いつもは演技にダメ出しするマネージャーが「よかったよ」と褒めてくれた

――オファー当時の心境から伺います。

瀬戸啓太(以下、瀬戸) 演じた森瀬京は、ストーリーの核になる役柄だと感じました。物語のキーマンを演じた経験はほぼないので貴重でしたし、プレッシャーも大きかったです。だから、撮影に向けて、過去にないほどの準備をして臨みました。

――具体的に、どのような準備をしたのでしょうか?

瀬戸 キャストの1人である、仲のよい栗野宗一役の縣(豪紀)くんにプライベートで「本読みをしよう」と誘ったり、それができる現場はなかなかないので新鮮さもありました。自分にない感覚を持ち合わせているキャラクターだったので、自分にとっての「非日常」を考えたのも本作ならではの準備でしたね。例えば、体に傷を負うシーンもありますけど、実際に傷つくわけにはいかないけどそのときに「自分ならどうする」と考えて。自分にとって「嫌なことは何だろう。でも、それを快楽と捉えるなら…」と、頭の中でシミュレーションしました。

――演技の手ごたえは?

瀬戸 「やってやったぜ!」という感じです(笑)。完成した作品を見て、いつもは口酸っぱくダメ出しをしてくるマネージャーさんが「よかったよ」と褒めてくれたんですよ。自分にとっての全力を出し切れたので、みなさんに「早く観てもらいたい」と思ってます。

――撮影当時、現場で印象に残った出来事は?

瀬戸 人を突き飛ばすシーンですね。普段は人に強く当たろうとは思わないし、心が痛む部分はあったんですけど、演じる上では清々しくて気持ちよかったです。現場では、旭正嗣監督の温かさも印象に残りました。こっちの提示する演技を、優しい気持ちで見守ってくださったんです。ファンのみなさんを前にした公開直前記念イベント(2023年5月)で「今日は、役柄と本人の中間でイベントに臨んでほしい」と言われたとき、「なるほど。そういうことだったのか」と思って。撮影現場でもそのスタンスでいてくさったんだと分かり、答え合わせができました。

――ちなみに、本作は人間の「二面性」がテーマですが、普段の瀬戸さんは「二面性」をお持ちですか?

瀬戸 穏やかに見えて、本質はちょっときついのかもしれません(笑)。そのタイミングははっきり分かるんですよ。ゲームをプレイ中に自分のキャラクターが倒されると腹を立ててしまうし、「悔しい。もう1回!」となってしまいますね。我が強いので悔しいときは言葉が強くなってしまうときもありますけど、にこやかに過ごしていることも多いので、やっぱり「二面性」はあると思います。