『水深ゼロメートルから』は力をもらえる、私たち自身も応援したい気持ちになる映画
――ほぼプールでのワンシチュエーションで、舞台空間に近いところもあったかと思いますが、演じる上で舞台と映画で大きく違うと感じた部分はありますか。
濵尾 舞台はお客さんに向けて感情を発信するので、一番奥の人まで届くように演技をしていたんですけど、映画では話す相手に集中して、なるべくカメラも気にしないで、リアルを意識して演じるようにしていました。
――長回しが多くて、引きの画(え)も多かったので、緊張感もあったのではないでしょうか。
濵尾 山下監督が私たちに任せてくださっていたので、そこまでカメラを意識しませんでした。一度やってみてから、「ここは、こういうほうがいいんじゃないか」と付け足してくださるんです。ココロが「プール掃除なんてやってられない!」みたいな感じで箒を投げ捨てて日陰に行くシーンなどは山下監督の提案です。
――映画でも舞台同様、メインキャスト陣で話し合いはあったんですか。
濵尾 部屋は違うんですけど、同じ建物内に泊まって、みんなで大浴場に入るぐらいキャスト全員の仲が良くて。ご飯も一緒に食べたんですが、そのときに台本について話して。山下監督も「ここはどう思う?」とか「これだとやりにくいかな?」みたいな感じで寄り添って話してくださったので、それぞれの意見を言いやすかったです。寝る前には方言指導の方の部屋に集まって、みんなで方言を教えてもらったりしながら過ごしていました。
――特に苦労したシーンは?
濵尾 体育教師の山本先生と気持ちをぶつけ合うシーンです。ココロは胸の中に溜め込んでいたものを抱えきれなくなって、それを言わないと自分を保てなくなるから山本先生に感情を爆発させます。その気持ちを作るために生理中のことを思い出しながら、ココロになり切りました。
――完成した映画を観たときの印象はいかがでしたか。
濵尾 ついに映画になったんだといううれしい気持ちと、舞台とは違ってカット割りされているので、ここをピックアップするんだというのが面白くて新鮮でした。音楽も入ったことで、撮影現場で感じていたことよりも感動が大きくて。力をもらえる、私たち自身も応援したい気持ちになる映画だなと思いました。
――映像と舞台では、それぞれやりがいも違いますか。
濵尾 そうですね。舞台は笑い声だったり、鼻をすすっている音だったり、反応をその場でいただけるので楽しいですし、一回一回の公演で発見があって、成長することができるので経験値も上がります。稽古期間も長いので、役を突き詰められるのもやりがいがあります。
――映像はいかがですか。
濵尾 映像は舞台のように大きい声を出すなどお客さんを意識しすぎる必要がないので、ナチュラルに、その場で感じたことを受け止めて返すみたいなリアルなお芝居ができます。そうすると私自身にどんどん近くなっていく感覚があって、それが面白いなと思います。
――先ほど舞台の経験を積むほど緊張するというお話がありましたが、特に緊張する要因はありますか。
濵尾 リアルタイムで演じるので、ハプニングが起きたときに動揺もお客さんに伝わってしまうんだと思って、それが怖くて余計に緊張していたんですよね。ただ昨年11月に出させていただいた舞台『ハロー、妖怪探偵社』がコメディチックな作品で、照明が落ちてしまうハプニングがあったんです。私たちはびっくりしちゃったんですけど、お客さんは「特別な公演を観られて良かった」と喜んでくださって。たとえハプニングが起きても、上手く話しに戻しさえすれば大丈夫なんだと思えることができて、ちょっと成長できました。
――改めて映画『水深ゼロメートルから』の注目ポイントをお聞かせください。
濵尾 全部が注目ポイントなんですが、プールに制服、蝉の声、野球部の声など、全ての要素が綺麗にマッチしているので、ぜひ映画館で観てほしいです。また、みんなの心情が深く描かれているので、一人ひとりに注目していただき、それぞれにフォーカスを当てて観てもらえると絶対に面白いはずです!