自分の中の新たな可能性が見つけられた映画『17歳は止まらない』
――キャリアについてお伺いします。俳優の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください。
池田 私は中学1年生までボーイズのクラブチームに入って、硬式野球に打ち込んでいたんです。ただ本気でプロ野球選手を目指しているような体格の良い子たちの中にいたので、私は女性としても小柄なほうですし、体格も含めて、いろんな面でついて行けなくなってしまって。これはもう野球を続けるのは無理かもしれないと思って、離れる決意をしたんです。ただ何も目標がないと、きっと人として駄目になってしまうと思ったので、次にやることは何がいいかと考えたときに、漠然と役者っていいなと思ったんです。
――なぜ役者に惹かれたんですか。
池田 それが自分でも分からないんですよね。本当に野球しかしてこなかったので、平日も土日も練習ばかりで、ドラマもほとんど見たことがなかったんです。でも芝居をやりたいと思って、野球を辞めて4ヶ月後に母と二人で原宿に行って、今の事務所にスカウトしていただきました。
――ご家族は賛成だったんですか。
池田 父は野球を続けて欲しかったみたいです。祖父の代から野球好きでしたし、父も兄もやっていましたから。私も兄みたいになりたくて野球をやっていたところもあります。
――野球を辞めて、ソフトボールという選択肢はなかったんですか。
池田 なかったですね。中学1年生のときに人数が足りないということで、助っ人としてソフトボールの試合に呼んでもらってプレイしたこともあるんですが、野球とは別物だなと感じました。
――スカウトを受けて、すぐに上京したんですか。
池田 スカウトを受けたのは中学2年生のときなんですが、それから1年間は群馬から通いでレッスンを受けて、中学卒業と同時に上京しました。
――群馬から通いでレッスンを受けていたときは、どんなモチベーションだったのでしょうか。
池田 レッスンを受けていたのは私も含めて芝居を始めたての子たちばかりだったので、ライバルという意識もなく、習い事のような感覚でした。ただ大半は東京の子たちで、遠くからレッスンに通っていたのは私ぐらい。群馬から2時間半かけてレッスンに行って、家に帰ってくるのは夜中の1時半ぐらい。母に協力してもらっていたんですが、毎週レッスンに通っていたので交通費もかかるし、途中からは本気でした。何より初めてレッスンを受けたときから、芝居が楽しかったんですよね。
――本気で俳優でやっていこうと決断したタイミングはいつ頃ですか。
池田 一度決断したら、そこに賭けていくというタイプなので、上京して一人暮らしを始める時点で覚悟は決まっていました。
――最後にターニングポイントになった作品を一つ挙げていただけますか。
池田 どの作品も印象深いんですが、最近で言うと主演を務めさせていただいた映画『17歳は止まらない』(23)です。今までにない手応えと言いますか、こんなに飾らずにセリフを言えることってあるんだという発見があって。準備期間も長かったですし、私に近い感性を持った女の子だったので、共感できるポイントも多かったんです。それまでは、いじめられたり、貧乏だったり、親をなくしたりと、なぜか可哀そうな役が多くて。初めて無邪気な女の子をやらせていただいたので、こんな役も自分はできるんだと。自分の中の新たな可能性が見つけられましたし、自信にも繋がりました。
Information
映画『威風堂々~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~』
ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズ他、全国順次公開中!
出演:池田朱那、吉田凜音、簡秀吉、田淵累生
小野匠、光徳瞬、高木ひとみ〇、あまりかなり、是近敦之
遠山景織子
近江谷太朗 他
製作協力:株式会社らくがきエンターテイメント
制作:パーフェクトワールド株式会社
監督・脚本:なるせゆうせい
企画・製作:株式会社オフィス・インベーダー
特にやりたいことも夢もなかった高校3年の唯野 空(ソラ/池田朱那)は、将来の保険として大学進学の道を選んだ。と同時に借金を背負った。大学生の二人に一人が使っていると言われる“奨学金”という美しいネーミングセンスの借金を……。その後、親との確執もあり、実家に居心地の悪さを感じたソラは、家も飛び出し、ダメな彼氏・蛭間拓人(簡秀吉)との同棲生活を始めるが、そこでも金がかさむことになる。普通のバイトをしたところで、奨学金を返し終わるのは、アラフォーになってしまう現実から逃れたかったソラは、大学で知り合った異色な同期・九頭竜レイ(吉田凜音)や水江聡太(田淵累生)の影響もあって、裏バイトも始めだす。果たして彼女が突き進んだ先には何が待ち受けているのか……。
PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:稲富愛,STYLIST:RYUSEI MORI