楽曲の解像度を全体で共通して高めるという作業を改めて細かくやった
――4月15日に「PERFECTLY DEFECTiVE TOUR 2026」がスタートしました。初日の会場となった恵比寿LIQUIDROOMのステージに立ったのはいつぶりでしたか。
Novel Core 直近だと神サイ(神はサイコロを振らない)との対バンライブがメジャーデビュー5周年のタイミング(2024年10月17日)であって、バンドでLIQUIDROOMに立ったのは、それぶりでした。

――プライベートでもよく行くライブハウスですか。
Novel Core そうですね。最近だとROTTENGRAFFTYのツアーファイナルを観に行って、バックヤードでNOBUYAさんたちと話したことがきっかけで、その後にShibuya O-WESTで開催されたNOBUYAさんの生誕祭にゲスト出演させてもらうというチャンスをいただいたことがありました。LIQUIDROOMで一番強く記憶に残っているのは、2019年にデンゼル・カリーが来日したときのライブで。開演5分前ぐらいまで、お客さんがフロアの中腹ぐらいまでしかいなくて、「全然余裕じゃん、超楽しいじゃん」と思って、前から3列目あたりのど真ん中にいたんですよ。そしたら開演2分前ぐらいに、急にブワーッと人が入ってきて、PA卓の後ろまでパンパンになったんです。左右を見たら、僕の3倍ぐらい身長がある外国人の方々がいて(笑)。ライブが始まった瞬間、モッシュピットに巻き込まれて、気づいたら靴が片方脱げた状態でフロアの下手後方まで流されていたという恐怖体験がありました。
――改めてLIQUIDROOMはどんなライブハウスですか。
Novel Core 東京都内のライブハウスは、いろんな規模の会場がありますが、900~1,000キャパというのはアーティスト側からするとすごく助かるキャパなんです。もう一つ上のキャパだとO-EASTなどの1,300クラスで、もう一つ下のキャパだと400~500クラス。その間というサイズは、意外と全国的に不足しているサイズのような気がしていて。LIQUIDROOMはライブを観に行っても、自分がやっても、ライブハウス特有の近い距離感を失わないまま、なおかつスケール感もちゃんと担保されています。アイドルもバンドマンも外タレも含めて、いろんなアーティストがライブをやっていますし、バックヤードの壁にサインが書きまくってある感じも、NIIGATA LOTSと通じるところがあって大好きなハコです。
――サウンド面はいかがですか。
Novel Core おそらくサウンドシステムはタームごとに変えていると思うので、デンゼル・カリーを観に行った頃よりも音が良くなっている気がします。勘違いだったら恐縮なんですけど、体感として明らかに音が良くなっていて、バンドの出音にも柔軟に対応できる。特にドラムの出音に関しては、繊細に表現したい音を出してくれるので、リハーサルをやっている段階から手応えがありました。リハーサルスタジオでどれだけ練習を重ねて、ラインで録った音でRECデータを聴いても、ライブ会場で実際に鳴らしてみないと分からないことって多いんです。今回のツアーは特にそれが多くて、いざハコでデカい音を鳴らしたときに、「ここは詰め切れているな」という部分と、「ここはもう少し詰めないとダメだな」という部分が、リハーサルの時間の中で如実に分かったので、そこは感謝しています。
――今回のツアーのセットリストについてお聞かせください。
Novel Core 安心感という面で言うと、長い年月をかけてみんなと一緒に育ててきた曲、みんなが知っている曲をやるのが無難で。たとえば「A GREAT FOOL」は、フェスでも自分たちのワンマンでも、ライブでお客さんをロックするのに力を発揮してくれる飛び道具みたいな曲なので、ド頭に持ってくることもできるんです。でも今回のツアーは、ちゃんと新曲を好きになってもらいたいし、これまで以上にサウンド感もバンドマターになっていっている分、今の僕たちが押し出したいサウンド感やかっこいいと思っているものを、フロアに来てくれたOUTERにも、「かっこいい」「すげー」と思ってもらいたいんです。だから前半は特に新曲多めで、新曲が主軸になったセットリストで勝負したいという思いがあって。人気曲がセトリ落ちして、OUTERサイドからしたら「あの曲が落ちちゃうのか」という気持ちはあると思うし、寂しい気持ちは僕にもありました。でも、僕が思うかっこいいバンドやアーティストって、そういうラインを乗り越えてきているんですよね。ちゃんと新曲を歌って、過去曲がある程度落ちていくセットリストでも、お客さんをロックできる人たちが、どんどん大きくなっていく印象があって。僕たちもそういうフェーズを踏むべきだと思って、今回のツアーは意識的にそうしています。
――今回のアルバム収録曲をライブで再現するのは大変だったと思います。
