテリー』(2007/監督:滝田洋二郎)でヒロインを演じ、『転校生 -さよならあなた-』(2007/監督:大林宣彦)で初主演を務め、キネマ旬報ベスト・テンと高崎映画祭で新人女優賞を受賞。主な出演作に、『RIVER』(2012/監督:廣木隆一)、『白ゆき姫殺人事件』(2014/監督:中村義洋)、『記憶屋 あなたを忘れない』(2020/監督:平川雄一朗)、『天外者』(2020/監督:田中光敏)、実写版『鋼の錬金術師 』(2017・2022/監督:曽利文彦)など。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI