入門編とも言えるベストアルバムには新曲も3曲収録

――まずは、シングルの表題曲がリリース順に収められたDISC1の方ですが、大槻ケンヂさん、清竜人さん、前山田健一さん、大石昌良さん…と、改めてクレジットを見るだけでもワクワクしますね。そんな中、上坂さん的に、ターニングポイントとなったようなシングル曲はありますか?

上坂 自分としては少しずつ段階を踏んでいったという感じなので、突出している曲というのはないんですけど、1曲挙げるとしたら、サブスクが主流になってきた頃に、テレビアニメ『イジらないで、長瀞さん』という作品のオープニング主題歌「EASY LOVE」が南米を中心に海外のリスナーさんが聴いてくださっているというのを聞いて、びっくりすると同時に、これまで南米に思いを馳せたことがなかったので、すごく嬉しかったです。いつか、「EASY LOVE」をその地に届けたいなという思いも抱くようになりました。

――先ほど、10年経ってやっとアーティスト活動をしていると自信を持って言えるようになったとおっしゃっていたので、少しずつ段階を踏んできたというのが、とても上坂さんらしいなと感じました。では、もう一方のDISC2ですが、こちらの選曲や曲順は悩まれましたか?

上坂 ベストアルバムに入れたい曲はたくさんあったので、12曲に絞るという作業は大変でした。曲順については、通しで聴いた時の流れを意識しましたね。すごくテンションの高い曲が多いんですけれど、ライブのセットリストを組むような感じで選曲をしました。

――ちなみに、この曲は必ず入れたい!と真っ先に浮かんだ曲はどの曲でしょうか?

上坂 やっぱり、「革命的ブロードウェイ主義者同盟」は、私が初期から掲げているコンセプチュアルな楽曲なので、ライブの定番曲でもありますし、裏アンセム的な感じもあるので、この曲は絶対に入れようというのはありました。

――DISC2には新曲も3曲入っていますが、「ファーストピリオド.」は、どういった曲になりますか?

上坂 この曲は、私が声優を志すきっかけになった桃井はるこさんが、10周年のお祝いで書いてくださった曲です。デビューしたての時にも曲を提供していただいたんですけど、その時はまだいっぱいいっぱいで…。でも、10年頑張って走り切ったよねということを優しく称えてくれているような、しかも、私だけじゃなく、同志のみんなへの祝福も込められているような素敵な楽曲をいただきました。桃井さんに曲をお願いさせていただいた時に、ワンコーラスのデモを3パターンもいただいて感激したんですけど、一番おすすめの曲ですということだったので、この曲を選ばせていただきました。これから、次のピリオドまで長く歌い続けていきたい曲になりました。

――アルバムの最後に収録されていますが、そこもこだわった部分ですか?

上坂 アルバムの最初に新曲を入れるというのも手だとは思うんですけど、今回は入門編ということで、最初にライブ定番曲を入れて、最後の最後にこのアルバムの本題が分かるという感じにしたかったんです。

――そして、「ソライロ(Acoustic ver.)」。セルフカバーは初の試みだと思いますが、これも10周年というタイミングでトライしたかったことのひとつだったのですか?

上坂 セルフカバーもアコースティックアレンジもやったことがなかったので、挑戦してみたいことではありました。「ソライロ」はキャラクターソングではあるんですけど、初期のライブで、何回もお世話になった曲で、そもそもは、私が人生で初めてオーディションに合格した作品で、初めてレコーディングブースに入って収録したキャラクターソングという、本当にすべての始まりのような楽曲なんです。もしかしたら、同志の皆さんも思い入れが強い1曲なんじゃないかなと思いまして、原点というか、原点のその前というか…振り返るような気持ちで歌わせていただきました。

――さらに、もう1つの新曲「見参!革ブロ☆ふぉーえばー」では、作詞もされています。すみぺワールドがギュッと詰まった曲のように感じましたが、どのようなイメージで作詞されたのですか?
上坂 ベストアルバムの新録曲ということなので、内輪ノリの曲があってもいいのかなと思って、10年間の自分のエッセンスとか、私がよく使うネタとか、初めて聴いた人には分からないかもしれないですけど、私のラジオとかMCとかを聴いているような感覚で聴いてもらえたらいいなと思って書いた曲です。内輪ノリのお祭りソングですけど、同志への感謝の歌にもなっています。

――ライブでも盛り上がりそうですね。

上坂 合いの手がいっぱいあって大変なんですけど、とにかく一体感を味わえる曲なんじゃないかと思います。