濱田龍臣くんに、いろいろなことを教えてもらった

――お芝居の軽さを掴めたことで、ナン丸への理解度も深まったのでしょうか。

細田 それはありました。撮影前半でナン丸を自分の中で落とし込めたので、その後、周囲に流されていたナン丸が、後半になるに従って、自分の中に確固たる芯を持っていくところは作りやすかったです。龍臣くんや木竜さん、桜木知子役の西畑澪花さんなど、丸神ゼミの方々が気遣ってくれて、僕が考える時間を作ってくださったのも助けられました。

――物に触れずに穴をあける超能力を発現するシーンはどのように撮影したんですか。

細田 棒に丸い発泡スチロールが刺さっているものがあって、それに向かってお芝居をしました。徐々にナン丸の球体は大きくなっていくので、発泡スチロールの大きさも4種類あって、まだ超能力を使いこなせていないときは小さいもので、そこから徐々にサイズが大きくなっていきました。

――ナン丸を作り上げていく上で相談した方はいらっしゃいましたか。

細田 やっぱり役のことは監督と話す時間が一番多かったのですが、今回は山本晃久プロデューサーが現場にいらっしゃったので、ナン丸の話も含めて、いろんなお話をさせていただきました。僕は物作りに対する興味が強いので、テレビにおける視聴率が配信ドラマだと、どういったところに数字として出るのか、プロデューサーさんが現場に来たときはどういう見方をしているかなどをお聞きしました。

――俯瞰して現場を見ているんですね。

細田 演者が見る現場の見方と、スタッフさんが見る現場の見方は違うと思うんです。だから今回はスタッフさんとご飯に行って、お話しすることもありました。俳優が現場でできることは限られていますし、僕のような22歳の若造が、現場に対して「こうしましょうよ」と言うのはちょっと違うと思うんです。ただ思ったことがあったら、正しい順序で伝える必要があることも身に染みて分かっているので、いろんな方々のお話を聞きつつ、自分に何ができるかを考えていました。

――座長としての責任感もあったのでしょうか。

細田 みんなを引っ張る力があって、全体的なものを持ち上げる技量のある人こそが、座長という言葉が似合うんだと思います。僕の性格上、座長っぽく振る舞うと破綻するのは目に見えて(笑)。年齢的にも、まだまだ早いと頭では理解しているんですが、これだけ素晴らしい作品とスタッフさんとキャストの皆さんが揃った中、真ん中でやらせてもらえることを思うと、この現場、この作品のために少しでも自分ができることはないかと考えるんですよね。それが僕としての座長の在り方かもしれないですし、良い意味でも悪い意味でも生意気に見られる可能性もあります。だから今でも、次に主演をやらせてもらえる機会があったときに、どうすればいいのかという迷いはあります。

――共演者の方々との雰囲気はいかがでしたか。

細田 丸神ゼミの皆さんとは常に和気あいあいとしていて、仲良くなり過ぎたぐらいで(笑)。そこに東丸幸子役の藤野涼子さんも加わって、撮影の合間などは写真を撮りまくっていましたし、楽しく撮影させていただきました。東丸幸子の兄・東丸高志を演じた上杉柊平さんとは、ナン丸との関係性そのままに、仲が悪い訳ではないんですけど、一定の距離感があって。上杉さんがいろいろ気を配ってくださったと思うのですが、その距離感は心地よかったです。

――こうしてお話を聞いていると、チーム全体の結束感が伝わってきます。

細田 チームで作っているなと感じることは多々ありました。後半は地方ロケだったので、みんなでご飯に行けたのもうれしかったです。そこで、いろいろ話すこともありました。一度、山本プロデューサーが監督、チーフの撮影部さん、キャストが集まる食事会をセッティングしてくださったんです。そのときに面白かったのが、龍臣くんは技術的なことなど仕事の話をする一方、監督や木竜さんは他愛もない話をしていて。僕はその中間にいて、真面目な話とリラックスした話のどちらにも参加しました(笑)。食事会が終わった後は、改めて龍臣くんと話して。カメラの位置や見え方など、いろいろなことを教えてもらいました。