新体制になったときにファンの言葉に支えられた
――二人体制になってサウンド的な変化がいかがですか。
misaki 大きな違いはギターが私一人になったことです。あとサポートで入ってくれているベーシストのベースラインが、すごく頭に残るフレーズで。それはバンドにとってすごくプラスになっています。
――ギター一本になるのは大変だったでしょうね。
misaki 二人になったばかりの頃、30分ステージのライブが決まっていて、7曲中2曲しか一人で弾けなかったんです。だから、そのときの対バンの人たちに頼んで、ゲストでギターに入ってもらいました。そういう状況が半年ぐらい続いたんですが、今年4月20日に渋谷 Spotify O-crestで行ったワンマンライブでは、約20曲を一人で全て弾きました。
――これだけのキャリアで、そこまでギターを練習するってすごいことですよね。
吉田 最初は「エフェクターを踏んだことがない」って言っていましたからね。それでエフェクターを一から勉強している姿が初々しくて(笑)。
misaki 基本は独学だったんですが、どうしても分からないときは前のメンバーに連絡して聞いていました。いまだにエフェクターを踏むのには慣れていないんです……。だからライブ中はパニックです。
――とはいえ短期間で弾けるようになるのはすごいことです。
吉田 明らかに上手くなっているし、どんどん弾ける曲も増えていくし、すごくストーリーがありました。それによって俺の注文のレベルも徐々に上がっているんですが、それだけ上達しているんですよね。
misaki まだまだです……。エフェクターも全て借り物ですし(笑)。どれを買っていいのか分からなくて、周りにおススメを聞いている状態です。
――そもそも4人体制のとき、メンバー二人が脱退すると決まって、misakiさんは解散を考えたそうですね。
misaki 4人体制になる前は一人で活動していたんですが、同時に新メンバーが3人入ったときに、このメンバーでSpecialThanksは最後にしようと思ったんです。一人でも誰かが抜けるとなったら解散しようと決めていたんですよね。それで二人の脱退が決まって、吉田に「解散しよう」と言ったら、「俺は一人でも続ける」と言い出して。
吉田 後からか入った奴が何を言っているんだって感じですよね(笑)。
misaki その言葉にびっくりし過ぎて、誰かが抜けるから辞めるという理由じゃなくて、自分はまだやりたいのかどうかを改めて一人で考えたんです。そのときに、やっぱり辞めたくないと思ったし、SpecialThanksを待ってくれている人もいっぱいいるし。絶対にあったほうがいいじゃんと思って、続けることにしました。
――吉田さんは、misakiさんが解散すると言ったのは意外だったんですか。
吉田 予想外でビックリしました。これまでもメンバーチェンジが何度もあった中で続けてきたので、当たり前に続くものだと思っていましたからね。でもmisakiの言葉からは本気なのが伝わってきて。
misaki とりあえず二人で飲もうってなったよね。
吉田 そうそう。新宿の飲み屋さんに行って。
misaki めっちゃ覚えてるわ。
吉田 西口の美味しい海鮮居酒屋で(笑)。そこで俺は「一人でも続ける」と言ったんです。そこに迷いはなくて、スタイルが変わろうとも、SpecialThanksという名前を残しておけば、またmisakiが歌いたいと思ったときに、戻ってこれると思ったんです。
――すぐにmisakiさんはバンド継続を選んだんですか。
misaki 一旦持ち帰りましたが、すぐに続けようと思いました。
――そもそも吉田さんは、どういう経緯でSpecialThanksに加入したんですか。
吉田 過去にSpecialThanksにいたメンバーと面識があって、ある日連絡があって、ライブにサポートで入ることになったんです。ちょうど自分がやっていたバンドがラストライブをする二日前だったので、その辺の事情も知っていたのかと思いつつ、misakiは俺のバンドのライブを観たことがなかったから、「俺でいいの?」って聞いたんですよ。そしたら自分がサポートで入っていた別のバンドで出たライブに、misakiもソロの弾き語りで出ていたんです。
misaki そうなんです。横で観ていたら、楽しそうにドラムを叩いているなと思って覚えていて。そしたらドラムを探しているときにバンドメンバーから吉田を紹介されて、「いいじゃん」と、それでお願いしたんだよね。
吉田 それきっかけでサポートを始めて、一年半ぐらいやっていたら、紹介してくれたメンバーも含めて二人辞めたんです。
misaki それで私が一人になったとき、新メンバー二人が同時に入ることになって、吉田も正式なメンバーになりました。
――愛聴していたバンドに入るって、どういう気持ちだったんですか。
吉田 不思議でした。大学生の頃にSpecialThanksのコピーバンドもやっていましたからね。サポートの段階で面白いことが起きているなって思っていたのが、まさかの正式メンバーになって。それから時を経て、バンドを作った本人が辞めると言うのを引き止めて(笑)。
misaki メンバーチェンジして、またゼロから始めるのって、めちゃめちゃ大変なんです。本当に辛いから、またやるのはどう?って。自分も年を重ねているから、気合いだけでは乗り越えられないというか。それまでに何度も心が折れかけてきたから、「また?」みたいな。精神的な面でも体力的な面でも難しいと思ったんですよね。
――二人体制になると発表したときの、ファンの反応はいかがでしたか。
misaki もちろん残念という気持ちはあっただろうけど、ファンもメンバーチェンジに慣れちゃっているのか、それほど驚きもなかったみたいで(笑)。「新しい体制も応援していくよ」みたいなコメントをたくさんいただきました。
吉田 脱退免疫が付き過ぎ(笑)。
misaki 「今後も絶対良くなって最高を更新していくんでしょう」みたいな感じで、新体制になったことに何の疑いも持っていなくて、ファンに支えられましたね。