インティマシー・コーディネーターのおかげで濡れ場を楽しく演じられた

――緊張感のあるシーンの連続ですが、現場の雰囲気はいかかでしたか。

中﨑 基本的にほのぼのしていたんですが、メインキャストそれぞれ緊張感のあるシーンがあるので、そのシーンの前は集中しているから、そっとしておこうと。逆に芝居について意見を言い合うこともあって、お互いのモチベが上がるような会話をすることも多かったです。

――昨今、映像業界ではセンシティブなシーンに関して様々な意見が飛び交っていますが、濡れ場のシーンはどのような環境で撮影されたのでしょうか。

中﨑 インティマシー・コーディネーターの方が入ってくださって、すごく気を遣ってくださいました。常に嫌なことがないか確認してくださいましたし、「こういう体の使い方のほうが、ラインが綺麗に見えるよ」といったアドバイスもしてくださって。嫌な気持ちになることもなかったですし、もともとグラビアをやっていたので、綺麗に撮っていただけるのが楽しかったです。

――グラビアの経験が活きた部分もありますか。

中﨑 「背中が綺麗」と褒めていただいたんですが、グラビアをやっていたから、どのくらい体を反らせばくびれが良く見えるかみたいなところは、自然と染みついていたのかもしれません。

――男性同士のラブシーンもありますが、全体を通して綺麗な印象でした。事前に、こういう映像になるというのは聞かされていたんですか。

中﨑 こういう感じで撮るみたいなのは聞かされていなかったんですが、撮影中にモニターを通して質感などを見ていたので、綺麗に撮ってもらっているのは伝わってきました。

――特に苦労したシーンは?

中﨑 園田と二人きりのときに、リビングで契約書を見せて怒るシーンがあるんですが、その温度感が難しくて……。怒りながらも、光に対しての思いを隠し持っているみたいなニュアンスが欲しいと言われたんですが、頭では理解できても、上手く表現できなくて。やり過ぎて、「一旦落ち着いて」とも言われましたし、そのシーンが個人的に一番カットを重ねました。自分の中でも、このシーンが山場という気持ちもあったから、宝来監督とも何度も話し合いました。

――共演者の方の印象をお聞かせください。園田を演じた鈴木志遠さんはいかがでしたか。

中﨑 鈴木さんは普段から不思議なオーラを出していて、何を考えているかよく分からなくて、園田そのままでした。かと思えば急に屈託なく笑ったりもするんです(笑)。誰よりも掴みにくいけど、現場を癒してくれる存在でもあって、空気を読むのが上手い人だなと。お芝居に関しても、宝来監督に言われたことを、自分の中で解釈してパッとできちゃう器用な役者さんです。

――光役の門間航さんはいかがでしょう。

中﨑 鈴木さんに負けず劣らず個性的な方で、普段からエキセントリックな感じがあって、光に通じるところがあります。誰とでも仲良くなって、ずーっと喋っていたかと思えば、急にブツブツとセリフを言い出したりと自由気ままでした(笑)。

――最後は香織役の田中珠里さんについて。

中﨑 珠里ちゃんは私と同じくアイドルグループ経験があるので、すぐに打ち解けることができましたし、マネージャーさん同士も意気投合していました。ただ共演シーンが少なかったので、たくさんお話しできたのは最後の二日間だけで。最終日は一緒に写真も撮ったんですが、もっと話したかったです。

――現場の雰囲気が良かったのが伝わってきます。

中﨑 スタッフさんを含めて、すごく温かい現場だったので楽しかったです。

――完成した作品を観た感想をお聞かせください。

中﨑 演じていたときはハッピーエンドだなと思ったんですが、完成した作品を観たら、「園田も弥生もどこかで踏みとどまれたよね」と感じる瞬間が幾つもあって。客観的に観たらバッドエンドなんだと感じました。視点によって印象が違うんですよね。『卍』は昭和初期の小説ですが、関係性や時代設定を現代にアレンジしているとはいえ、普遍性のある内容で、いつの時代も愛の形は変わらないし、当時よりも多様性が認められた今だと、また違った受け入れられ方をするんだろうなとも感じました。