悪役といえども、自分の中に正義はある

――仲さんが出演しているNetflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』(以下、『忍びの家』)が、世界中でヒットしていますね。

仲万美(以下、仲) うれしいです!賀来(賢人)くんが主演と共同プロデュースを務めて、キャスト陣には名だたる方たちがたくさんいて、スタッフさんも超一流の方ばかりで。最初からコケる訳がないというのは分かっていたんですけど、正直、配信が始まるまでは不安でしたね。この並びの中にいると、「この女は誰?」と思われないか心配だったんです。でもSNSなどを観ると好意的な意見が多くて、自信になりました。

――どういう経緯で出演が決まったんですか。

仲 オーディションです。大体のストーリーと、Netflixさんで配信されるのは教えていただいたんですが、ここまで大きい作品だとは思っていなかったです。

――どんなオーディションだったんですか。

仲 20~30人ぐらい女性がいて、最初にお芝居の審査をやって、次にアクションの審査に移りました。その場でアクション部の方が殺陣を幾つか教えてくださって、それを実際にやるんですが、その場にはデイヴ・ボイル監督もいらっしゃいました。

――どうして自分が選ばれたと自己分析しますか。

仲 それが分からないんですよ。殺陣の経験も初めてでしたからね。「キックボクシングが趣味です」とか、「〇〇という作品で殺陣をやってました」と一人ひとりアピールポイントがあったんですけど、私だけ「ダンスしかしたことがなくて、他は経験ないです!」と。そこで取り繕っても仕方がないので、「体は動くと思います!」みたいな。ずっとダンスをやっているから、ある程度は動ける自負はありましたからね。いざアクションと殺陣をやってみたら、とても楽しくて。「走った後に飛び蹴りしてください」とか、実際に刀を持って、「この人を斬ってから、この人を斬る」とか。いろいろアクション部の方に教えていただいたんですが、他の候補者の方はオーディションですから「はい!」としっかり返事をするんです。でも私は楽しくなっちゃって、「うぉー!」とか「かっこいいですね!」とかフランクに話しかけて(笑)。それが良かったのかは分からないですけど、結果合格させていただきました。

――心底から殺陣やアクションを楽しむことができたんですね。

仲 デイヴ監督からも幾つか要望があって、たとえば「誰よりも低い体勢になってみて」と言われたときに、猫のように床すれすれの状態で構える体勢もすんなりできたので、そこも評価してもらえたのかもしれません。

――一般的な連続ドラマよりも、撮影までの準備期間が長かったそうですね。

仲 出演が決まって1ヶ月後ぐらいに殺陣の稽古が始まって、2か月ぐらいみっちりやりました。毎回稽古が楽しくて、贅沢な時間でしたね。本編では使わないけど、いろんな戦い方を学びましょうということで、殺陣の型を幾つも教えてもらいましたし、1対1で戦うシーンのある俵凪役の蒔田彩珠ちゃんと一緒に練習もしました。

――殺陣ではダンス経験も活かされたのではないでしょうか。

仲 それは大きかったですね。あと私は2年ぐらい前から習い事で日本舞踊をやっているんです。どちらも腰を落とすのが動きの基本で、しっかりとした型もあるので、共通点も多かったです。

――日本舞踊はどうして始めたんですか。

仲 『忍びの家』より前に、時代劇の舞台をやらせていただく機会があって。そのときは殺陣も踊りもなかったんですが、私の役が公家の出のお母さんだったので、お着物の捌き方が上品で美しくなきゃいけないなと思ったんです。そもそも私の祖母と母が日本舞踊をやっていて、私も小さい頃からお着物を着慣れていたんですよね。日本舞踊は今も月に2、3回ペースで通っています。

――眉毛をなくしたのは、『忍びの家』のためですか?

仲 それも、たまたま別のお仕事でブリーチをしていて、薄い眉毛のまま『忍びの家』のオーディションを受けたんです。その印象が強かったみたいで、衣装やメイクを決めるときに、「オーディションのときに眉毛なかったよね?」と言われて。あとフィッティングはすっぴんなので、完全に眉毛のない状態だったんですが、そのときにデイヴ監督から「眉なしってどうかな?」という提案があって、「大丈夫です!」と。「毎回眉毛を消そうね」と言ってくださったんですが、染めるのには慣れていましたし、『忍びの家』に賭ける気持ちが強かったので、撮影期間の半年間は染め続けました。

――ご自身が演じた“あやめ”にはどんな印象を受けましたか。

仲 忠誠心はあるけど、冷徹でミステリアス。ただ過去を辿ると、どうしてこうなったのかという理由もあって、ちゃんと人間なんだなと思いました。悪役といえども、自分の中に正義はあるというのも考えさせられましたね。

――あやめと凪が屋根の上で対決するシーンはどうやって撮影したんですか。

仲 実際にセットの一軒家の屋根の上で戦いました。もちろん命綱のワイヤーで吊るしているんですけど、高所恐怖症というのもあって本気で怖かったです。あと枯葉を飛ばすために、芸人さんの罰ゲームで使うような巨大な扇風機が数台用意されていて。常に強い風が吹いていて、顔に枯葉が当たるし、気をつけないと飛ばされそうなんです。そんな状況で、涼しい顔をして凪を痛めつけるのが本当に大変で……。みなさん下から励ましの言葉をかけてくれました。

――それ以外で難しかったことはありましたか。

仲 お芝居よりも、緊張しないようにするのが一番難しかったかもしれないです。キャストの方々が豪華過ぎちゃって(笑)。特に、あやめが仕える辻岡洋介を演じた山田(孝之)くんと初めてお芝居をするときの緊張がすごくて。走って巻物を渡すシーンだったんですが、走り疲れて息が上がっているのか、緊張で息が上がっているのか、自分でも訳が分からなくなっちゃって。でも、あやめは動揺を顔に出さないので、気持ちを切らないようにするのが大変でした。

――共演シーンの多い山田さん、高良健吾さん、そして賀来さんの印象をお聞かせください。

仲 山田くんは、私が緊張しているのを分かってくれて、気さくに話しかけてくれました。常に周りのことを見ていらっしゃって、すごく優しい方です。高良くんは良い意味でラフというか、殺陣の稽古で初めて顔を合わせたんですが、初対面なのに「万美ちゃんの好きな音楽は何?」って聞いてきて。同じ熊本出身というのもあって、地元の話でも盛り上がって、とても距離感が近かったです。賀来くんも稽古のときから、「万美の殺陣ヤバいよ。かっこいいね」みたいな感じで、ざっくばらんに話しかけてくれて。特に細かい指示はなかったんですが、あやめを託してくれているのが伝わってきました。