お芝居の中に原作も組み込みながら楽しく撮影ができた

――「その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする」のオファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。

永瀬莉子(以下、永瀬) 人気マンガが原作ということで、私で大丈夫だろうかという不安はありました。原作と脚本を読み込むうちに、しっかりと(喜多川)海夢ちゃんを務めなければと気が引き締まっていきました。

――絵があるキャラクターを演じる難しさもあったかと思います。

永瀬 その辺は監督さんともいろいろお話をして、「このシーンの海夢ちゃんは原作のポーズをしてみよう」とか、自分のお芝居の中に原作も組み込みながら撮影できたので楽しかったです。

――海夢にはどんなイメージを抱きましたか。

永瀬 みんなを惹きつける魅力があるんですが、ただ明るいだけではなく、繊細な部分もあって。そのギャップが素敵だなと思いました。

――ご自身と共通する部分はありました?

永瀬 人の気持ちを汲み取るシーンで、たとえば五条(新菜)くんが言いたいことを言えないと敏感に察するんです。私も現場で、「このキャストさん、今は眠そうだから話しかけるのは後にしよう」とか相手の気持ちを察するほうなので、そこは海夢ちゃんに似ているのかなと思います

――海夢に近づけるために、どんなことを意識しましたか。

永瀬 明るい女の子なので、テンション感はもちろん、話すスピードや会話の緩急は強く意識しました。ギャルの研究もたくさんしたんですが、タレントさんにもギャルの方がいらっしゃるので、喋り方や動きの参考にさせていただきました。

――コスプレ文化についてはいかがですか。

永瀬 レイヤーさんという存在がいて、どういう活動をしているかは何となく知っていました。今回のドラマを通して、大変な工程をたくさん重ねていらっしゃることを知って、自分も役として実際に体験してみて勉強になりましたし、改めてレイヤーさんをリスペクトしました。

――ドラマには本物のコスプレイヤーさんも出演しています。

永瀬 レイヤーさんは撮影の合間も、キャラクターそのものの佇まいや動きをされていたので、ポージングも勉強させていただきました。

――ファッションモデルとは、こだわるポイントも違いますよね。

永瀬 そうなんです。ファッション誌とは違った、キャラクターとしての見え方というのがレイヤーさんにはあるので、普段やっているポージングとは違う動きを撮影でもしていて。体幹を使うというか、バランスも大切になってくるんですよね。

――メイク方法も普段とは違いましたか?

永瀬 いつも私がメイクさんにやってもらっているメイクとは違って、筆でお雛様の面を描くような繊細さでメイク道具を使うので、そういうシーンは緊張感のある美しいシーンになっています。

――野村康太さん演じる五条というキャラクターには、どんな印象をお持ちですか。

永瀬 口数が多いわけではないけど、好きなものに対してのまっすぐさや情熱を内に秘めていて。寡黙な優しさというか、回を重ねるごとに、五条くんの魅力もどんどん増していって。海夢ちゃんと性格は違うけど、コスプレを通して通ずる部分もあるなと感じます。

――やりたいことを周囲に言い出せない五条に共感するところはありましたか。

永瀬 私は中学生の間、地元の広島からレッスンに通っていて、高校生になってオーディションを受け始めたんです。「ミスセブンティーン」の最終候補になるまでは、友達に話したことがなくて。今思えば、どこか自分に自信が持てなかったから言えなかったのだろうし、そういう面は五条くんに似ているのかもしれません。

――野村さんの印象はいかがでしたか。

永瀬 第一印象は大人びていて、寡黙なイメージだったんです。だからお芝居をしていると五条くんそのものだなと思ったんですが、撮影外だとチャーミングで、穏やかな空気をまとっていて。現場でも、みんなに愛されている優しい方でした。