「やったことがないから」と蹴ってしまうのは簡単なこと

――ダンサーであることに迷いが生じて、その状態をどのように脱したのでしょうか。

仲 ずっと、「これ以上はダンスを嫌いになりたくない」ってモヤモヤしていたんです。それで24歳ぐらいのときに、どうしたらダンスを嫌いにならないで済むかを考えた結果、「思いついた!ダンスを辞めよう」と。それでダンサーという肩書きをおろしたら、ダンスが好きになりました。

――周囲からの反対意見もありますよね。

仲 たくさんありましたけど、「うるさい!」って(笑)。自分の人生ですからね。でも不安はありました。ダンスを辞めたら、自分に何が残るんだろうと。そのときはお芝居も未経験でしたから。ただ、いろいろ選択肢はあるじゃないですか。この世の中にはやれることがいっぱいありますし。それで、まず何をやろうかなって考えていたときに、映画『チワワちゃん』のオーディションに参加しないかというオファーがあったんです。

――その時点で事務所には所属していたんですか?

仲 はい。知り合いの紹介で今の事務所に入りました。所属するとき、社長にはダンスを辞める理由もお話しました。そしたら「万美にやれることたくさんあると思うよ。だから一緒に探そう」と言ってくださって。それで『チワワちゃん』のオーディションを受けて、出演が決まったんです。

――お芝居に興味はあったんですか?

仲 それまで考えたこともなかったです。でも「やったことがないから」と蹴ってしまうのは簡単なことですし、まずは挑戦してみようと。実際にやってみたら、すごくお芝居が楽しくて。和気あいあいとした同年代しかいない現場だったので居心地も良くて。いろんな刺激を受けましたし、この感じをもう一回経験したい、これからも見たことのない世界を見てみたいという気持ちになって、ずっとお芝居を続けています。

――ダンスもお芝居に通じるというか、何かを表現するのは同じですしね。

仲 自分がお芝居をすることが証明になると思うんですが、ダンスをやっている人は表現力が豊かだと思うんです。肉体的な面もそうですし、周辺視野が広くて、空間を把握する能力も高い。『忍びの家』もそうでしたが、ダンスをやっていて良かったと思うことがたくさんあります。だから、どうしてダンサーさんはお芝居をやらないんだろうって不思議に思うんですが、それはお芝居に触れる前の5年前の自分にも言えることで。あのとき一歩踏み出したことで、こうして今があります。

――今もダンスのお仕事はやっているんですよね。

仲 あくまでお芝居が中心なので、案件は選びますが、ちゃんと自分をクリエイトできる振付のお仕事などはさせてもらっています。ただダンサーではないので、ダンスイベントで踊るお仕事などはお断りさせていただいています。

――『忍びの家』がきっかけで、役者として海外進出のチャンスも増えると思います。

仲 『忍びの家』の試写会で、デイヴ監督から、「配信が始まったら、海外からのオファーがたくさん来ると思うから、SNSを全部英語に変えなさい」と言われたんです。「変えてみれば」じゃなく「変えなさい」(笑)。一応英語は喋れますけど、忘れているので大変なんですが、インスタグラムは全部英語で書いています。

――世界的なダンサーから俳優に転身して、今度は俳優として世界に羽ばたこうとしているのは、すごいことですね。

仲 お芝居を始めた頃は、「ダンサーなのにお芝居もやっているんですね」と言われ続けていました。でも徐々に俳優としてのお仕事が増えて、今回の『忍びの家』もあって、俳優としての仲万美を先に知ってから、過去の経歴を調べて驚く方も多くて。それは自分が望んでいた形だったので、もっとお芝居を頑張っていきたいですね。

Information

Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』

出演:賀来賢人 江口洋介 木村多江 高良健吾 蒔田彩珠 吉岡里帆・ 宮本信子 ・田口トモロヲ 柄本時生 嶋田久作 ピエール瀧 筒井真理子 番家天嵩 山田孝之
原案:賀来賢人 村尾嘉昭 今井隆文
監督:デイヴ・ボイル 瀧本智行 村尾嘉昭
脚本:デイヴ・ボイル、山浦雅大、大浦光太、木村緩菜
エグゼクティブ・プロデューサー:佐藤善宏(Netflix)
プロデューサー:神戸明
制作プロダクション:TOHOスタジオ
製作:Netflix
配信:Netflixにて世界独占配信中

仲万美

1992年6月15日生まれ。熊本県出身。5歳からダンスをはじめ、20年以上のキャリアを誇る。加藤ミリヤ、BoA、椎名林檎などのアーティストをはじめ、2015年にはマドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに同行。2016年リオデジャネイロ パラリンピックの閉会式における、日本のプレゼンテーション「SEE YOU IN TOKYO」にも参加。『チワワちゃん』(19)で女優デビュー。その他、雑誌・広告・CM・MVに数多く起用されるなど、世界的にも活躍している。主な出演作に、【映画】『偽りのないhappy end』 (2019)、【舞台】ROCK OPERA『R&J』(2019)、『DustBunnySHOW』(2021)などがある。

PHOTOGRAPHER:TOMO TAMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI