腹を括って「これしかない」「これを出すしかない」という緊張感があった

――劇団ひとりさんのアドリブも随所にちりばめられています。

高橋 あの方はやっぱり僕らとは別の角度、面白い方に行くから、素で笑いそうになるのを我慢した場面もありました。

――観ている側も展開が読めないので、出演者と同じように緊張感が最後まで途切れることなく楽しめました。

高橋 振り返ると、ちょっと段取りを追ってしまったところもあるので、お恥ずかしい限りです。でも、自己弁護や嘘をつく場面が多いから、こちらのお芝居が上手くはまってくれているという解釈もできるかなと。腹を括って「これしかない」「これを出すしかない」っていう緊張感があって、それも面白かったです。ただ、本当の嘘つきってもっと上手に嘘をつくんだろうなとは思いました。

――高橋さん自身は嘘をつくのは苦手ですか?

高橋 苦手……だと思います。すごく饒舌になっちゃうから、あまり好きじゃないですね(笑)。

――そういった場面でも終始落ち着いて演技をされている印象だったので意外です。

高橋 スタッフにもそう言われるんですけど、その瞬間ごとにいろんなことを考えていました。ずっと機嫌が悪そうな顔をしながら(笑)。

――お話を伺うと高橋さんの新たな一面が垣間見える作品と言えそうです。では、映画の見どころについても聞かせてください。

高橋 役者が剥き身にされている状態で、それを必死に防御している。とても臨場感があるので、観てくださる方も出演者とその密室に居合わせているかのように、先の読めない展開をものすごく近い距離で感じられる、そんなスリルを味わえるかもしれません。

――ちなみに高橋さんは完成した映画を観てどう思いましたか?

高橋 「完パケができたから、試写に先駆けて観てくれ」と映像を渡されたんですけど、はじめの10分くらいで当時の重苦しさがよみがえってきて耐えられなくなって観るのをやめてしまいました(笑)。だから、面白いかどうかはもう観てくださるお客様に任せます。僕はまだ苦しさの方が先行してしまうので、お客さんの立場にはしばらく立てそうにないです(笑)。