みんなに喜んでもらうためにクリエイトし続けたい

──ここからは雫さんのキャリアを駆け足で振り返りたいと思います。まずミュージシャンになった原点は、どこになりますか?

雫 う~ん、私の場合は子どもの頃からゲームを作る人になりたいとしか考えていなかったんですよ。人生設計としては普通に大学に行って、新卒でゲーム会社に就職して、それで生活していくというパターン。ただ、それだと唯一の趣味が仕事になっちゃうわけじゃないですか。それはそれでどうなのかなと思い、趣味でバンドをやろうとしたんです。そこからTwitter(現・X)でメンバーを探したら、今の奴らが集まってきて、それがたまたまうまくいって、今に至る……というストーリーなんですけど。

──本当に偶然の産物だったんですね。

雫 メンバーにも最初から伝えていたんですよ。「2年経ってもバンドが箸にも棒にもかからない状態なら、本職のディレクター業が忙しくなるから音楽は辞めるよ」って。要するに期間限定バンド。だけど趣味でやっているうちに、だんだん我々も「雰囲気で作ったわりには、意外とクオリティ高いんじゃないの?」と気づいて。それで「よし、ここで一発バズっておこうぜ!」と見様見真似でバズリそうな曲を作ったのが「テレキャスター・ストライプ」だったんです。

──そこからバンドの快進撃が始まったというわけですか。ゲーム業界でも働いていたそうですが、そこはどのようにして就職したんですか?

雫 大学で単位を全部取ってから、1年間、イギリスに留学したんですよ。ところが大学4年で帰国したら、みんなはすでに就活を終えていまして。「えっ、ヤバい!」と思って、ゲーム会社を個人でやられているクリエイターの社長さんにコンタクトを取って、「弟子入りさせてください」って頼みこんだんですね。

──落語のような感じで(笑)。

雫 いや、本当にそんなノリでした(笑)。そこでゲーム企画書の作り方とかもイチから教えてもらいましたね。就職したのは、その弟子入りした社長さんがディレクターとして出向している会社だったんですよ。ゲームの専門知識は全然なかったけど、「英語はしゃべることができるので、ゲームの翻訳はできます!」とか面接でニコニコ受け答えして。向こうからしたらわけのわからないクソガキみたいに映ったと思うけど、面白さだけで入れてもらった感じですね。

──そんなことはないと思います(笑)。「好きなことを仕事にする」というのは時代のキーワードにもなっていますが、そこで違和感を覚えることはなかったですか?

雫 弟子入りしてから、軽くインターンの期間も経て、2年くらいでディレクターになったのかな。ディレクターになると、15人くらいのチームを自分が仕切ることになるんですね。仕様書も自分が書いて、きちんと数字とも向き合わなくてはいけない。その頃は若さゆえの思い込みなのか、「自分は天才だ」と信じていたんですよ。「私の才能をわからない奴らは大バカ野郎」くらいの感覚で。だけど、「天才だから私についてこい」なんて言っても社会では通用しないじゃないですか。ましてや私はそのとき23歳で、チームにいた人は全員が年上だったので。

──まぁそうでしょうね。

雫 だから、そこでも数字の見方とかも含めて勉強したんです。プロデューサーの方や取締役の方から、いろんなことを教えてもらいました。そこで思い知ったのは「作りたいものを作るだけではダメなんだな」ということ。「作りたいもの」「売れるもの」「求められているもの」といったバランスを常に考え、両立させる必要があるんですよ。私の根本的な考えは、ここで出来上がったんだと思います。

──話を伺っていると、雫さんが音楽を制作するアプローチも同じですよね。今はSNSやYouTubeの台頭もあり、誰でも制作や発信ができる時代になっています。若きクリエイターたちにアドバイスがあるとすれば?

雫 「誰に見てもらえなくてもいい」というのなら、完全に趣味で自分の好きなものを作ればいいと思うんですよ。だけど結局、なんのためにクリエイトしているかというと、「人に喜んでもらうため」「多くの人に見てもらって、評価されるため」という話に多くの場合はなるはずなんですね。だったら、多くの人に喜んでもらえる工夫をしたほうが自分的にもうれしく感じるじゃないですか。

──含蓄がある言葉です。

雫 それは当時の若くて尖がっていた自分に対しても言いたいです。だって、今のほうが当時よりもものを作っていて楽しいですから。たくさんの人に喜んでもらえるんだもん。私、みんなに喜んでもらうためにものが作りたい人なんですよ。その想いは年々強くなっている気がしますね。

Information


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開場18:00 / 開演19:00

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ポルフェス88 #一巻の終わりツアー
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2024/12/7(土) GORILLA HALL OSAKA(大阪府)
開場17:00 / 開演18:00

配信URL

MV

1992年10月15日、福岡県生まれ。ロックバンド・ポルカドットスティングレイのボーカル&ギターを担当。作詞・作曲も担当する。高校1年生のときに退学するものの、大検を受け、その後、福岡大学法学部を卒業。メジャーデビューするまではバンド活動と並行してゲーム会社で開発ディレクターとして働いていた。イギリス留学経験があるため、英語も堪能。

PHOTOGRAPHER:YASUKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:MAMORU ONODA