自分なりの表現をしたくてポエトリー・リーディングを始めた

――対称形の図形を並べて、そこに詩をはめる「図形詩」が10篇収録されています。こちらは文芸誌『すばる』の連載「シンメトリウム」からセレクトされたものですが、どういう経緯で始めた試みなのでしょうか。

森 先ほどもお話しした通り、自由詩は縛りがないと、逆に形にしにくいので、新しい縛りを作ったんです。まず図形を決めて、ちゃんと縦読みできるように書いていくんですが、形によって字数も決まってくる。たとえばロケット型の図形を使った「探求」の出だしは、“炎”“尚も”“噴射し”と1文字、2文字、3文字で改行されて角度ができていく。途中で意味が切れたらつまらないので、ちゃんと1行ずつ完結するように考えるんだけど、そういうことをやりたがるのは、ちょっとした馬鹿なのかもしれない(笑)。

――「浮遊」はデザインと言葉の意味が融合して、本当に文字が浮遊しているように見えました。

森 「浮遊」は、浮かぶことが一番難しいけど、浮かぶように生きていければいいなというテーマと、図形がリンクすることで、詩にプラスして面白さが伝わるように書きました。この連載は4年間ぐらい連載していて、当然、毎回違う図形だったんですけど、企画倒れもあって(笑)。今回は珠玉の図形詩を選びました。

――「悪魔にされた天使」「時計の針に挟まってしまった天使」「瞳を閉じて青空を見ろ」の3篇は、森さん名義でリリースした布袋寅泰さんプロデュースのシングル『悪魔にされた天使』(1997)にも収録されています。「悪魔にされた天使」はしりとり形式で、布袋さん、秋吉久美子さん、森さんの3人が、“「天使」→「天真爛漫」→「万華鏡という劇場」→「情熱という光」”といった風に言葉を読み繋いでいくユニークな試みの作品でした。

森 僕は、たとえば「感情」→「情熱」といった具合に、一文字以上を使うしりとりが好きなんですけど、どうせなら同じ“情”ではなく、違う漢字を使いたい。やっぱり縛り好きなんですよね。その、しりとりを2人の男と1人の女で読むことで、また違った意味合いが出てくる。それを音楽にのせることで、メロディーも絡んで立体的になっていく面白さがあると思って制作しました。

――森さんはポエトリー・リーディングも精力的に行い、1997年には多彩なアーティストが参加したポエトリー・リーディング・アルバム『TOKYO POETS』もプロデュースします。ポエトリー・リーディングを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

森 本来なら自分が歌えたらいいんです。歌う試みも何度かしたんですけど、自分が納得できるような結果が生まれなくて。でも自分なりの表現をしていきたいというところで、自作の詩を読むことを始めようと。だから詩集のために書くのではなく、まずライブをやりたくて、歌詞ではなくて詩を書き始めました。ライブをやっていくうちに溜まってきた詩を詩集にしたのが『天使』だったんです。

――ポエトリー・リーディングを前提に詩を書くこともあるのでしょうか。

森 自分が読むことを前提に書いた詩もあるんですが、それほど多くはないですね。基本的に詩は、それぞれの心の中で文字を読むわけじゃないですか。なので、韻を踏んだり、行の長短でリズムを出したりと、常にグルーブを意識して書いています。それが結果的に、読むことにも繋がっていると思います。