Novel Core まず一番大きかったのは、意識の問題です。クマさん(クマガイユウヤ)を除いて、全員バンド経験がない。KOTAもそうだし、Hibiki(Sato)も、うっちー(Yuki Uchimura)も、セッションミュージシャンとしてはいろんな仕事をしているけど、バンド経験は今までのキャリアになくて、僕もTHE WILL RABBITSが初めて。バンドマンとして見られたときに、キャリアのある固定メンバーのバンドとの間には力の差があるよねということは認識していて。もちろん演奏力の問題もあると思うんですが、それ以前にグルーヴしようとする意識だったり、ステージに立っている全員がフロントマンだという根本的な感覚だったり。責任感が分散しない状況を作るという前提があるよね、ということをずっと感じていました。それができていなくても、良くも悪くも武道館やアリーナみたいな規模にチャレンジできてしまう状況が続いていたので、正直バンドとしては足元がふわふわしたまま、ここまで来てしまっていたんですよね。だから去年の「“BACK TO AGF” TOUR 2025」あたりから、「バンドとして自分たちのあり方をもう一回見つめ直さないと、いいものを作れない」という話をしていて。今回のツアー前にも全員を会社に集めて、2時間ぐらい話し合いの場を設けて。意識を入れ替えながら、みんなで何度もスタジオに入って細かく調整しました。PAチームが入るテクニカルなリハーサルも2〜3回用意してもらっていたんですが、それとは別に自分たちだけでスタジオに入るリハーサルを6回ぐらいやりました。あと今回のツアーで、サウンド面での大きな変化は、ギターの音作りをアンプシミュレーター(以下、アンシミュ)に切り替えたことです。

――具体的にどんな変化があったんですか。
Novel Core 今までは普通にアンプで鳴らした音を、マイクで録っていたんですが、今の僕たちの楽曲は、KOTAくんが手元から出している演奏していないシーケンスが多くて、コーラス以外にもサブのシンセベースを後ろで鳴らしていたり、大事なパーツをPCから出していたりするんです。そういう音が多ければ多いほど、マイクで録ったギターの音が混ざるとややこしいというか。不必要な帯域がめちゃくちゃに鳴っているのと、帯域のノイズも大量に乗って、全体の音が歪んで輪郭が見えづらくなるという問題がありました。そういうことを総合的に考えて、「Quad Cortex」というアンシミュを購入したんです。
――前回のクマさんとの対談で、今回のツアーで新しい試みをするという話がありましたがそれだったんですね。
Novel Core そうです。ギタリストからすると、アンシミュは繊細な音を表現できるとか、振り幅を作れるとか、いろいろなメリットがあるんですけど、同時にドラムのトリガーと一緒で一長一短なところもあって、使い方を間違えるとライン感が強くなってしまうんです。ある程度、ディレイやリバーブのウェットな成分を乗っけた上で、さらにいじくって、生のアンプに近い音に近づける努力が必要で、その調整にめちゃくちゃ時間がかかりました。
――音の問題はPAチームとの連携もあると思いますが、バンド内だけでも解決できることなんでしょうか。
Novel Core もちろんPAチームとも細かくやり取りしながらではあります。ただ、これもバンドとしての意識につながってくるんですが、PAチームがめちゃくちゃ優秀なチームなんですよ。いろんなバンドのPAをやられているし、アリーナやドーム規模のアーティストもたくさん手がけていて、全国でもやったことのないハコがほとんどないぐらいのプロフェッショナルな方たち。だからこそ、ぶっちゃけた話、僕たちがふわっとしたボーカルや演奏をしていても、それっぽく聴こえさせるだけのパワーを持っているんです。そういう環境の中で、そもそも僕たちが鳴らしている音はどうなのかと。一切データをいじっていない、整音していない状態の音をもらったときに、バラバラだし、音量差もひどいし、僕の声が小さかったり、ドラムの音が大きすぎてギターが聴こえていなかったり。バンドとしてのアンサンブルがうまくいっているかといったら、そうじゃないことが今までは多かったんです。それを見直すべきだなと思ったんですよね。前提として出音が良くて、マイクで拾って、そのままのバランスで出しても成立するところまで仕上げてから、さらにPAチームに立体的にしてもらう。そういう流れじゃないと、僕たちが目指している音像にはならないし、本来バンドってそういうものだよねということを、直近の1年間でハッと気づかされる場面がたくさんあって。まずは自分たちでバンドの音をよくしようというのを意識してやってきました。
――単純にテクニックを磨くだけではなく、バンド内でのグルーヴが大事ということでしょうか。
Novel Core 仰る通りで。なんとなくグルーヴしていないよねと体感的には分かっているんですけど、そもそも僕自身に音楽的な知識が不足していたというのがあって。フロントマンとして、ボーカリストとして、一番みんなの音をフラットに聴ける立ち位置にいるはずの僕が、「ここがこうならないとよくならない」という的確な指示ができていれば、もっと早い段階でグルーヴしていたと思うんです。ようやくバンドのアンサンブルのどこを見ればいいのか、何がどう噛み合っていないと変になってしまうのかが分かってきたのが、この1年間ぐらいなんです。そうなったときに、クマさんたちも体感上では分かっていても言えていなかった部分が結構あったみたいで、「シーケンスのメインのバッキングと俺たちが弾いているバッキングのリズムが違うよね」「そもそも休符の位置も違うよね」みたいな。もっと言うと、ドラム・キーボード・ギターという楽器隊の三軸だけでも認識がずれていたりして。根本的な意識をみんなで統一して、楽曲の解像度を全体で共通して高めるという作業を、改めて細かくやり始めました。
